発表

1A-074

身体部位の脳内表象は大人と子どもで異なるか?

[責任発表者] 岡本 悠子:1,2
[連名発表者・登壇者] 北田 亮:3, 河内山 隆紀#:1,2, 成瀬 廣亮#:4, 宮原 資英#:5, 牧田 快#:4, 岡沢 秀彦#:4, 小坂 浩隆#:4
1:国際電気通信基礎技術研究所, 2:ATR-Promotions, 3:Nanyang Technological University, 4:福井大学, 5:University of Otago

目的
他者の表情理解など身体情報を認識する機能は,乳幼児期から青年期まで長い時間をかけて成熟する。このような成熟はどのような生理学的メカニズムによって生じるのだろうか?大人では,脳の高次視覚野に人の身体を見た時に強く反応する領域があり,その領域では1) 手や足などの運動に関わる身体部位,2) 目や口などのコミュニケーションに関わる身体部位,3) 胸や腰などのそれ以外の身体部位と,身体部位の持つ役割によって空間的な脳活動パターンが異なることが知られている (Bracci et al. 2015)。しかし,子どもでは高次視覚野における身体部位の空間的な脳活動パターンを示すかは明らかになっていない。

方法
高次視覚野における身体部位の空間的な脳活動パターンの発達を調べるため,健常成人20名 (20-31歳) および健常児19名 (9-15歳) を対象に実験を行い,既往歴・知能検査の結果から健常成人1名,健常児2名を解析より除外した。人,イス,8種類の身体部位(手・足・腕・脚・胸・腰・顔上・顔下)を観察した時の脳活動をGE社3.0TMRI装置で計測し,SPM12で解析を行った。まず,イスと比べて人で強く活動する高次視覚野のヒト関連領域を同定した。次に,各身体部位の空間的な脳活動パターンを調べるため,8種類の身体部位を見た時のヒト関連領域内の全てのボクセルの活動 (β値) を抽出した。各身体部位間のβ値の相関を基に非類似度行列 (8条件×8条件) を作成し,多次元尺度構成法を用いて2次元空間にプロットした。これらの脳活動が発達に伴い変化するか検討するため,ヒト関連領域の体積,非類似度行列,多次元尺度構成法の結果が,健常成人群と健常児群で異なるか検証した。

結果
実験参加者ごとに高次視覚野のヒト関連領域の体積を算出したところ,右半球では群間差は認められなかったが (t(32)=1.2, p>0.2),左半球では健常成人群と比べて健常児群で有意に小さかった (t(29)=2.1, p<0.05)。一方で,健常児群と健常成人群の非類似度行列に群間差は認められなかった (Mantle test 左半球 R=0.87, p<0.001, 右半球 R=0.88, p<0.001)。多次元尺度構成法による解析の結果,健常成人群では四肢 (手・足・腕・脚) ,胴 (胸・腰) ,顔 (顔上・顔下) の3つにクラスター化され (Analysis of similarity: 左半球 R=0.75, p<0.01, 右半球 R=0.83, p<0.01),先行研究の結果が再現できた。健常児群でも,四肢,胴,顔の3つにクラスター化され,9-10歳, 11-12歳, 13-15歳に分けて解析をしても同様の傾向が認められた。


考察
学童期から青年期にかけての高次視覚野のヒト関連領域の体積増大は先行研究でも報告されている一方で (Ross et al. 2014),本研究では非類似度行列と多次元尺度構成法によって身体部位を見た時の空間的な脳活動パターンがすでに学童期には成熟している事を初めて明らかにした。これらの結果から考えると,学童期にはすでに高次視覚野では身体に関わる情報がコードされており,学童期から思春期にかけて身体部位に関連する神経細胞群が特定の領域に集まってくることによって身体認知の正確さや速さが備わっていく可能性が考えられる。

引用文献
1. Bracci et al. (2015) Representational similarity of body parts in human occipitotemporal cortex. Journal of Neuroscience.
2. Ross et al. (2014) Body-selective areas in the visual cortex are less active in children than in adults. Frontiers in human neuroscience

キーワード
MRI/身体認知/多次元尺度構成法


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