発表

1D-072

乳幼児を子育て中の夫婦の育児関与に関する研究(2)
親の育児参加は仕事へのコミットメントによい影響を与えるか

[責任発表者] 下坂 剛:1
[連名発表者・登壇者] 永井 知子:2
1:四国大学, 2:四国大学短期大学部

問題
 本研究では前発表(永井・下坂,2019)に示すように親の育児関与を夫婦双方に共通する課題ととらえ,Greenhaus & Powell(2006)のワークファミリーエンリッチメント理論によって,親の育児関与からポジティブ感情を経て仕事関与に至る因果モデルを検証する。
方法
対象者 インターネット調査により末子に0~2歳または3~6歳の子どもをもつ夫と妻あわせて1200名。詳細は前発表(永井・下坂,2019)と同様。
調査時期 2019年3月~4月。
調査内容 
親の育児関与 前発表(永井・下坂,2019)で作成した親の育児関与尺度を用いた。末子年齢0~2歳用が「身体的ケア」「家事」「心理的ケア」「しつけ」の4下位尺度36項目(α=.918.~965),末子年齢3~6歳用が「心身のケア」「家事」「しつけ」「遊び」の4下位尺度43項目(α=.879~.959)。5件法(当てはまらない状況は欠損値)。
感情状態 佐藤・安田(2001)による日本語版PANAS(Positive and Negative Affect Schedule)の「ポジティブ感情;PA」8項目で最近1カ月に関し6件法で評定。
仕事関与 Kanungo(1982)のJob Involvement尺度10項目を邦訳して用いた。6件法。
 分析には清水(2016)のHAD ver.16を用いた。
結果
仕事関与尺度の主成分分析 仕事関与尺度10項目を項目分析したところ,天井効果とフロア効果がみられる項目はなかった。次に10項目による主成分分析を行った結果,「私にとって,仕事は私のほんの一部にすぎない」「私は,普段は仕事から離れていると感じている」の2項目の負荷量が低かったためこれらを削除し,8項目による合計得点とした。α係数は.907。
多母集団同時分析 0~2歳,3~6歳それぞれで「親の育児関与」下位尺度得点→「ポジティブ感情」→「仕事関与」のモデルについて夫婦による多母集団同時分析を行った。0~2歳ではx2検定は有意で(x2 (8)=24.29,p<.01),適合度指標はGFI=.976,AGFI=.876,RMSEA=.112とRMSEAが若干.10を超えた値となった(Table 1)。最近1か月のポジティブ感情は仕事関与へと夫で.43(p<.01),妻で.29(p<.01)といずれも有意な正のパス係数を示したが,親の育児関与からの最近1か月のポジティブ感情へは夫の「家事」のみが.22(p<.01)で有意な正のパス係数を示した。一方,3~6歳ではx2検定は有意で(x2 (8)=20.35, p<.01),適合度指標はGFI=.981,AGFI=.899,RMSEA=.096と十分な値が得られた(Table 2)。最近1か月のポジティブ感情は仕事関与へと夫で.41(p<.01),妻で.45(p<.01)といずれも有意な正のパス係数を示し,親の育児関与からの最近1か月のポジティブ感情へは育児関与の「遊び」が夫で.27,(p<.01)妻で.48(p<.01)の有意な正のパス係数を示していた。
考察
 0~2歳についてはモデルの適合度に若干問題はあったものの,夫の家事の育児関与のみがポジティブ感情を経て仕事関与へとつながっていたが,妻は育児関与が仕事関与に影響しておらず,夫婦間で違いがみられた。3~6歳の末子をもつ場合,夫は「家事」と「遊び」の育児関与を行ってポジティブな感情状態が喚起されると仕事関与が高まるが,妻は「遊び」のみの育児関与を行ってポジティブ感情状態が喚起されると仕事関与が高まり,夫婦での違いが示唆された。

 本研究は科学研究費補助金(課題番号:18K02513)の補助を受けた。

キーワード
親の育児関与/ワークファミリーエンリッチメント/仕事関与


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