発表

2B-068

オタクの職業観に関わる研究

[責任発表者] 山田 智之:1
1:上越教育大学

目 的 
 1975年に700名の参加で始まったコミックマーケットはは,2018年には570,000人を数えるようになった。コミックマーケットの参加者たちに対する蔑称であった「オタク」という言葉は,この間に,その意味と位置づけ,またそのカテゴリーが大きく変化した。菊池(2000)は,「オタク」特有の文化領域とされていたアニメやゲーム産業が活発化し,日本発の文化として海外で高い評価を受けたことの影響があって「オタク」のポジティブな面を再評価する動きも多く見られるようになってきたと述べている。そして,2007年に創設された「日本国際漫画賞」などに代表されるポップカルチャーの文化外交,「クールジャパン推進に関するアクションプラン(2011)」など,近年では「オタク」は独自の価値観を持った新しい文化の担い手として捉えられるようになった。
また,野村総合研究所(2005)のオタク市場の研究をはじめ,オタクに関わる研究も多くみられるようになった。しかし,オタクの研究はマーケティング的な視点からの研究が多く,キャリアや職業観等に関する研究はほとんど行われていない。そこで,本研究では,オタクの職業観について明らかにすることを目的とする。尚,「オタク」については「おたく」「ヲタク」など表記もあるが,本稿では「オタク」に統一する。

方 法
 関東甲信越の大学生・大学院生を対象にインターネットによるWEB調査を実施し237名から回答を得た。このうちすべての項目に回答のあった196名(男子学生:116名,女子学生:80名)を分析対象とした(有効回答率:82.7%)。
調査票は「所属大学の学部・学科系統」「オタク自認」をはじめ,職業観尺度(山田,2018)などによって構成した。

結 果
 調査の結果,「所属大学の学部・学科系統」においては教育系統の分布が多い傾向はあるものの人文科学系統,社会科学系統の学部・学科系統に分布が見られた。また,「出身地」においては,関東1(東京都),関東2(埼玉県・千葉県・神奈川県),甲信越(長野県・山梨県・新潟県),北陸
(富山県・石川県・福井県)地域の分布が若干多い傾向はあるものの,すべての地域に分布しており,概ね妥当データと考えられる。
 また, 職業観尺度(山田.2018)についてα因子法,バリマックス回転による確認的因子分析を固有値≧1.0を基準としておこなったところ,7因子(家庭因子α=.923,昇進因子α=.956,社会への貢献因子α=.914,収入因子α=.832,経営参画因子α=.820,余暇因子α=.784,自己実現因子 α=.839)が抽出され,再現性及び信頼性が確保された。
 次にオタク自認が職業観に与える影響について検討するために,オタク自認(ダミー変数:非オタク自認=54名,非オタク弱自認=29名,どちらともいえない=32名,オタク弱自認=53名,オタク自認=23名)の内,どちらともいえないを除外した4つのダミー変数を独立変数,職業観の7つの下位尺度を従属変数とする強制投入法による重回帰分析をおこなった。その結果,社会への貢献因子には,オタク自認が負の影響を与えていた。また,自己実現因子には,オタク弱自認,オタク自認が負の影響を与えていた(Table 1)。

考 察
 本研究の結果から,オタクとしての自認がある場合,社会への貢献因子,自己実現因子に負の影響を与えることから,オタクを自認する者は,職業によって社会への貢献や自己実現を図ろうとはしない傾向があると考えられる。

引用文献
菊池聡(2000).「おたく」ステレオタイプと社会的スキルに関する分析 信州大学人文科学論集 人間情報学科編,34,63-78.
野村総合研究所(2005).オタク市場の研究 東洋経済新報社
山田智之(2018).中学校での職場体験が大学生の職業観に与える影響 日本キャリア教育学会第40回研究大会研究発表論文集,pp.80-81.

キーワード
オタク/職業観


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