発表

1D-071

乳幼児を子育て中の夫婦の育児関与に関する研究(1)
親の育児関与尺度の作成

[責任発表者] 永井 知子:1
[連名発表者・登壇者] 下坂 剛:2
1:四国大学短期大学部, 2:四国大学

問題
近年,女性の社会進出や少子化などの子育て家庭を取り巻く環境の変化に伴い,ワークライフバランスのあり方について関心が高まる中,男性の子育て意識や育児参加についても注目が集まっている。本研究では,乳幼児を子育て中の親の育児関与に関する尺度を作成し,尺度の信頼性と妥当性を検討することを目的とする。
方法
手続き インターネット調査会社アスマークに委託し,2019年3月~4月に実施した。
対象者 末子に0~2歳または3~6歳の子どもをもつ夫(平均39.9±6.3歳;大卒以上68.7%;就労97.3%)と妻(平均35.7±5.3歳;大卒以上34%;就労43.8%)計1200名である。全て配偶者及び子どもと同居,子どもの人数が3人までが96.3%,居住地域は全国47都道府県全て,家計収入は200~800万円の世帯が66%であった。平均就労時間は夫9.5,妻7.2時間。夫婦はペアデータではない。
調査内容
育児関与に関する項目 下坂(2019;印刷中)で作成した育児関与に関する項目(「子どものしつけ」10項目,「子どもとの時間を大切にする」12項目,「子どもを心理的に支えること」12項目,「子どもの身のまわりの世話」15項目,「日常の家事全般」12項目)であり,これらは父母に共通して適用可能と判断し,全てを用いた。「全くしていない」から「いつもしている」の5件法で回答を求め,子どもの発達の状況からいって該当なしの場合は「あてはまらない状況」とし,欠損値として処理した。
主観的幸福感 Diener et al(1985)の5項目を使用し,7件法で回答を求めた。
妻へ(夫からの)のサポート 小林(2009)の「夫からのサポート」5項目とそれを改変した「妻へのサポート」5項目を用いた。5件法。
結果
親の育児関与尺度の因子分析 全61項目について「あてはまらない状況」である欠損値を夫婦×0~2・3~6の2×2のセルでχ2検定を行ったところ,22項目で0~2歳と3~6歳の年齢によって出現率に差がみられた。そこで,欠損値が多かった項目を削除し,末子の年齢区分でデータを2つに分けて分析を行った。0~2歳と3~6歳の育児関与61項目で項目分析を行ったところ,天井効果が0~2歳で27項目,3~6歳で22項目みられ,男女別では妻にのみ42項目で天井効果(最大平均+SD=5.53)が見られた。本来なら項目の削除が望ましいが,妻のみ著しく育児関与に天井効果がみられること自体が夫婦間の育児関与の偏りを顕著に表していると考え,今回はそのまま以後の分析に用いた。最終的に,両年齢とも4因子解(最尤法・プロマックス回転)が妥当であると判断した。0~2歳は「身体的ケア」「家事」「心理的ケア」「しつけ」,3~6歳は「心身のケア」「家事」「しつけ」「遊び」の因子が見出され,α係数は順に.92~.97,.88~.96であった。
関連変数との相関 育児関与尺度の下位尺度と関連変数として,就労時間,妻へ(夫からの)サポート,主観的幸福感との相関を検討した(Table 1)。就労時間と育児関与尺度の相関は,0~2歳で r =-.34~-.14,3~6歳で r =.-.44~-.19(しつけは除く)でそれぞれ有意な負の相関がみられた。妻への(夫からの)サポートとは,夫婦それぞれで「妻へのサポート」「夫からのサポート」と育児関与下位尺度の相関を検討したところ,夫データで弱い,または中程度の有意な正の相関がみられ,妻データではほぼ無相関であった。主観的幸福感とは,0~2歳児の親で, r =.14~24の有意な正の相関が見られ,3~6歳児の親で r =.09~.28の有意な正の相関がみられた。
考察
本研究で作成した子どもの年齢に対応した育児関与尺度により,父親と母親に対して同一項目を使用することで,十分な内的整合性の観点からの信頼性をもつ尺度が作成された。就労時間が少なく,主観的幸福感が高いほど育児関与が増えること,夫の妻へのサポート意識が高いほど育児関与が増えるが,妻が夫からサポートされていると感じていても,妻自身の育児関与とは関連がなかったことは,家事や育児が妻に偏っている現状を反映していると考えられ,いずれも育児関与尺度の構成概念妥当性を支持する結果であるといえよう。
本研究は科学研究費基補助金盤研究C(課題番号:18K02513)の補助を受けた。

キーワード
親の育児関与/信頼性/妥当性


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