発表

1C-069

不実と年収のリンク

[責任発表者] 黒澤 泰:1
1:茨城キリスト教大学

問題
 家庭内暴力や深刻な夫婦間葛藤のように,ある夫婦では結婚生活を通して経験せず,別の夫婦ではときに頻繁に経験するネガティブなライフイベント(Randall & Bodenmann, 2017)は存在する。その中でも,浮気や不倫は夫婦関係においてよく起こる問題であるといわれている(Atkins et al, 2001)が,既婚者を対象とし,大規模データを用い,メカニズムの解明を試みた国内研究は少ない。浮気や不倫はマスメディアでも日々取り上げられるキャッチーなトピックであるからこそ,メカニズム解明のため実証研究に基づく頑健な知見を蓄積していく必要があるだろう。
 先行研究では,夫婦関係の質が低いと感じていること(Buss & Shackelford, 1997),高い関係内ストレッサー(Kurosawa, 2018)など心理変数が浮気や不倫の存在を予測する可能性が示されている。しかし,Atkins et al (2001)では,年収3万ドル以上の場合,年収の高さと浮気や不倫の存在が関連することを示している。
 本発表では,Atkins et al. (2001)の知見を参考にし,年収という社会経済的変数と不実(浮気や不倫)がリンクしているのか否か,リンクしている場合,どのような関係が存在するのかを明らかにすることを目的とする。

方法
手続き:2017年6月に,株式会社U’eyes Design社に依頼しオンライン調査を行った。研究対象者の条件として,Merz et al. (2014)を参考に,20歳~45歳(均等ではなく自然発生での回収),婚姻歴が一年以上あること,かつ,婚姻期間中ずっと同居であるという条件を設定した。
使用尺度:日本語版MSQ(MSQ-J)を用いた。本調査において用いたその他の尺度に関しては,Kurosawa & Yokotani (2018)をご参照願いたい。
分析計画:本発表では,Q13:浮気・不倫(自身がおこなったもの,もしくは,パートナーがおこなったもの)の1項目と個人年収についての回答,および,世帯年収についての回答に注目し,クロス表を作成した上で,分析を行った。分析は,js-STAR version 9.2.5を用いた。
倫理的配慮:回答者の個人情報(氏名・住所)は本調査の委託業者のみが知り得る立場にあり,調査者は匿名化されたIDと回答データのみの情報を得たため,匿名性は担保された。調査協力者は本調査の趣旨と調査者の権利を記載したトップページを読み,”同意する”にチェックを入れた上で調査への回答を開始し,参加はいつでもとりやめることができた。

結果
記述統計:592人(夫294人,妻298人)のデータを分析に用いた。夫の平均年齢は39.95歳(SD = 4.36), 妻の平均年齢は37.10歳(SD = 5.29)であった。
ネガティブなライフイベントと年収の関連:カイ二乗検定の結果,浮気・不倫の有無と個人年収(x2(7)= 19.187 , p<.01),世帯年収(x2(7)= 15.944 , p<.05)ともに有意な結果が示された。残差分析の結果,個人年収が600万以上(600万~800万,800万~1000万,1000万以上)の場合,はいは有意に多く,いいえが有意に少ないことが示された。世帯年収が200万~300万の場合,はいが有意に少なく,いいえが有意に多かった一方,800万~1000万の場合,はいが有意に多く,いいえが有意に少ないという結果が示された。

考察
 本研究の知見は,Atkins et al.(2001)の大規模な社会調査の知見と沿うものである。配偶者以外と浮気や不倫という形で関係を持つことは,さらなる出費を必要とするため, 高い年収と浮気や不倫の存在は関連するのではないかというAtkins et al. (2001)の指摘は日本の既婚者においてもあてはまるのではないかと推察される。

文献
 Atkins, D. C., Baucom, D. H., & Jacobson, N. S. (2001). Understanding infidelity: Correlates in a national random sample. Journal of Family Psychology, 15(4), 735-749.
 Kurosawa, T., & Yokotani, K. (2018). Validation of the Japanese Version of the Multidimensional Stress Questionnaire for Couples: Factor Structure, Validity and Reliability. Journal of Relationships Research, 9, E16. doi:10.1017/jrr.2018.15

付記:本発表において用いたデータは,第81回日本心理学会大会(話題提供),第1回日本離婚・再婚家族と子ども研究学会(口頭発表),アメリカ心理学会(ポスター発表)にて,異なる研究目的,異なる分析にて発表されている。本研究は,科研費(16K17315; 17K04338)の助成を受けた。

キーワード
浮気・不倫/日本語版カップル用多側面ストレス尺度/年収


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