発表

2D-060

会話における「嘘」の見抜き方
~就職活動の面接場面を用いた探索的検討~

[責任発表者] 石川 悟:1
1:北星学園大学

目 的
 会話場面において生じる「嘘」を,私たちはどのように発見し見抜いているのか.発話者の表情や態度,振る舞いを手掛かりとする,発話中の「嘘」の検知を検討した研究は多い.一方,振る舞いを手掛かりとせずに会話の中に含まれる「嘘」を検知するには,会話の中から「嘘」となる事項や内容を発見し,必要であればその事項が「嘘」かどうか発話者に確認する必要がある.本研究では,常識的に考えたとき誇張が認められ不自然である,あるいは発話内容に一貫性が無い,という形で用意した「嘘」を,どのように検知するのか,そして検知した事実を発話者に対してどのように確かめようとするのか,場面想定実験を用いて探索的な検討をおこなった.
方 法
実験参加者 39名の実験参加者(男性14名,女性25名,平均年齢20.95歳)が質問紙に回答した.
実験課題 「面接時のやり取りに関する調査」と題した質問紙課題を用意し,就職活動中の1名の学生が,「翻訳会社(架空)」の面接試験に臨み,会社側の2名の面接者とやり取りする文章を準備した.この文章中では,学生が一方の面接者1と会話を重ねた後,それまで発言していなかったもう一方の面接者2が学生に対して質問する場面を,面接の進行に沿って3箇所用意した.この面接時のやり取りにおける学生の発言には,過度に誇張された発言内容(誇張表現)を2つ,学生の一連の発言の間で一貫性が保たれないものや前言と矛盾するもの(一貫性の欠如)を7つ含めた.
 実験参加者の課題は,面接を受けている学生に対しどのような質問を投げかけるか,面接者2が発するであろう質問文を作成することだった.実験参加者には,「実験課題として用意される面接場面の面接者2となり,実際に就活生とやりとりをしている,ということを想像しながら読み進めること」,「面接を通して学生の発言に一貫性があるかどうか,誇張した表現がないかなどを気にしながら,学生と面接者1のやり取りをよく見ること」の2点を教示し,実験課題に取り組ませた.3箇所の回答場面では,まず「ここまでのやり取りを見て,面接者2としてあなたが学生の発言について気になったこと」を記入させた.その際,これまでのやり取りを読み返して良いこと,幾つ記入しても良いこととした.その後,「面接者2として学生に確認,質問したいこと」を実際に質問させる形式で記入させた. 
手続き 実験参加者に質問紙を配布し,フェイスシートに必要事項を記入させた.実験課題の読み進め方の教示を与え,回答させた.


結 果
 3箇所の回答場面で得られ回答数は第1場面で52個,第2場面で49個,第3場面で54個だった.これらの回答結果について,「発見の難易度」,「質問の仕方」および「質問内容」に分けて分析を進めた.
 実験課題に用意した7つの「誇張表現」や「一貫性の欠如」として設けた「嘘」が,実験参加者にどのように発見されたのか,それぞれの内容が面接者2の質問文としてどれだけ指摘されていたか検討した.その結果,「誇張表現」として用意した内容を79.5%の実験参加者が指摘したのに対し,発言に「一貫性の欠如」している内容について,実験者の意図通りに指摘できた実験参加者は僅かであった.
 次に,実験参加者が作成した質問文の形式について分類をおこなった.その結果,学生の発言の真意を確かめようとする「問い詰め型(a)」,学生の発言を一度受け止め,それを踏まえて質問している「受け入れ型(b)」,学生の発言を疑い,真偽を聞き出そうとしている「疑い型(c)」,(学生の発言とは無関係な質問も含めて)学生に対し単に事実を聞こうとしている「事実確認型(d)」の4種類に分類された.その上で実験参加者が回答した質問文を再度整理した結果,実験参加者の記述は6つに分けられた(表1).
 実験参加者が回答した質問文をその内容に基づいて分類したところ,「アルバイト」「会社・仕事」「長所(協調性・積極性))」「英語」の4つに分けられた.それぞれの内容と,前述した「質問の仕方」との関係性は表1のようになった.
考 察
 実験参加者は概ね「誇張表現」として見なせる「嘘」の発話内容は検知できていたのに対し,継続する会話において,それぞれの発話内容間の整合性や一貫性を吟味し,実験者が用意した「一貫性の欠如」がみられる内容の矛盾点を指摘することは難しかった.この点については,実験参加者の認知の能力の程度および批判的思考の知見も考慮しながらさらに検討を進めたい.また,質問内容に応じて質問の形式に違いが見られた点についても,今後どのような意図により使い分けされるのか,検討が必要である.

キーワード
嘘の見抜き/一貫性/批判的思考


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