発表

1B-068

幼児期のCool/Hotな実行機能と児童期の学校適応
幼稚園年長時点~小学校4年生時点までの縦断研究

[責任発表者] 中道 圭人:1
[連名発表者・登壇者] 中道 直子:2, 中澤 潤:3
1:千葉大学, 2:日本女子体育大学, 3:植草学園大学

目 的 本研究では,幼児期の実行機能(Cool-EF,Hot-EF)が適応に及ぼす影響を明らかにするため,就学後の学業的・社会的適応との縦断的関連を検討した。
方 法 参加児: 幼稚園年長時点(Time 1)および小学1-4年時点(それぞれTime 2-5)での調査に参加し,全時点でデータ欠如のない46名(男24,女22)が分析対象となった。Time 1時点の平均月齢は78.08か月(SD = 3.34)で,男女による月齢差はなかった。
 手続き・測度: Time 1は個別面接で,Time 2-5は集団で以下の課題を実施した(詳細はNakamichi, Nakamichi, & Nakazawa, in pressを参照)。なお,本研究は千葉大学の倫理審査を経て,保護者・参加児の同意を得て実施した。
【Time 1】 (1)Cool-EF測度[白黒課題,晴れ-雨課題,Simon-Says,数字逆唱課題]: 白黒課題では色カード(白・黒)を,晴れ-雨課題では天気カード(晴れ・雨)をPC画面上に順に提示し,カードとは逆の色・天気(例: 白カードに“黒”)をできる限り早く,口頭で同定するよう求めた。Simon-Saysでは,“Simon Says”と言った後に指示した動作(例:鼻に触って)を行い,“Simon Says”と言わなかった場合(not試行)は指示した動作を行わないよう求めた。数字逆唱課題では,実験者が読み上げた数列を,逆順で言うよう求めた。(2)Hot-EF測度[誘惑抵抗課題,子ども用ギャンブリング課題(CGT)]: 誘惑抵抗課題では,実験者は参加児の前の机上に魅力的な玩具を置いた後,玩具に触らないよう指示して部屋から退室し,参加児を5分間一人にした。CGTでは,4つのカードデッキから順次1枚ずつカードを引き,手持ちのオハジキをできる限り多くするよう参加児に求めた(全40試行)。各カードにはオハジキの利損が絵で記載された。デッキの内,2つは各カードの獲得数・損失数が少なく(例:オハジキを1個獲得,1個損失),最終的に獲得数が多くなるデッキ(利益デッキ)で,残り2つは各カードの獲得数は多いが,損失数も多く(例:オハジキを2個獲得,13個損失),最終的に損失数が多くなるデッキ(ハイリスクデッキ)であった。CGTでは21-40回の試行で,適切に利益デッキを選択できた割合【 (利益デッキ選択数 – ハイリスクデッキ選択数) / 20 】を分析に用いた。
【Time 2-5】 (1)学業的達成測度: 各学年で教研式CRT-Ⅱの国語・算数のテストを実施した。(2)社会的適応測度: クラスの中で一緒に遊ぶ人を3名まで指名させた。
結 果 合成得点の作成: Cool-EFおよびHot-EFの各課題得点を標準得点化し,Cool-EF・Hot-EF毎の合成得点を算出した。
 各指標の関連: 幼児期(Time 1)のEFと,児童期(Time 2-5)の適応に関わる指標の関連を検討するため,Pearson相関係数を算出した。その結果(Table 1),幼児期のCool-EFは全時点の,Hot-EFは小1・3・4時点の「学業達成」と有意な正相関を示した。また,Hot-EFは小3・4時点の「仲間からの受容」と有意な正相関を示した。
 幼児期のEFが児童期の適応に及ぼす影響: Time 2-5の適応に関わる指標それぞれを従属変数,Time 1のCool/ Hot-EFを説明変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。その結果(Table 2),Cool-EFは全時点の「学業達成」,Hot-EFは小4時点の「学業達成」および小3・4時点の「仲間からの受容」に有意に寄与した。
 次に,従属変数としてTime 5の適応指標,説明変数としてTime 1のCool/Hot-EFをステップ1,従属変数に対応したTime 2-4の適応指標を続くステップで順次投入した階層的重回帰分析をそれぞれ行った。その結果,幼児期のHot-EFは小1-3時点の学業達成を超えて,小4時点の「学業達成」に寄与した(β = .14, p = .06)。また,Hot-EFは小1・2時点の仲間受容を超えて,小4時点の「仲間からの受容」に有意に寄与した(β = .34, p = .02)。
考 察 Cool-EFは就学後4年間の学業達成を予測するが,その影響力は就学直後で最も高かった。一方,Hot-EFは就学直後というより,数年後の学業達成や社会的適応を予測した。中学年以降,学習内容が高度化し,仲間関係が複雑になる中で,意欲や感情の制御がより重要な要因となるのかもしれない。
付 記 本研究は2018カシオ科学振興財団研究助成[中道圭人],JSPS科研費[中道圭人,JP19K03223],JSPS科研費[中澤潤,JP18K03055]の助成を受けた。

キーワード
実行機能/学業達成/仲間関係


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