発表

1A-073

生きがい感スケール作成方法についての新しい提議

[責任発表者] 近藤 勉:1
1:神戸医療福祉大学

 問題の提議
 2017年6月現代QOL研究誌に近藤 勉,鎌田次郎,尾崎勝彦の手による「新高齢者向け生きがい感スケール及び生きがい感の定義」と題する論文が掲載された。しかも調査対象者を全国に求めた画期的なものであり,3因子項目によって構成され結論に到る方法も十分なものであったと自負できるものであった。しかるに時を経るに従い,このスケール作成方法に矛盾点を感じることとなった。それは11項目の中で4項目を占める自負心と言う因子項目である。それは「私はいなければ駄目だと思うことがある」,「私がいるといないとでは違うものである」,「これだけは人に任されないと思うことがある」,「自分にしかできないと思うことがある」で構成されている。けれども内容的には類似項目であるため,その1つに〇をつけたものは残りの3項目にも〇をつける傾向が大となることが予想される。残る2因子項目の下位尺度項目も上記同様の推定がなされる。このことは内的整合性によるアルファ係数が3因子それぞれ0,73~0,77と高い数値であったことからも窺える。この類似項目をなくすために項目作成の段階で十分な吟味をすべきと鈴木淳子(2011)は述べているが,類似項目であるかどうかは因子分析の結果からわかることであり限界があると言えよう。
質問紙調査は世論調査から性格調査を経て種々の感情調査等あらゆる領域に広がってきているが,感情を測る尺度は多項目である場合,回答の多寡によってその感情の分量を決め
ようとしている。それは面積によって体積の大きさをなぞらえていることになる。サイコロジストの知りたいものは体積を知りたい筈である。つまり1項目の内容であっても本人に取って充満感があればよく,その他の項目内容の点数がゼロであってもよい。この点に多項目スケールの矛盾点があろう。

 セルフ・アンカリング・ストライビングスケール(以下セルフスケールと称する)の援用―面積から体積へ
 Cantril,H(1965)が考案したスケールは11段の縦のハシゴ状の図形を提示し,何段目位でしょうかを問う様式であるが,何段目かを問わず図形を横に描き充満度はどの程度でしょうかと問えば体積を測れる可能性に近づいたことになろう。
 科学的な証明に十分耐え得る測定には自然科学の進歩に待つほかはないが,現段階で考え得るこうした心理学的手法があるならば活用すべきであろう。唯,ここで生きがい感とはどう言う概念であるかを調査によって示しておく作業は無駄ではなかろうと考えられる。それは被調査者に対し回答の容易さにつながるからである(図1)。また高齢者の場合生きがい概念調査内容を読解して貰う煩雑さを考慮し簡略な問いかけでも可能と考えられる(図2)。生きがい感は主観であるため社会的価値とは無縁であるため具体例も付記した。上記の考えに立つならば主観的幸福感,充実感などの感情を測るスケール作成にも適応されてしかるべきものと考えられよう。

 今後の課題
 質問項目は一項目でもって程度を測れるスケールのため多項目スケールのような信頼性や妥当性の検証を不要とする考えもあろうが,近藤 勉(2003)はこれの検証を既におこなっている。けれども体積を測ることにより近づいたこのスケールとしての検討もおこなっておくことは今後の課題として最善であろうと考えられる。

 引用文献
Cantril,H.(1965)The pattern of human concerens,22- 23. Rutgers U.P. New Brunswick,N.J
近藤 勉(2003)高齢者の生きがい感測定におけるセルフ・ アンカリングスケールの有効性.老年精神医学雑誌,14(3)  :339-344.
鈴木淳子(2011)質問紙デザインの技法.初版,105-107,ナ カニシヤ出版.

キーワード
多項目スケールの矛盾/体積測定/セルフ・アンカリングスケール


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