発表

1C-068

大学生のピア・アタッチメントとメンタルヘルス問題の関連性

[責任発表者] 西川 里織:1
[連名発表者・登壇者] 匡 路#:1,2
1:熊本大学, 2:広西師範大学

目 的
 青年期における愛着の安全基地は,養育者として機能する一方,愛着の対象は親から友人へ,そして恋人や配偶者へ移行する(Bowlby,1969・1973)。Hazan & Shaver(1987)は,青年期以降に形成された親密な対人関係である恋愛関係や友人関係を愛着関係とした。近年,若者の愛着スタイルと精神的健康の関連性はよく知られている。高校生を対象とした研究では,両親との関係が肯定的で仲間への愛着(peer attachment style)が安定型であると自己概念も肯定的になる一方,対人関係を否定的にとらえる不安定型の愛着を有する高校生は,自己概念も低く,不安,気分の落ち込み,攻撃性,非行などの問題行動が多いことが報告された(Nishikawa, Hägglöf, & Sundbom,2010)。本研究では,Nishikawaら(2010)が使用したメンタルヘルスの多次元構造モデル(Achenbach & Rescorla, 2003)と仲間への愛着スタイル(peer attachment style)の関連性を大学生を対象に調べることを目的とした。
方 法
研究対象者:170名の大学生のうち未回答項目がなかった166名の大学生(男性40名と女性126名,平均年齢 = 19.82歳, SD = 0.923)を対象とした。質問紙の実施にあたり,授業中に質問紙の説明や教示を行った。参加の意思を得た協力者は,その場で調査に参加した。質問紙全体への回答の所要時間は,20分ほどであった。

1)日本語版RQ(Relationship Questionnaire)
 日本語版RQは,Bartholomew&Horowitz(1999)が開発した関係尺度RQ(Relationship Questionnaire)を元に加藤が(1998)が日本語で作成した質問紙で,「一般他者(人)」との関係について4つの愛着スタイル(A.安定型,B.拒絶型,C.とらわれ型,D.恐れ型)の特徴を記述した文章からなっている。「人に対する感じ方のタイプ」として導入された4つの文章(愛着スタイルの記述文)のそれぞれについて,どの程度自分に一致しているかを,7件法で自己評定する。次に,その4つのスタイルから自分に最も当てはまると思うスタイルを1つ選択し,それを被験者の愛着スタイルと見なした。

2)日本語版ASR(Adult Self Report)
 ASRは,Achenbach & Rescorla(2003)のオリジナル版を船曳&村井(2015)が日本語で標準化した全126問の自己記述式質問紙で,A)内向問題(①不安/抑うつ, ②引きこもり,③身体愁訴),B)外向問題(④攻撃的行動,⑤規則違反的行動),⑥思考の問題, ⑦注意の問題, ⑧侵入性,⑨その他の問題を測定する。①〜⑨のサブスケールの全得点がC)トータル・プロブレムとなり,高い得点はメンタルヘルス問題を意味する。
結 果
 SPSS(ver22)で統計解析を行った。愛着スタイルの割合は,安定型(n=45, 27.1%),拒絶型(n=14, 8.4%),とらわれ型(n=68, 41%),恐れ型(n=39, 23.5 %)となった。不安定型が安定型よりも多く,特にとらわれ型が最も多いという結果は先行研究(加藤,1998)と同じとなった。相関分析(Pearson’s r)では,安定型はASR尺度と負に相関し,不安定型スタイルは正の相関を示した(Table1)。One-way ONOVAによると,安定型群が不安定型群よりも低い不安/抑うつ,引きこもり,攻撃性を示した(p < .005 & .05, Table1)。特に引きこもり尺度では,安定型が全ての不安定型スタイルよりも低い結果が出た。
 2(安定・不安定型愛着)×2(性別)ANOVAでは,愛着スタイルと性別がメンタルヘルス問題に有意な主効果を示した(p < .005 & .05)。男性が女性よりも引きこもり得点が高く(p < .005),不安/抑うつ,引きこもり,身体的愁訴,思考の問題,攻撃的行動尺度において,不安定型を有する群が安定型よりも優位に高いという結果が出た(p < .005 & .05)。性別×愛着の交互作用が侵入性尺度で見られ(p < .05),女性群においては,不安定型が安定型よりも侵入性得点が高いのに対し,男性群においては,安定型が不安定型よりも侵入性が高いと出た。考 察
 本研究の主な結果は,自分自身と他人との関係性をどちらも肯定的に感じているほどメンタルヘルス問題が低い傾向にあるが,自分自身や他人との関係を否定的に,または自分自身が肯定的であっても他人を否定的に感じるほどメンタルヘルス問題が高い傾向にあることを示した。侵入性尺度における性別×愛着の相互作用では,侵入生尺度にある自慢する,注目をされたがるという行動の捉え方が男女で違う可能性が考えられる。本研究では,親からの養育体験は分析しておらず,本研究の大きな限界点はサンプルサイズの小ささと男女比にあり,大きな規模での調査研究が必要と考えられる。

キーワード
愛着スタイル/ピア・アタッチメント/メンタルヘルス問題


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