発表

3A-067

認知的なストレスと情動的なストレスは脳のどこで統合されるのか?

[責任発表者] 源 健宏:1
[連名発表者・登壇者] 春野 雅彦#:2
1:島根大学, 2:情報通信研究機構/脳情報通信融合研究センター

目 的
 ストレス社会と呼ばれる昨今,私たちの生活は数多くのストレスに囲まれている。ストレスは多種多様であり,難しい課題に取り組む際に感じるストレス(認知的ストレス)や他者から批判されたときに感じるストレス(情動的ストレス)などがある。これらのストレスは原因が異なるため,脳の中でも別物として捉えられるのか,それともストレスという共通要素として統合されるのかについては十分な検討がなされていない。ストレス下では,現状のままでは望ましい結果が得ることができないため,行動を切り換える必要が生じていると考えるられる。特に負のストレスにより動機づけられた行動の切り換えには,背側の前部帯状回の活動が関係することが指摘されている(Schackman et al., 2011)。本研究では,背側の前部帯状回(dACC)の活動に着目し,認知的ストレスと情動的ストレスがdACCにより統合されているかどうかを検討した。
方 法
■被験者:関西在住の大学学部生および大学院生28名(M = 22.03, SD = 4.75, 女性14名)が,実験に参加した。
■恐怖条件付け:2種類のフラクタル画像を用い,一方を左腕上肢に対する電気刺激と結びつけた。恐怖条件のブロックと中立条件のブロックを交互に5回繰り返し,各ブロックではフラクタル画像が5回提示された。
■情動ストループ・フランカー課題:刺激には,表情刺激20枚(笑顔10枚,恐怖顔10枚)と単語(嬉しい・怖ろしい)を用いた。各試行では,顔写真3枚が水平に並べられ,中央の顔写真の中心に単語刺激が提示された。被験者は,左右の顔写真と単語刺激を無視しながら,中央の顔写真の表情を判断することが求められた。一致条件では,左右の顔写真と単語刺激が中央の顔写真の表情が同じであり,不一致条件では,異なっていた。刺激は2000ミリ秒提示され,右手に握られたボタンパッドで反応することが求められた。
■脳活動計測・解析:脳活動は,3.0テスラのMRIスキャナ (MAGNETON Prisma (3T)を用いて計測した。機能画像は,マルチバンドシーケンスで撮像した。適宜フィールドマップ画像とT1画像の撮像をおこなった。脳画像の解析には,SPM12を用いた。
■皮膚電気活動計測・解析:皮膚電気活動は,EDA 100C MRI(BIOPAC Systems社)を用いて計測した。左手人差し指と中指にセンサーを付着し,サンプリングレート2000Hzで計測した。データの前処理は,同社のAcknowledgeソフトウェアを用い,0.05Hzのハイパスフィルタを適用した。
■実験デザイン:2要因2水準の被験者内デザインを用い,一方は認知的ストレス要因(高ストレス/弱ストレス)で,もう一方は情動的ストレス要因(痛みあり/痛みなし)であった。
■手続き:表情と単語刺激の提示に先立ち,2種類の手がかり刺激を提示した。まず,制限時間の手がかりを提示し,短い制限時間(高認知的ストレス)と長い制限時間(低認知ストレス)のいずれかが知らされた。続いて,痛みの有無の手がかり刺激を提示し,反応を誤った場合に,痛み刺激が与えられるか否かが知らされた。その後,情動ストループ・フランカー刺激が提示され,被験者はボタン押しで反応することが求められた。最後に正誤のフィードバックが与えられ,痛みあり条件の場合は,反応を誤った場合に限り電気刺激が与えられた。実験は2セッションから構成され,各セッションでは64試行から構成されていた。
結 果
◆手がかり刺激提示時の皮膚電気活動
◆手がかり刺激呈示時の前部帯状回背側部の活動
考 察
皮膚電気活動では,認知的ストレスと情動的ストレスが,組み合わされた条件において大幅な活動増加が認められた。この結果は,本研究のストレス操作が想定通りの効果をもたらしていることを示している。同じく,前部帯状回の活動は,認知的ストレスと情動的ストレスが組み合わされた際に最も活動が増加していることから,この領域が,異なる種類のストレスを統合し,適切な行動への切換を促していると結論づけることができる。

キーワード
前部帯状回/皮膚電気活動/fMRI


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