発表

3D-060

階層的検出理論モデルにおけるマッチング法則の検討

[責任発表者] 神谷 直樹:1
1:情報・システム研究機構統計数理研究所

1.はじめに
 選択行動研究において弁別刺激の役割は効果の法則ほどには関心が向けられてこなかったが,そのアプローチの一つとして検出理論 (Macmillan & Creelman, 2005)に基づいたマッチング法則モデルが提案されている(例えば,Davison & McCarthy (1980),Davison & Tustin (1978)やNevin (1981)など) 。この行動的検出理論モデルの目標は,効果の法則に弁別刺激の効果を導入した,弁別刺激と強化子による行動制御モデルを構築することと考えられる。
 本研究では,行動の生成分布として,二項分布とその一般化であるq-二項分布を仮定した2種類の階層的モデルを試験的に考えて,実データと仮想データにあてはめて検討した。
2.方法
 分析に使用した実データ(データA)は,キーンランド競馬場 (US-KY)で2006〜2017年に行われた3245レースのうち,公表されているEXACTA馬券に関するデータを使用した(Figure 1参照)。キーンランド競馬場では,パリミュチュエル方式 (Parimutuel betting) でオッズが定められており,馬券購入時点では最終的なオッズが明らかにならない方式である。一方,仮想データは実データと同じサイズで3種類用意した。1) EXACTA馬券が当たる確率と投票率が低い一方で,EXACTA馬券以外が当たる確率と投票率が高い(データB),2) EXACTA馬券が当たる確率と投票率が高い一方で,EXACTA馬券以外が当たる確率と投票率が低い(データC),3) EXACTA馬券が当たる確率は低いが投票率が高く,EXACTA馬券以外が当たる確率が高いが投票率が低い(データD),の3種類であった。
 検出理論に基づいたマッチング法則モデルは,Davison & McCarthy (1987)モデルを相対選択率に書き換えたモデルを利用し,EXACTA馬券について検出理論に基づいた階層的モデルを考え,バイアスや感受性をはじめとするパラメーターについてベイズ推定した。ただし,「ヒット」数と「フォールス・アラーム」数は 二項分布またはq-二項分布にしたがうこととした。
3.結果と考察
 本研究では,行動の生成分布として二項分布とq-二項分布を仮定した。通常仮定されることの多い二項分布に基づいたモデルでは,MCMCの収束が不安定であった。一方,q-二項分布に基づいたモデルではMCMCの収束が安定していた(常に,Rhatは1.05未満であった)。Figure 2にq-二項分布に基づいたモデルにおけるバイアスと感受性の推定結果を示す。全体的にみると,EXACT馬券に対するバイアスほぼなく感受性も低い傾向にあった。バイアスについて詳細にみると,データD,データA,データC,データBの順に低くなる傾向にあった。感受性については,データC,データA,データD,データBの順に低くなる傾向にあった。データBとCにおけるバイアスと感受性の傾向は,先行研究と一致しうると考えられる一方で,選択率と強化率が逆転しているデータDにおけるバイアスと感受性の関係性についてはより詳細な検討が必要と考えられた。
引用文献
Davison, M., & McCarthy, D. (1980). Reinforcement for errors in a signal-detection procedure. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 34, 35-47.
Davison, M. C., & Tustin, R. D. (1978). The relation between the generalized matching law and signal-detection theory. Journal of the experimental analysis of behavior, 29, 331–336.
Keeneland Association, Inc. (2018). The Keeneland Guide To Betting. Retrieved from https://www.keeneland.com/racing/wagering/basics-betting (May 16, 2019)
Macmillan, N. A., & Creelman, C. D. (2005). Detection theory: A user’s guide (2nd ed.). New York: Psychological Press.
Nevin, J. A. (1981). Psychophysics and reinforcement schedules. In M. L. Commons & J. A. Nevin (Eds.), Quantitative analyses of behavior, Vol. 1: Discriminative properties of reinforcement schedules (pp.3-27). Cambridge, MA: Ballinger.

キーワード
検出理論/マッチング法則/バイアス


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