発表

1B-074

児童期における社会経済的地位と援助要請の関連に対する自己知覚の調整効果

[責任発表者] 石井 僚:1
[連名発表者・登壇者] 黒松 拓馬#:1, 広瀬 由衣#:1, 藤井 理沙#:1, 布野 詩織#:1, 又野 裕成#:1, 宮本 真衣#:1, 中山 留美子:1
1:奈良教育大学

問題と目的
 我が国における子どもの相対的貧困率は13.9%とされており (厚生労働省, 2016),およそ7人に1人の子どもが相対的貧困の下で生活をしている。こうした貧困を含む社会経済的地位は,子どもの発達や教育と関連することが指摘されている (藤田, 2012)。例えば耳塚 (2009) は,概して世帯年収の高い子どもほど,文部科学省の全国学力・学習状況調査における国語や算数の平均正答率が高いことを示しているほか,Bradley & Corwyn (2002) では,社会情動的な発達やwell-beingとの関連が指摘されている。いじめとの関連も示されている社会経済的地位 (Tippett & Wolke, 2014) に関して,学校などでの支援が必要と考えられる。
 しかし現代の貧困は,「見えない」貧困と呼ばれるように,外見などからは容易に把握しづらいことが指摘されている (e.g. 青木, 2010)。また,Calarco (2011) は,社会経済的地位と援助要請との関連を明らかにしており,子ども本人からも援助を求めることが困難な現状がうかがえる。社会経済的地位の高低に関わらず,子どもが援助要請を行う際に必要となる要因を明らかにする必要がある。
 社会経済的地位が低い子どもであっても,自己を肯定的に知覚できていれば,援助要請できる可能性がある。援助要請は自己肯定感との関連が指摘されている一方 (e.g. 斉藤・齋藤, 2019),社会経済的地位は自尊感情との関連も示されている (Zhang, & Postiglione, 2001)。しかし,全体的な自尊感情が低かったとしても,自己の1側面でも肯定的に知覚できていれば,援助要請ができる可能性が考えられる。
 以上のことから本研究では,社会経済的地位と援助要請の関連に対する自己知覚の調整効果について検討する。

方法
対象者と手続き
 小学5,6年生162名 (男子81名,女子81名) を対象に質問紙調査を行った。
質問紙
 社会経済的地位 2012年のPISAで使用された,家庭の学習リソース,文化的所有物の項目 (国立教育政策研究所, 2013) から,社会経済的地位を高い精度で代替可能と考えられる3項目を用いた (2件法)。
 援助要請 本田・新井・石隈 (2010) の援助要請スキル尺度のうち,本田他 (2015) で用いられた4項目を用いて,援助要請をどの程度しているかを尋ねた (4件法)。
 自己知覚 児童期版の改訂・自己知覚尺度日本語版 (眞榮城・菅原・酒井・菅原, 2007) の下位尺度である学業能力評価,友人関係評価,運動能力評価,容姿評価,各6項目を用いた (4件法)。
 デモグラフィック変数 性別,年齢を測定した。

結果
 援助要請の得点を従属変数,社会経済的地位,自己知覚の各下位尺度をStep 1の独立変数,それらに加えて社会経済的地位と自己知覚の各下位尺度の交互作用項をStep 2の独立変数とした階層的重回帰分析を行った (Table 1)。その結果,Step1 においては友人関係評価の主効果のみが,Step 2においては友人関係評価の主効果に加え,社会経済的地位と学業能力評価の交互作用が有意であった。交互作用が有意であったため単純傾斜分析を行ったところ,社会経済的地位と援助要請の関連は,学業能力評価低群においてのみ有意な正の関連がみられた (b = 0.16, p < .05)。

考察
 本研究の目的は,社会経済的地位と援助要請の関連に対する自己知覚の調整効果について検討することであった。階層的重回帰分析の結果,自己知覚のうち,学業能力評価が高い子どもは,社会経済的地位と援助要請との関連が示されず,反対に学業能力評価が低い子どもは,社会経済的地位の低さと援助要請のできなさが関連することが示された。多くの時間を学校の授業を受けて過ごす小学生にとっては,学業成績が持つ意味 (深谷, 2017) は大きいため,学業能力評価の調整効果がみられたと考えられる。

キーワード
社会経済的地位/援助要請/自己知覚


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