発表

1A-068

自己有用感尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
ー高齢者を対象にー

[責任発表者] 伊藤 裕子:1
[連名発表者・登壇者] 山崎 幸子:2, 相良 順子:3
1:文京学院大学, 2:文京学院大学, 3:聖徳大学

自己有用感とは,「自分が必要とされている」「役に立っている」「心の支えになっている」など,相手の存在なしには生まれてこない点で自尊感情や自己肯定感と異なるという(国立教育政策研究所,2015)。一方,近年の長寿命化で,高齢者であっても健康で活力があり,様々な活動に従事している世代が生まれた。ここでは主に60-70代の高齢期男女を対象に,自己有用感尺度を開発し,信頼性・妥当性を検討することを目的とした。
【方 法】
分析対象:60-80代の男女で,男性387名,女性391名,計778名。平均年齢は男性69.8歳(SD=6.1),女性69.3歳(SD=5.8)。
調査方法:2つの大学主催の生涯学習講座受講者,スポーツジム会員,自治会役員,NPO会員,シルバー人材センター会員に調査票(本人と配偶者)を直接配布,回収は全て郵送。有効回収率は39.9%。調査は2018年6-11月に実施した。
分析内容:1.自己有用感:青年期の居場所感尺度を構成する一因子で,石本(2010),栃木県総合教育センター(2013)等を参考に独自に12項目作成(Table1参照)。5件法。2.主観的幸福感:WHOが開発した「心の健康自己評価質問紙」をもとに伊藤・相良・池田・川浦(2003)が作成した12項目,4件法。3.達成動機:社会的動機の一つで堀野・森(1991)が作成した達成動機尺度のうち自己充実的達成動機13項目(5件法)。4.デモグラフィック変数:学歴,収入満足度。
【結果と考察】
1. 尺度構成
 自己有用感について主成分分析を行った。結果は,Table1の通りで,α係数は.94と非常に高く,高い内的一貫性が示された。男性の平均値は3.23(SD=0.67),女性は3.43(SD=0.66) で女性の方が高く(t(772)=4.16, p<.001),ジェンダー差がみられた。また,12項目中10項目ですべて女性の方が有意に高かった。
 次に達成動機では,元は大学生を分析対象としているため改めて検討を行った。天井効果のみられた項目があり,12項目で主成分分析を行った。α係数は.90と非常に高く,内的一貫性が得られた。
主観的幸福感,達成動機ともジェンダー差はみられなかった。
2. 妥当性の検討
 併存的妥当性として達成動機との相関をみた。Table2にみる通り,前向きで意欲的な気持ちと自己有用感との相関は男女とも非常に高
かった。次に,予測的妥当性として主観的幸福感との相関をみた。「自分は誰かの役に立っている」「自分は必要とされている」という感覚は,年をとっても精神的健康を高めると考えられ,男女とも高い相関が得られた。

3. デモグラフィック変数との関連
 自己有用感は学歴と関連し,Table2にみるように,男性で関連がみられ,また,収入満足度とも関連していた。
退職後の精神的健康には,男性は健康と収入満足度が関わり,夫婦関係満足度は関連しない。ところが女性では健康と夫婦関係満足度が関連し,収入満足度は関連しない(伊藤,2015)。男性では現役時代の収入が,退職後の精神的健康を規定するのであり,ジェンダー差は最後までついて回るといえよう。

キーワード
自己有用感/尺度の信頼性・妥当性/高齢期


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