発表

1A-067

エラーの連続性にみられる加齢効果

[責任発表者] 土田 宣明:1
[連名発表者・登壇者] 春日 彩花:2
1:立命館大学, 2:大阪大学

目 的
 近年,高齢者が引き起こすエラーの問題が注目されている。例えば,「アクセルとブレーキの踏み間違い」場面で,高齢者は,踏み間違いに対応しきれず,被害を大きくしていることが事故現場から推察される。そこで,本研究では,実験室的な課題の中で,連続してエラーを起こしてしまう現象に注目し,この現象がどの程度確認できるのか。さらに,どのような要因がこの現象に影響しており,そこに加齢効果がみられるのかを検討した。
方 法
 研究対象 若年成人38名(男性19名,女性19名,Mean age: 20.8 years,range: 18-25)と高齢者38名(男性19名,女性19名,Mean age: 71.5 years,range: 66-82)。MMSEは平均29.0点だった。
 実験課題 刺激の提示位置に合わせて,左右2箇所ある反応スイッチを押し分ける場所弁別課題を個別で行った。反応スイッチは2種類用意した(Tsuchida, 2017)。ひとつは人差し指の動きだけで作動できる,マイクロスイッチ(Micro light switch, Tash inc. 製造作動圧は10g)。もうひとつは,円筒形のグリップを掌(てのひら)全体で握ってスイッチを作動させるグラスプスイッチ(Grasp switch, Tash inc. 作動圧は300g)である。
 はじめに注視点が視野の中心に提示され,その後注視点の左右に赤色の丸(直径4.5cm)がランダムに提示された。実験協力者は刺激が提示されたら,なるべく早く,正確に刺激が提示された側の反応スイッチを押す(あるいは握る)ように指示された。実験は1ブロック16試行で,2ブロック連続して行った。前反応から次の刺激の提示間隔時間は,500ms, 1500msの2種類がランダムに使用された。
 さらに,刺激が提示された側とは逆のスイッチを押す(握る)手続きを同様に実施した。この実験を,順番を変え,スイッチの種類を変え,カウンターバランスして合計128試行実施した。
結 果
 エラーが連続した割合を単純集計した結果,若年成人のマイクロスイッチのエラー内の20.8%,同様にグラスプスイッチで23.6%,高齢者のマイクロスイッチで22.7%,グラスプスイッチで36.4%となり,条件間で差のある可能性がみられた。
 エラーが連続した反応の出現率を算出して,年齢(若年成人・高齢者)×反応形態の種類(マイクロスイッチ・グラスプスイッチ)の2要因混合計画の分散分析を用いて検討した(Figure 1参照)。検定の結果,年齢の主効果(F (1,74)= 10.6829, p=.0016, ηG2= 0.0829),反応スイッチの主効果(F(1,74)=16.0074, p=.0001, ηG2= 0.0748),2要因間の交互作用(F (1,74)=6.3246, p=.0141, ηG2= 0.0310)がいずれも有意だった。
 交互作用の分析の結果,マイクロスイッチを使用した時には,年齢間で有意差がみられなかった(F(1,74)=2.9849)が,グラスプスイッチを使用した時には年齢間で有意差がみられ(F (1,74)=10.4230, p=.0019, ηG2= 0.1235),高齢者で,エラーを繰り返す率が高くなった。また,若年成人では,スイッチ間で有意差がみられなかった(F (1,74)=2.5491)が,高齢者では,有意差がみられ(F (1,74)=13.5482, p=.0007, ηG2= 0.1117),グラスプスイッチを使用した時にエラーを繰り返す率が高くなった。
 一方,連続しないエラーの出現率では,年齢の主効果(F (1,74)=9.5483, p=.00028, ηG2= 0.0680)と,反応形態の主効果がみられた(F (1,74)=7.8090, p=.00066, ηG2= 0.0438)。しかし,2要因間で有意な交互作用はみられなかった(F(1,74)=0.2833, p=.5961, ηG2= 0.0017)。
考 察
 エラーの出現率は高齢者で高く,かつエラーを繰り返す反応も,高齢者で多くみられた。ただし,若年成人・高齢者ともに,エラーが続く割合が一定数存在することから,年齢に関わらず,エラーが出現すると,続く反応への正確度の低下を引き起こす場合があるものと推察された。
 一方で,エラーを繰り返す反応には,反応形態が関連することも分かった。高齢者では特に,運動の負荷が少ない場合(指先だけを動かすマイクロスイッチへの反応時),若年成人と比較して大きな差は見られなかった。しかし,掌全体を使ってスイッチを握る反応が求められた場合(グラスプスイッチへの反応時)には,加齢効果が大きく,高齢者でエラーを繰り返す率が高くなった。
 このことより,エラーが連続する現象の背景には,運動性の神経興奮の問題があるものと思われた。運動性の神経興奮が強く働いてしまった場合には,高齢者で,エラーが連続しやすいものと思われる。エラー後の反応に関しては,近年,運動の構成要素(motor components)との関連が指摘され始めている(Ceccarini & Castiello, 2018)が,今回の実験結果からは,加齢に伴い,この要因が強く働くことが推察された。

キーワード
エラー/老化/エラー後の行動


詳細検索