発表

3A-070

家庭における地震防災行動の認知規定因に関する研究

[責任発表者] 田中 里奈:1
[連名発表者・登壇者] 竹橋 洋毅:1
1:奈良女子大学

 問題
 近年,大きな地震や豪雨などの自然災害が立て続けに起こり,災害への危機感や防災への関心が高まっている。一方で,実際に防災行動を取っている人の数は多くない。この災害への認知と防災行動の乖離 が生じる心的メカニズムを解明することは社会的要請の高い課題であろう。
 先行研究では,災害をストレスイベントと見なし,防災行動はその対処方略と捉える防護動機理論に基づく検討(Mulilis & Duval, 1995, 1997)がなされてきた。その結果,災害へのリスク認知(①主観的確率,②深刻さ)や防災行動の有効性認知(③対処の有効性,④自己効力性,⑤反応コスト)が実際の防災行動に影響することが示唆されている。さらに,近年では他者からの期待や行動する他者の多さなどの規範的要因に着目し,防災行動の説明率を高めることを試みるモデル(元吉ら 2008; 大友・広瀬,2007)が提案されつつある。
 しかしながら,地震防災についての先行研究では上記の①~⑤の認知要因を同時に測定し,それぞれの効果を定量的に評価するものが少ない。また,これらの認知要因の効果は責任性の認知によって調整される可能性が指摘されているが(Mulilis & Duval 1995, 1997),その可能性について日常的な防災行動を対象とした検討はなされていない。そこで,本研究では地震災害のリスク認知と対処可能性認知を幅広く測定するとともに,責任性認知の調整効果について検討することとした。

 方法
調査対象 関西圏に住む99名。平均年齢27.39歳(SD=13.30)。
調査内容
防災行動:Matthewら(2006)の尺度を和訳したものを用いた。本尺度は23項目で構成され,家庭内での災害に備える行動について,「はい」か「いいえ」の強制二択をするものであった。「はい」の回答数(範囲:0-23)を防災行動得点とした。
主観的確率:項目は,「今住んでいるところは,地震で被害に遭う可能性が高い地域だと思う」,「ここ10年で大規模な地震が立て続けに起きているので,自分の住んでいる地域でも近々地震が起きる気がする」の2項目で構成された。
深刻さ:項目は,「なんとなく地震が起きても死にはしない気がする」,「地震が起きても,本当に大きな被害を受けるのは一部の人だけだと思う」の2項目で構成された。
対処有効性:項目は「地震に備えても仕方がない」,「日頃の地震への備えは,被災時にどう役立つのか甚だ疑問だ」の2項目で構成された。
自己効力性:項目は「日頃から地震に備えておくことは,自分でも出来そうだ」,「やろうと思えば,日頃から家庭でも防災ができそうな気がする」の2項目で構成された。
反応コスト:項目は 地震に備えて何かをするのは面倒だ」,「防災用品を普段からきちんと準備しておくのは,大変なことだと思う」の2項目で構成された。
責任感:項目は,「震災時,自分の分の水や食料は自分で用意しておきたい」,「震災時でも助け合いの心があるので,誰かが食料供給してくれると思う」の2項目で構成された。

 結果・考察
 各構成概念を測定した2項目の単純加算平均を,その概念の尺度得点とし,得点の記述統計量を算出した(表1)。次に,防災行動を従属変数,主観的確率,深刻さ,対処有効性,自己効力性,責任性認知の主効果,責任性認知と他の変数の交互作用を独立変数とする回帰分析を行った(図1)。
 その結果,反応コストの主効果(β=-.242,p<.05)がみられたが,その効果は責任性認知によって調整されていた(β =.375,p<.01)。すなわち,自分の責任が低いとする人々(-1SD)では反応コストが大きいと認知するほど防災行動が減少していた(β=-.604,p<.01)。一方で,自分の責任が重いとする人々(+1SD)では反応コストによる防災行動の減少はみられなかった(β=.121,n.s.)。
 この結果は防災の大変さが大きくないことを伝えた上で,防災教育において責任の自覚を促すことの重要性を示唆すると考えられる。

キーワード
防災行動/防護動機理論/責任感


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