演題

食道癌化学療法に起因する低Na血症に関する検討

[演者] 郡司掛 勝也:1
[共同演者] 岡本 浩一:1, 二宮 致:1, 寺井 志郎:1, 木下 淳:1, 中村 慶史:1, 尾山 勝信:1, 高村 博之:1, 伏田 幸夫:1, 太田 哲生:1
1:金沢大学 消化器・腫瘍・再生外科

【目的】食道癌に対する化学療法中にしばしば認められる有害事象の1つとして低Na血症があり,経過中に頭痛や眩暈を来し,重篤な場合には意識障害に陥ることもある.原因として,抗利尿ホルモン不適合分泌(SIADH)や水中毒,塩類喪失性腎症(renal salt wasting syndrome ; RSWS)などが鑑別疾患として挙げられ,病態の理解と治療に難渋する場合もある.今回,食道癌化学療法に起因する低Na血症の治療経過から,その病態と治療法を明らかとする.
【方法】2013年1月から2017年11月の期間に進行食道扁平上皮癌に対しFP療法(5-FU+CDDP 800/80),またはDCF療法(5-FU+CDDP+Docetaxel 800/60/60)が施行された87例(FP 16例,DCF 71例),全208コース(FP 35コース,DCF 172コース,適宜減量・中止あり)を対象とし,低Na血症の発生頻度と重症度(CTCAE v4.0),発症時期,患者背景,治療内容と経過についてretrospectiveに検討した.
【成績】患者背景(FP vs DCF)は,平均年齢67.1歳 vs 62.8歳とFPでより高齢であった.T・M因子は両群で有意差はないが,DCF群でN因子(N1以上62.5% vs 90.1%), cStage(cStageIII以上62.5% vs 84.5%)が有意に高かった.治療開始7日目の血液検査上,症例ごとの低Na血症Grade 0/1/3/4は,FP 9/4/3/0 vs DCF 45/17/7/2であり,FPで43.7%,DCFで36.6%にGrade 1以上の低Na血症を来していた.また,FP群で43.8%にGrade 1のCre上昇を認めており,DCF群の11.3%より有意に高率であった.Grade 4の低Na血症例では顕著な意識障害を認め,尿中Na・K排泄が著明に多く,体重減少・血圧低下が著明な脱水状態を伴っており,RSWSが原因と判断して高張Na溶液補充と脱水の補正を行うことで治療開始後1週間後までには血清Na値の上昇と後遺症のない意識障害改善を認めた.
【考察】シスプラチンの用量が多いことや,高齢であること,背景疾患を有することなどが低Na血症の一因と考えられた.化学療法に伴う低Na血症の原因としては,SIADHやNa欠乏などが広く認知されているが, CDDP投与後に生じる RSWSに関しては,あまり周知されていない.それぞれの治療方針として,SIADHでは水制限が必要であるが,RSWSでは脱水とNa喪失に対する補液とNa補給が必要であり,全く逆の治療方針となることからも,RSWSとSIADHの両者を念頭におく必要がある.
【結論】食道癌化学療法中に生じる低Na血症に対しては,病態の正しい認識と適切な治療につき十分留意する必要がある.
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