発表

2A-076

養育者特有の幸福感に関する予備的研究

[責任発表者] 加藤 孝士:1
1:長野県立大学

【目的】
 近年,より充実した子育てへの示唆を提案するために,「幸福感」を高める要因を検討した研究が増加している(加藤ら,2012など)。それらの研究の多くは,海外で作成された心理尺度を和訳して「幸福感」を測定しているため達成・獲得といった視点で,「幸福感」が捉えられている。
 しかし近年は,余暇活動などのリフレッシュイベントを提供することの重要性も指摘されているなど(加藤・永井ら,2015など),余暇活動やゆっくりと時間を過ごすといった「何気ない幸せ」を「幸福感」に取り入れていく必要もある。そこで,本課題では,「余暇」なども含んだ幸せに注目し,「養育者の幸福感をどのように捉えているのか」を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者:全国の男女 20─54歳を対象に公募型Web 調査(委託業者:マクロミル)を実施した。調査会社の登録モニタから事前調査で回答者を抽出し,性別と婚姻の有無を組み合わせた4区分に各103名ずつ,総数412名から回答を得た。調査内容:デモグラフィック変数(性別,年齢,居住地域,子どもの有無など),「どのような時に幸せを感じるのか」を自由記述によって回答を求めた。
【結果・考察】
1.対象者
 調査対象の年齢は,24歳以下28名,25―29歳58名,30-34歳71名,35-39歳78名,40-44歳73名,45-49歳85名,50歳以上19名であった。居住地域は,北海道・東北46名,関東142名,中部82名,関西74名,中・四国32名,九州36名であった。
2.テキスト分析
 どのようなことに幸せを感じているかを検討するため,「どのようなことに幸せを感じますか?」という設問に関する自由記述データの分析を行った。具体的には,形態素分析をし,強制語を指定し,再度,形態素分析を行った。その結果,885の文章が確認され,総抽出語は6009語であり,異なり語や助詞,助動詞を除外した2249語を最終的な分析対象語とした。
 続いて,得られたデータの全般的な特徴を示すため,共起ネットワーク(random walks)図を作成し,語の関係を示した。図中においては,出現数が高い語ほど大きな円で描画され,Jaccard係数が高いほど語同士の実線が太くなっている。その結果,「好き」「人」「会える」といったような,【人との関わり】に関するまとまりや,「子ども」「笑顔」「成長」といったような【子ども】のまとまり,「家族」「団欒」といった【家族】のまとまりが確認された。また,「趣味」「没頭」や「お酒」「飲む」,「旅行」「コンサート」,「ゲーム」「読む」などの【趣味】に関するまとまり「布団」「風呂」といった【やすらぎ】に関するまとまりも確認され,大山(2012)で確認された視点の区分に,子どもが追加されたまとまりとなった。
3.コーディングを基にした分析
 文章の性質を踏まえ分析するため,分析対象語について,コーディングを行った。コーディングに際しては,他の大学教員と検討しつつ行った。
 性別,子どもの有無による幸せの違いを検討するため,コーディングデータの出現数の差異を検討した。具体的には,性別(男性,女性)と子どもの有無ごとに対象者を分類し,幸せなことのコーディングとのクロス表のカイ2乗分析を行った(Table1)。その結果,【子ども(χ(3)=14.61, p<.001)】【家族(χ(3)=25.57, p<.001)】といった『人間関係』のまとまりに有意な偏りが確認され,その後の残差分析の結果,子どものいる女性の出現率が高いことや家族に関しては男性の出現率も高いことが示された。また,【食事(χ(3)=16.85, p<.001)】【趣味(χ(3)=20.45, p<.001)】【睡眠(χ(3)=8.47, p=.037)】といった,『趣味活動』として位置づけられるもののまとまりに有意な偏りが確認され,子どものいない女性の出現率が高いことが示された。その他は,【仕事(χ(3)=8.30, p=.040)】に関しても有意な偏りが確認され,子どものいる男性の出現率が高いこと,【幸福な感情(χ(3)=40.26, p<.001)】においても有意な偏りが確認され女性の出現率が高いことが示された。

キーワード
養育者/幸福感


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