発表

3B-062

先延ばしに関する行動選択時の意思決定と計画性・完全主義・衝動性

[責任発表者] 黒田 卓哉:1,2
[連名発表者・登壇者] 菅原 大地:3
1:筑波大学, 2:筑波大学学生部T-ACT推進室, 3:筑波大学

【 目 的 】
 学業課題や業務などをすぐに取り組まず後回しにすることは“先延ばし(procrastination)”として検討されてきた(Rothblum,Solomon & Murakami,1986)。そういった行動を取りやすい傾向は“先延ばし傾向”と定義され(Lay,1986),不適応的な完全主義(藤田,2008;山口・阿部・森本,2013),衝動性(Baumeister & Heatherton,1996;Steel,2007),計画性(Baumeister & Heatherton,1996;小浜,2010)などの個人特性との関連が検討されてきた。一方で,先延ばしされる課題といった“しなければならない行動”と,先延ばし時に代わりに行われうる“競合する行動”への行動選択時の評価といった意思決定要因が,先延ばし行動に影響していることも示されている(黒田・望月,2017)。そういった意思決定要因が従来から検討されてきた個人特性と,どのような関係にあるのかの検討は不十分である。本研究では,先延ばし現象における行動選択時の意思決定のあり方と,不適応的な完全主義,衝動性,計画性といった個人特性との関係を検討する。
【 方 法 】
対象:大学生および専門学校生230名(男性67名,女性133名,不明30名。平均年齢19.08歳,SD=1.86)。
時期:2018年6月~2019年3月。
内容:無記名式の個別回答方式質問紙調査。1)先延ばし意識特性尺度(小浜,2010)より抜粋した計画性を測定する9項目,5件法。2)自己志向的完全主義尺度(桜井・大谷,1997)20項目,6件法。完全でありたいという欲求,自分に高い目標を課する傾向,失敗を過度に気にする傾向,自分の行動に漠然とした疑いを持つ傾向の4因子からなる。3)改訂版日本語版BIS-11(小橋・井田,2013)22項目,6件法。衝動的行動,計画性のなさ,自己制御の欠如,熟慮の欠如の4因子から,衝動性を測定した。4)行動選択肢評価尺度(黒田・望月,2011)を短縮したもの。しなければならない行動に対する認知的・感情的評価9項目と実行の容易さに関する6項目,競合する行動に対する認知的・感情的評価9項目と実行の容易さに関する6項目を測定した。6件法。5)行動選択傾向:しなければならない行動と競合する行動とがあったとき,どちらを選択しがちかを6件法で尋ねた。なお,得点が高いほど競合する行動を選びがちであることを示す項目であった。
【 結果と考察 】
 計画性,完全主義の各因子,衝動性の各因子と行動への評価の各因子,行動選択傾向について相関分析を行った。その結果をTable 1に記す。
 計画性は,各行動を準備した上での実行に移す容易さと弱から中程度の正の相関があり,自然な結果と考えられる。また,困難軽減認知に弱い相関があることから,しなければならない行動のメリットの認識に結びついていると言える。
 完全主義の多くの項目も,しなければならない行動の困難軽減認知や準備した上での実行に移す容易さに弱い相関があるが,一方で競合する行動を選ぶことのリスクの認識とも言える危機懸念にも同程度に関連しており,より自身を追い込む要素が強いと言える。
 衝動性は,各因子の相関係数の大きさはまちまちであるが概して,しなければならない行動への拒否感情や先延ばし許容認知,競合する行動への享楽的感情といった評価に対して弱い相関があり,しなければならない行動を実行に移す容易さ2因子に対しても負の相関がある。衝動性の高さは,易きに流れる方向性の評価に結びつくと考えられる。
 行動選択傾向と相関のある因子をみると,しなければならない行動に結びつくのは計画性であり,競合する行動に結びつくのは自己制御の欠如である。すなわち,先延ばしを防ぐ意思決定のためには,自己の衝動性を制御しつつ,行動への評価を維持する戦略性が必要なのであろう。

キーワード
先延ばし/意思決定/計画性


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