発表

1D-069

学生の養護性,自由選択の感覚と幸福および健康の関連
性差の検討

[責任発表者] 芳賀 道匡:1
[連名発表者・登壇者] 坂本 真士:1
1:日本大学

目 的
 少子高齢社会と呼ばれて久しい中,地域の子どもと大人の関係の方向性が探られている。近い将来において子どもと大人の世代間交流をさらに進めるには,大人が子どもに対してもつ心理的要素に関する理解を深める必要がある。そこで本研究では,大人への準備期にあたる学生の養護性と自由選択の感覚に着目する。
 養護性とは,相手の健全な発達を促進するために用いられる共感性と技能のこと(楜澤・福本・岩立, 2009)である。楜澤他(2009)は,男性よりも女性において養護性の一部である共感性が高いことを示した。しかし,養護性が学生にあたえる効用とその性差は定かではない。
 一方,自由選択の感覚とは,人生における選択の自由を感じる程度(中里, 2016)である。中里(2016)は一連の研究において自由選択の感覚と人生満足感の関連を示している。また,自己による物事の選択や解決ができると感じていることは,精神的不健康の予防に有益であるといわれている。
 そこで本研究では,学生の養護性,自由選択の感覚と,幸福(人生満足感)および健康(精神的不健康)の関連と性差について検討する。

方 法
 都内の2校において2019年1月に行った質問紙調査のデータのうち,289名(男性164名,女性125名)のデータを用いた。調査材料は次の通りであった。(a)デモグラフィックデータ:性別を扱った。(b)養護性尺度(楜澤他, 2009)の下位尺度である共感性9項目,技能7項目,準備性4項目,非受容性5項目(すべて5段階評定)から構成される。(c)人生満足度:SWLS(Diener et al.(1985 大石訳 2009))5項目7段階評定を用いた。(d)精神的不健康:K6(Kessler, Andrews, Colpe, et al.(2002 川上・近藤・柳田他訳 2002))6項目5段階評定を用いた。分布が対数分布に相似していたため,0.5を足して対数変換を施し用いた。(e)自由選択の感覚:世界価値観調査(2019)を参考に「人生において選択の自由はありますか」1項目10段階評定で測定した。統計解析はHAD ver16.03(清水, 2016)を用いた。

結 果
 まず,記述統計量の算出とt検定を行った。その結果,性差が統計的に有意だったのは共感性のみ(t (288)=5.90, p <.001,r=.28)だった。次に,男性と女性それぞれについて,目的変数を人生満足感と精神的不健康,説明変数を共感性,技能,準備性,非受容性,自由選択の感覚としてステップワイズ法による重回帰分析を行った(Figure1)。その結果,男性の精神的不健康(R2=.11, p<.01)の場合は非受容性(r=.26, p<.01)および自由選択の感覚(r=-.16, p<.05),男性の人生満足感(R2=.14, p<.01)の場合は自由選択の感覚(r=.30, p<.01),準備性(r=.30, p<.01)が残った。一方,女性の精神的不健康(R2=.06, p<.01)の場合には自由選択の感覚(r=-.25, p<.01),女性の人生満足感(R2=.14, p<.01)の場合にも自由選択の感覚(r=.37, p<.01)が残った。

考 察
 先行研究(楜澤他, 2009; 中里, 2016)の結果の通り,共感性のみ性差が見られ,自由選択の感覚は人生満足感との関連が示された。さらに,本研究の結果から新たに,女性の場合は自由選択の感覚が人生満足感と精神的不健康と関連を持つこと,男性の場合は養護性のうち準備性は人生満足感を,非受容性は精神的不健康と関連をもつことが示された。つまり,女性の場合において人生を選択して生きているという感覚が強い人は幸福感が高く,不健康感が低い可能性が示された。そして男性の場合は,それだけでなく,子どもを育てようと思う気持ちが強い人は幸福感が高く,子育てを煩わしく感じる人は不健康感が高い可能性が示された。今後,女性だけでなく男性が子どもに対してもつ心理的要素に関する研究が必要である。

キーワード
養護性/自由選択の感覚/ウェルビーイング


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