演題

当院で経験した膵腺房細胞癌の3症例の検討

[演者] 中野 容:1
[共同演者] 北郷 実:1, 篠田 昌宏:1, 八木 洋:1, 阿部 雄太:1, 高野 公徳:1, 大島 剛:1, 益田 悠貴:1, 坂本 享宇:2, 北川 雄光:1
1:慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科, 2:慶應義塾大学医学部 病理学

【背景】膵腺房細胞癌は成人膵腫瘍の約0.5~1.0%を占める稀な腫瘍である.当院では今まで3例の腺房細胞癌を経験している.今回繰り返す急性膵炎の加療中に急速に増大し,術前診断が困難であった膵腫瘍に対して手術を施行し,膵腺房細胞癌の病理診断となった症例を経験したので,他の2例とあわせて報告する.
【症例1】45歳女性.Gardner症候群,デスモイド腫瘍に対して当院整形外科に通院中であった.デスモイド腫瘍に対してパゾパニブを投与していたが,重症の薬剤性膵炎を発症.その加療中,膵体部に約半年で直径約1cmから約13cmに急激に増大した乏血性腫瘤を認めた.EUS-FNAでは組織型は確定できなかったが,上皮性悪性腫瘍の診断となり,膵体尾部切除術の方針となった.術中の迅速腫瘍病理診断は,膵神経内分泌腫瘍であった.腫瘍本体の肉眼所見は,白色調の充実性腫瘍であり,病理組織学検査では,腺房細胞類似の濃染腫大核を有する異型細胞の増殖を認めた,免疫組織学検査では,Trypsin (+),Chymotrypsin (+)であり,最終病理診断は,膵腺房細胞癌となった.術後経過は良好であり,現在術後2ヶ月無再発生存中である.
【症例2】67歳女性.5ヶ月前より右季肋部痛・体重減少を認め,十二指腸球部からの出血を契機に,膵頭部腫瘤を指摘された.CT検査では,内部に出血・壊死・嚢胞変性を伴う造影効果の乏しい10cm大の腫瘍を認め,門脈本幹~左右分岐部に門脈腫瘍栓を認めた.膵悪性新生物,間葉系腫瘍,神経内分泌腫瘍などが鑑別に挙がったが確定診断には至らず,出血コントロールを目的に膵全摘術+門脈合併切除再建術を施行した.組織診断では,Trypsin (+),Chymotrypsin (+)で膵腺房細胞癌と診断となった.
【症例3】半年前より心窩部不快感が出現し,CT検査で膵尾部最尾側に位置した2cm大の乏血性腫瘍を認めた.EUS-FNAにてAdenocarcinomaと診断され,浸潤性膵管癌の診断で膵体尾部切除術を施行した.組織診断では,Trypsin (+),Chymotrypsin (+)で膵腺房細胞癌と診断となった.
【結語】膵腺房細胞癌のような特殊な膵腫瘍の場合は,術前に診断することが困難なことがあり,症例1のようにEUS-FNAや術中の腫瘍生検でも診断することができなかった症例も経験した.当院で経験した3症例をまとめ,膵腺房細胞癌について文献的考察を含め報告する.
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