発表

1A-075

大学生のキャリア探索の意義—就職活動維持過程と内定後不安に着目して—
―就職活動維持過程と内定後不安に着目して―

[責任発表者] 湯口 恭子:1
1:関西大学

【目的】 本研究は大学生にとって生き方の選択となる就職活動を通じ,その準備段階であるキャリア探索に着目する。キャリア探索は個人が自分自身や仕事,職業,組織について情報を収集し理解を深めることで,仕事世界への移行やその後の適応プロセスに関りを持つ意図的行動である(Jordaan, 1963; Stumph, Colarelli, & Hartman, 1983)。一方,仕事世界への移行準備には,課外活動など広い範囲の活動を含む(Jordaan,1963)ことから,本研究では自己探索,環境探索の他,学生生活探索という概念を加えた。就職活動は不安が高まっても,途中で辞めずに活動を継続する必要がある(輕部・佐藤・杉江, 2015)。本研究はキャリア探索の意義を明らかにするため,キャリア探索を行っていた学生は 就職活動を維持しやすく,内定後の不安も低いかどうかを検討した。
【方法】 2018年11月から12月,複数私立大学4年次ゼミ教員22名に無記名調査票(349名分)を配布し,286名の回答を得た。内232名(男性110名・女性122名)を分析対象とした。著者所属機関の研究・倫理委員会の承認を得て,調査票に守秘義務などを記載し,承諾を得た者に実施した。属性と内定数,時期,志望度の他,満足度,働く意欲を尋ねた。キャリア探索の自己探索,環境探索は安達(2008),若松(2006)を,学生生活探索は湯口(2016)を追加,修正した。内定後不安は,松田・永作・新井(2008)の「職業移行不安」,藤井(1999)の「就職不安」から,内定後の不安に関する項目を使用した。就職活動維持は,輕部・佐藤・杉江(2015)の就職活動維持尺度を使用した。
【結果】 因子分析は主因子法,プロマックス回転を使用し,因子数はスクリー基準に準拠し,先行研究や解釈可能性を考慮した。因子負荷量と共通性,累積寄与率,α係数を検討の上,不十分な項目を削除し,因子分析を反復した。尺度得点は各項目得点の平均を算出した。キャリア探索は5因子29項目の「環境探索(興味行動)」(α=.854),「学生生活探索(学業)」(α=.861),「自己探索」(α=.859),「学生生活探索(異質交流)」(α=.760),「環境探索(就職準備)」(α=.716)となった。内定後不安は2因子10項目の「社会自立不安」(α=.933),「会社適応不安」(α=.898)となった。就職活動維持は先行研究通り6因子32項目とした。「自分らしい就職活動態度の確立」(α=.811),「模索的行動」(α=.870),「目標の明確化」(α=.841),「不採用経験の振り返り」(α=.805),「他者への自己開示」(α=.780),「認知的切り替え」(α=.771)である。各下位尺度間の相関係数を算出したところ,キャリア探索は就職活動維持と関連があり,特に不採用経験の振り返りは全てのキャリア探索と関連していた。一方,キャリア探索は内定後不安とはほぼ関連がなかった。
 続いて最尤推定法による共分散構造分析を行った。キャリア探索・就職活動維持・内定後不安を潜在変数,各因子を観測変数とし,キャリア探索から就職活動維持,就職活動維持から内定後不安,キャリア探索から内定後不安へのパスを全て仮定したモデルを構成した。内定後不安に向かう全ての有意ではないパスと,就職活動維持の観測変数に向かう有意でないパスを削除した。適合度指標はχ2 = 70.182, df = 19, p < .001, GFI = .928,AGFI = .863,RMSEA = .108,AIC = 104.182となり,十分なモデルは得られなかった。キャリア探索は就職活動維持と関連しているが,内定後不安とは関連していないことが示唆されため,内定後不安の代わりに,内定先への満足度と働く意欲を観測変数とし,潜在変数「満足・意欲」を置いたモデルを設定した。適合度指標はχ2 = 97.363, df = 33, p < .001, GFI = .922,AGFI = .870,RMSEA = .092,AIC = 141.363となり,最初よりもデータに適合した結果が得られた。
【考察】 第一に,キャリア探索を行っているほど就職活動を維持しやすいことが明らかになった。とりわけキャリア探索は,就職活動維持6因子の内,「模索的行動」「他者への自己開示」「認知的切り替え」とほとんど関連しておらず,「目標の明確化」「不採用経験の振り返り」を高めていた。キャリア探索は,深く考えずに就職活動だけを増やしたり,感情を吐き出すだけの「とりあえず精神」ではなく,自己と対峙し,将来を考えることにつながる可能性がある。第二に,キャリア探索は内定後不安に直接影響せず,就職活動維持を媒介して,内定先への満足や働く意欲を高めていた。このことはキャリア探索が,不採用経験というつらい体験を乗り越え,内定先に対する積極的な態度を形成することを意味しており,キャリア探索が変化への対応力をもったポジティブな活動力と関連している可能性が考えられる。
【引用文献】
安達智子(2008) . 女子学生のキャリア意識 -就業動機,キャリア探索との関連- 心理学研究, 79 , 27-34.
Jordaan, J.P. (1963) . Exploratory behavior: The formation of self and occupationalconcepts. In D.E Super (Eds.),career development; self-concept theory. New York : College Entrance Examination Board. 42-78.
輕部雄輝・佐藤純・杉江征 (2015) . 大学生の就職活動維持過程尺度の作成 教育心理学研究, 63, 386-400.
松田侑子・永作稔・新井邦二郎 (2008) . 職業選択不安尺度の作成 筑波大学心理学研究,36 , 67-74.
Stumpf, S .A ; Colarelli, S .M., & Hartman, K, (1983). Development of the career exploration survey (CES). Journal of Vocational Beravior, 22, 191-226.
若松養亮(2006) . 教員養成学部生における進路探索行動と意思決定の関連-11月時点の3年次生を対象に-,滋賀大学教育学部紀要 教育科学, 56, 139-149.
湯口恭子(2016) .「アクション」「ビジョン」と進路決定自己効力に影響を与える大学生活の主観的重要性 関西大学大学院心理学叢誌,16,53-60.

キーワード
キャリア探索/就職活動/内定後不安


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