発表

1B-069

子どもの移動自由性(independent mobility)の発達

[責任発表者] 小島 康生:1
1:中京大学

目 的
 主に都市部では,就学前の子どものそばには誰かしら大人が付き添うのが当然である。家庭では親が,また保育園/幼稚園では保育士/担任教諭が子どものそばに付き添う(習い事でも同様である)。ところが小学校に入学すると状況は大きく変わる。登下校に始まり,習い事へ行くのにも必ずしも親その他大人がそばにいるわけではなくなる。子どもだけで遊びに出かけることも増え,親が子どもの居場所を把握していないことさえある。こうした,大人を伴わない子どもだけでの活動は,移動自由性(independent mobility)と呼ばれ,海外をはじめ子どもの自立の指標と考えられてきた。しかしわが国の,特に心理学の分野では,こうした観点から子どもの自立をとらえようとしたものは少ない。他の先進国と比べて日本は治安が良く,小学校低学年でも子どもだけでの外出が認められる傾向にある。本研究では,小学生を対象にこの移動自由性の実態,また関連要因として何が重要かを横断的データから明らかにする。
方 法
 調査委託会社を通じ,小1~6年生までの子どもがいる母親2,100名を対象に調査を実施した。小学生の子どもが複数いる場合は,学年が上のほうの子どもについて回答を求めた。
調査内容は,デモグラフィック変数(学年・性別,両親の年齢,学歴,収入,職業など)のほか,地域特性(都市部/郊外/農村),地域環境に関する尺度(11項目),居宅(戸建/集合住宅),学校までの距離と下校の手段,ほかに自転車や家の鍵の利用,携帯電話の所持などで構成されていた。本報告の主題である「子どもだけでの外出」に関しては7つの項目を設け,それらに対し,親の同行なしに出かけることを許容しているかどうかを「常に子どもだけではしてはいけないことにしている」から「・・してもいいことにしている」までの5つのうち当てはまるものを選んで回答してもらった。
結 果
 子どもだけでの外出に対する許容度に関し,最尤法,プロマックス回転による因子分析を行い,2因子を抽出した。第1因子は3項目からなり,「バス・電車を利用しての外出」など公共性の高い場への外出の許容を示す内容であった。第2因子も3項目からなり,友達の家や公園など学区内のなじみのある場への外出の許容を示す内容であった。以上2つの因子の尺度得点を計算し,それらと他の変数との関連を分析した。
(1)学年・性別・出生順位との関連 3要因のANOVAを行った。第1因子に関しては,学年,性別の主効果が有意であった(学年の上昇と共に増加,男子>女子)。学年×出生順位の交互作用も有意であった。第2因子に関しては,学年,性別の主効果(内容は第1因子とほぼ同じ)のほか出生順位の主効果も有意であった(第二子以降>第一子>一人っ子)。学年×出生順位の交互作用も有意であった。(2)学校までの距離・下校手段との関連 それぞれ1要因のANOVAを行ったところ,第2因子に関して主効果が確認された。学校までの距離が近く,単独で下校する子どもでは,尺度得点が高かった。(3)地域環境との関連 因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,3因子を抽出した(主要な施設へのアクセスの良さ,交通事故・犯罪などの怖れ,整備の行き届いた近隣環境)。地域環境(3因子)×子どもだけでの外出(2因子)の相関係数を計算した結果,5か所で有意な正負の相関が認められた。しかし,r値はかなり小さかった(|r|<0.12)。(4)自転車での外出・鍵の利用・携帯電話の所持との関連 第2因子に関して,3変数すべての主効果が有意であった。自転車に頻繁に乗る子ども,鍵や携帯電話の所持や認められている子どもは,尺度得点が高かった。また,第1因子に関しては,鍵の所持の主効果が有意であった。鍵の所持が認められている子どもは得点が高かった。(5)重回帰分析 以上を説明変数とし,子どもだけでの外出の許容に関する2因子を目標変数とする,強制投入法の重回帰分析を行った。第1因子に関して,決定係数はR2=.03(p<.001)で,全体として有意な影響がみられた。偏回帰係数を見ると,学年(B=0.06, SE B=0.02, β=-.08, p<.01),性別(B=-0.23, SE B=0.07, β=-.08, p<.01),主要な施設へのアクセスの良さ(B=-0.15, SE B=0.05, β=-.08, p<.01),交通事故・犯罪などの怖れ(B=-0.21, SE B=0.06, β=-.08, p<.01)が有意な影響を与えていた。学年が上がるにつれ,また男子のほうが公共性の高い場への外出が許容されること,主要な施設にアクセスしやすく,事故・犯罪の怖れが強いほど,公共性の高い場への外出が許容されにくいことが示された。第2因子に関しては,決定係数はR2=.16(p<.001)で,こちらも全体として有意な影響がみられた。学年(B=0.09, SE B=0.01, β=-.19, p<.001),出生順位(B=0.01, SE B=0.00, β=-.05, p<.05),性別(B=-0.12, SE B=0.04, β=-.08, p<.01),小学校までの距離(B=-0.05, SE B=0.02, β=-.06, p<.05),下校手段(B=0.15, SE B=0.03, β=.11, p<.001),交通事故・犯罪の怖れ(B=-0.11, SE B=0.03, β=-.07, p<.01),自転車の利用(B=0.11, SE B=0.02, β=.15, p<.001),鍵の所持(B=0.12, SE B=0.04, β=.07, p<.01)が有意な影響を与えていた。学年が上がるにつれ,また男子のほうが外出が許容されること,第二子以降は外出が許容されやすいこと,事故・犯罪の怖れが強いほど外出が許容されにくいこと,自転車の利用や鍵の所持が認められているほうが外出が許容されやすいことが示された。
考 察
 抽出された2因子(公共性の高い場への外出,なじみのある場への外出)のいずれに関しても,学年の影響は強く見られた。だが,それ以外にも地域環境をはじめ多くの変数の影響が確認された。学年ごとに,どの変数の影響が強くみられるか,またそれが子どもの一般的な自立とどう関係しているかを今後検討していきたい。

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