発表

2A-079

幼児の他者理解における心の理論、言語的能力との関連

[責任発表者] 小沢 日美子:1
1:同朋大学

<目 的>
 他者の心の状態を推論するのに必要な能力としての心の理論は,定型発達児における言語能力との関連が高いとされる。Tompkins(2019)は,幼児の物語発達の研究によって,言語と心の理論の相互の関連の結びつきの検討を,2‐5歳までを対象に行い,誤信念の理解と物語の理解は多くの類似点を共有していることを示唆している。定型発達児の「事前の意図と行為の因果的結合」は,4‐5歳頃である(e.g.,Leekam,1993)。意図理解の課題における「事実とは異なる信念を持ちうる」意図の背景の推測には,意図伝達とその解釈が重要な手がかりになる。意図伝達の成立には,行為に関する意図の動機的側面の理解(Action belief;Moses,1993)と「誤信念」の理解の両方が必要である。したがって,故意性を問う「心の理論」課題と心的状態を問う「心の理論」課題との発達的な関連は,他者理解の発達に重要な関係があると考えられる。また,自閉症児では直観的な心理化能力の弱さが上げられている(e.g.,Frith,2004)。言語的応答力の発達と「心の理論」の発達との関連について,加齢(に伴う思考の拡張や展開)と「心の理論」の関連を検討する必要がある。そこで,本報告では,「心の理論」課題と言語的能力との発達的な関連を検討する。

<方 法>
〔調査協力者〕幼児60人(幼児年齢高群:平均月齢 5歳9ヶ月月,年齢範囲 4歳11ヶ月-6歳9ヶ月,幼児年齢低群:平均月齢 3歳9カ月,年齢範囲 2歳11ヶ月-4歳7ヶ月)。
〔調査概要〕個別対面方式。「心の理論」課題2課題。誤信念理解の課題(cf.Wimmer,&,Perner,1983),意図性理解の課題(e.g.,Happe,1997)。全問正解1,その他0。言語的能力課題(言語A:語彙,文章記憶,数唱,言語B;理解,物の定義,反対類推)。得点化:各設問1,0(Max=10)。
・手続き:初めに言語応答による知能検査課題を実施,続いて「心の理論」課題の誤信念理解課題,意図理解課題をランダムに実施。◎「心の理論」課題:紙芝居方式各4枚。紙芝居は筆者が子ども馴染みやすい色と絵柄で描写した。〇誤信念課題:(a)現実質問①,(b)信念質問,(c)現実質問②,(d)記憶質問。〇意図理解課題:(a)本心質問①,(b)本心質問②,(c)理解質問①,(d)理解質問②。なお,調査の実施では,調査協力機関長に承諾を得て幼児保護者らに調査概要を説明・依頼した。調査による不安感,調査後の疲労感を高めないように配慮し,必要の際には,状況判断により中止し,事後フォローを実施することとした。

<結 果>
 誤信念課題と意図理解課題及び言語的能力(言語的能力の下位項目)の平均値と標準偏差,また,それぞれの相関を表に示す(Table1,2参照)。幼児年齢高群と年幼児齢低群による各群の言語的能力との相関関係からは,幼児年齢低群の方が,言語的能力との関連が強いことが示されている。とくに誤信念課題では,幼児年齢高群との間に強い相関の項目は示されなかった(また,言語的能力の一要因の分散分析については,言語的能力の言語A,言語B及び言語全般に関し,幼児年齢高群と幼児年齢低群との間,及び,心の理論課題の通過群/不通過群との間において,それぞれ有意だった)。

<考 察>
 本報告では,幼児期の他者理解の発達に関し,幼児年齢高群と年幼児齢低群による検討を行った。各群の言語的能力との相関関係からは,年齢低群の方が,言語的能力との関連が強いことが示されている。とくに誤信念課題では,幼児年齢高群との間に強い相関の項目は示されなかった。このことは,本報告の言語的能力のなかで,とくに短期記憶関連との相関関係が弱いことが示唆される。したがって,語彙力を言語能力全般の発達の指標としたとき,年齢との関連が常に強いと認められるが,本報告の言語的能力としての語彙力と心の理論との直接的な関連には発達の過程での変化が示唆される。なお,ここでは,明確な関係性は示されていないが,心の理論の課題の性質により,言語的能力の下位項目との関連の特色があることが考えられる。

キーワード
幼児/他者理解/言語的能力


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