発表

1C-065

図と地課題および競合語課題を用いた選択的聴取能力の発達

[責任発表者] 加藤 正晴:1
[連名発表者・登壇者] 中島 七海#:1, 寺田 千沙子#:1, 竹原 卓真:1, 嶋田(源) 容子:2, 木谷 俊介#:3
1:同志社大学赤ちゃん学研究センター, 2:金沢学院短期大学, 3:北陸先端科学技術大学院大学

目的
 音声刺激の分析が受動的か能動的かに依存して聴覚発達の軌跡は異なることが知られている。単に到来した音を受動的に分析する役割を担うだけであれば,我々の聴覚系は生後初期に成人と同等のレベルに達する(レビューとして,Werner and Leibold(2011))。それに対して,雑音の中から聞きたい音を聞く(選択的聴取)という能動的な側面を考慮に入れると,子供の聴覚系は成人よりも劣る(たとえば,Oh et al.,( 2001))。しかし,日本において選択的聴取の発達を調べた基礎的研究は我々の知る限りない。言語的ごとの音響特性の違いを考慮すると言語環境が異なると聞き取りにくさの程度も異なる可能性がある。
 そこで本研究では聴覚における図と地課題と競合語課題を用いて選択的聴取能力の発達を検討することを目的とした。本研究によって,高次機能の不具合と関係のある聴覚情報処理障害の理解や,子供たちの生活環境の見直しに役立つことが期待される。
方法
 参加者:図と地課題には9名(男性3名,女性6名)の児童(5歳0か月±0年8か月(平均±標準偏差))と7名(男性3名,女性4名)の成人(43歳0か月±8年6か月)が,競合語課題には10名(男性4名,女性6名)の児童(5歳0か月±0年7か月)と7名(男性3名,女性4名)の成人(43歳±8年6か月)が参加した。
 刺激と手続き:初めにDPOAE(歪成分耳音響放射)によって,実験参加者の聴覚が正常であるか確認した。次に図と地課題が実施された。この課題において実験参加者はノイズ(雑踏音,66.4dB)が存在する中で単語音声(左耳:60.3±3.2dB, 右耳:61.4±3.3dB)を聴取する必要があった。単語音声は「はい」という呼びかけ(66.9dB)の0.5秒後に呈示され,参加者はその後7秒の間に聴取した単語を口頭で回答するよう求められた。課題は片耳ごとに行われ,各20語の単語音声が呈示された。最後に競合語課題が実施された。競合語課題において,実験参加者は各耳に同時に呈示される異なる二つの単語音声(L:62.2±2.6dB, R:60.9±3.1dB)を聴取する必要があった。二つの単語音声は「はい」という呼びかけの0.7秒後に呈示され,参加者はその後8秒の間に聴取した単語を二つとも口頭で回答するよう求められた。この際,復唱の順番は問わなかった。各耳に20個の単語音声が呈示された。実験終了におよそ20分程度を要した。
結果
 参加者全員がDPOAEを通過した。
 図と地課題および競合語課題のいずれも各耳の単語の正答数を選択的聴取の達成度の指標とした。
図1に図と地課題の,図2に競合語課題の各耳における群別の正答数を示した。図と地課題について,被験者間要因として年齢(5歳,成人),被験者内要因として検査耳(L,R)とした混合モデル分散分析を行なった。年齢の主効果が有意(F(1,15)=36.01, p<.001)であったが,検査耳の主効果および両者の交互作用は有意でなかった。
 競合語課題についても,同様の分散分析を行なったところ,年齢の主効果が有意(F(1,16)=15.68, p=.001)であったが,検査耳の主効果および両者の交互作用は有意でなかった。
考察
 本研究では,図と地課題と競合語課題を用いて選択的聴取能力の発達を検討した。実験の結果,全員がDPOAEを通過したにも関わらず,両課題において成人群の方が児童群よりも正答率が高いことが示された。これは先行研究の結果と一致しており,内耳レベルでの発達は成人と同等であっても注意などの高次認知機能は生後5年経過してもまだ発達途中であることを意味する。その一方で,競合語課題で想定された右耳優位性が有意でなかった。この理由について今後検討していく予定である。
引用文献
 Oh,E.L., Wightman,F.,& Luffi,R.A.(2001). J Acoust Soc Am, 109, 2888-2895.
 Werner,L.A.,& Leibold,L.J.(2011). Comprehensive handbook of pediatric audiology (pp.62-82).

キーワード
選択的聴取/聴覚的図と地課題/競合語課題


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