発表

1D-066

大学生における過去の暴力経験がデートDVに及ぼす影響

[責任発表者] 赤澤 淳子:1
1:福山大学

問題と目的
 欧米では,デートDVを生起させる要因の検討から,子ども時代に親から受けた虐待の影響が示唆されている(e.g., Wolfe, Crooks, Chido, & Jaffe, 2009; Zurbringgen, 2009).また,Narayan et al.(2014)は,幼児期(0~64ヶ月)の家庭内暴力への暴露は,16歳時の親友との葛藤や23歳時のデートDV加害の予測要因となっていることを明らかにしており,過去の暴力経験が新たな暴力を生むリスク要因であることが示されている.国内では,親から子への暴力は児童虐待として,学校での子どもから子どもへの暴力はいじめとして,未婚者カップル間の暴力はデートDVとして個々に研究が積み重ねられており,暴力間の関連を検討した研究はまだ少ない.そこで,本研究で家庭での不適切な被養育経験やいじめの被害・加害経験が,デートDV被害・加害経験や暴力観に及ぼす影響について検討することとした.
方 法
調査への参加者:A大学の学生128名に実施した.そのうち,欠損値のあった者と,社会的望ましさ得点が20点中18点未満だった者を除いた112名(SD=0.96,平均=20.19)を分析対象とした.
調査時期:本調査は,2018年7月に実施した.
調査内容
①デートDV暴力観:身体的暴力1項目(顔や身体殴ったり,叩く),精神的暴力3項目(腹を立てたとき長い期間無視する・大声で怒鳴りつける・一緒にいることを要求する)の計4項目を採用した.精神的暴力については,赤澤・竹内(2015)で分類された精神的暴力の3側面(相手を服従させる・自尊心を失わせる・孤立させる)から各々1項目用いた.それらの項目について,「全く暴力にあたらない(1点)」から「完全に暴力にあたる(7点)の7件法で尋ねた.
②暴力経験:不適的な被養育経験,いじめ被害・加害経験,デートDV被害・加害経験については,暴力観で用いた4項目について,「一度もない(1点)」から「何度もある(3点)」の3件法で尋ねた.
③社会的望ましさ:北村・鈴木(1986)による日本語版Social Desirability Scaleの10項目を使用し,回答は2件法で尋ねた.
分析方法:本研究の分析には,統計解析ソフトのIBM SPSS Statisitics 24およびAmos for Windows Ver.21を使用した.
倫理的配慮:調査を実施する際に,匿名性が保証されていること,回答が任意であり調査に協力しないことによる不利益が一切ないことを表紙に明記し,質問紙の配布時に口頭でも伝えた.また,参加者への負担を考え,調査では暴力項目だけでなく,受容的な項目も加え質問した.
結 果
 不適切な被養育経験,いじめ被害・加害経験,デートDV被害・加害経験,およびデートDV暴力観の関連性について検討するために,共分散構造分析を行ったところ高い適合度が得られた(χ=.73, p=.99, GFI=.996, AGFI=.985, CFI=1.00, RMSEA=.00).有意なパスをFigure 1に示した.
考 察
 大学生を対象として,不適切な被養育経験,いじめの加害/被害経験,デートDVの加害/被害経験,およびデートDV暴力観の関連について検討した結果,不適切な被養育経験が,いじめの被害・加害経験を高めることが明らかになった.また,いじめの加害経験が,デートDVの被害・加害経験を高め,暴力への認識を低めることが示された.井ノ崎・野坂(2010)の中学生・高校生を対象とした研究では,虐待やいじめの被害経験とデートDVにおける加害経験に関連が示されていた.本研究においても,不適切な被養育経験,いじめの経験,およびデートDVの経験間に関連がみられた.Wolfe et al.(2009)は,親からの虐待経験が,子どもの内的ワーキングモデルや情動反応調整能力の働きを妨げ,その結果として関係性に基づいた困難さを抱えるリスクが高くなることを指摘している.不適切な被養育経験の結果としての関係性における困難さが,その後のいじめやデートDVの被害や加害に繋がる可能性が本研究においても示唆された.
 次に,暴力の連鎖がデートDVの暴力観に及ぼす影響について検討した結果,いじめやデートDVの加害経験はデートDVの暴力観を低めていた.伊田(2010)は,デートDVを引き起こす要因のひとつとして,加害者が「力による支配」を肯定しているという点を挙げている.つまり,加害経験が多い者は暴力を肯定的に捉えている可能性があるため,暴力への認識が低かったのだと考えられる.一方,デートDVの被害経験はデート暴力の暴力観を高めいていた.小泉・吉武(2008)では,交際中は相手に対して好意を持っており,第三者視点からの客観性が失われ,加害・被害といった視点から見ようとしない傾向にあると指摘されていた.しかし,本研究の結果から,被害経験は暴力の認識を高めており,加害経験と被害経験の違いが示された.被害経験が暴力への認識を高める要因となるのかについては,今後更なる検討が必要である.
※本研究はJSPS科研費JP16K01805の助成を得て行われた.

キーワード
デートDV/いじめ/不適切な被養育


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