発表

3B-060

競技スポーツ場面における誇りの構造
特性誇り尺度の作成

[責任発表者] 近藤 みどり:1
[連名発表者・登壇者] 土屋 裕睦:2
1:大阪体育大学, 2:大阪体育大学

目的
誇りは, Weiner (1985)に研究の端を発した達成関連感情の一つである。近年, 感情の構造を明らかにした上で, その動機づけ機能を検討する研究が進められている。 Tracy & Robins (2007) は, 誇りを表出した人物の画像評価から誇り関連感情語を抽出し, 誇りの構造にはauthentic prideとhubristic pride の二側面があることを明らかにした。前者は, 内発的動機づけとの関連が認められており (Carver, 2010), 達成行動を促進するという (Weidman et al., 2016)。 本研究の目的は, 継続した高度な達成行動が求められる大学生アスリートを対象とし, その主観的経験から何を誇りに感じるのか(対象)を尋ね, 誇りの構造を検討することである。従来の誇りの表出評価に基づく尺度とは異なり, 内的に潜在する誇り感覚を測定できる。さらに, 誇りの構造が明らかになれば, 競技スポーツ場面における動機づけの解明にも有用な知見を与えることが期待される。そこで本研究では, 大学生アスリートの主観的経験に着目し, 誇りの特性を測定する尺度を作成した。その結果を踏まえ, 理論的に予測される他の心理的特性との関連を検討した。本研究は大阪体育大学研究倫理審査委員会の承認を受けた(承認番号: 17-18)。
方法
調査参加者 関西の私立・国立大学競技部に所属する選手342名 [男性234名, 女性108名, 平均年齢19.36歳 (SD =.73)] が調査に参加した。現在行っている競技名に「なし」と回答した2名は, 分析から除外した。
測定尺度 ①特性誇り尺度: 予備調査において, 誇りの主観的経験について自由記述で回答を得た内容から34項目を抽出した。「全くない」「まれにある」「時々ある」「しばしばある」「いつもある」の5件法 (1~5点)で評定を求めた。 ②本来感尺度 (伊藤・小玉, 2005): 7項目を使用し, 5件法で回答を求めた。 ③自己愛人格目録短縮版(NPI-S)(小塩, 1999): 30項目を使用し, 5件法で回答を求めた。 ④自尊感情尺度(Rosenberg, 1965; 山本・松井・山成, 1982): 10項目を使用し, 5件法で回答を求めた。
手続き 各大学の講義時間に集団形式・Web調査で実施した。
結果
特性誇り尺度の因子構造 分布に著しく偏りのあった4項目を除外し, 30項目で探索的因子分析を行った(最尤法・プロマックス回転)。 固有値の減衰率及び解釈可能性から4因子解を採用した。回転前の累積寄与率は, 68。26%であった。 因子負荷量の絶対値が, .40未満の項目および, 複数の因子に.35以上の負荷を示した項目を除外し, 分析を繰り返した(Table 1)。下位尺度間相関は, r =.48-.67 であった。
構成概念妥当性の検討 誇りの合計得点及び下位尺度と自尊心尺度, NPI-Sとの相関分析を行った。誇り特性と各尺度間には有意な正の相関がみられ (r=.223-.623, p<.001-.05), 先行研究の結果と整合した(Tracy & Robins, 2007)。このことから特性誇り尺度の構成概念妥当性が確認された。
本来感及びNPI-Sと誇り特性の関係 ステップワイズ法による重回帰分析を行った結果 (Figure 1), VIFの値は, 1.0-1.1であり, 多重共線性は発生していなかった。
考察
大学生アスリートの誇りの特性として, 他者に受容されている感覚(恩恵), 自己の内的基準を満たした感覚(努力), 自己価値がアスリートであることに随伴した感覚(同一化), そして他者より秀でていることで得られる自己肯定的な感覚(優越)が見出された。 さらに, 重回帰分析の結果から, 自分らしくいられることで感じる本来感と, 他者からの評価や他者と比較することでもたらされる自己肯定感との関連で, 各下位尺度に異なる特徴がみられた。しかし, 本来感の分散説明率がいずれも低いことから, 今後は他の説明要因も検討することが課題と言えるだろう。
主な引用文献
Tracy, J. L., & Robins, R. W. (2007). The psychological structure of pride: a tale of two facets. Journal of personality and social psychology, 92(3), 506.
Weiner, B. (1985). An attributional theory of achievement motivation and emotion. Psychological review, 92(4), 548.

キーワード
誇り/競技スポーツ/本来感


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