発表

3A-065

スイーツ購入前から摂食後までの心理的プロセスの探索と尺度作成の試み

[責任発表者] 市川 玲子:1,2
[連名発表者・登壇者] 児玉(渡邉) 茉奈美#:1, 澤井 大樹:1,2, 玉越 勢治:3, 大本 浩司:3
1:イデアラボ, 2:帝塚山学院大学社会連携機構, 3:帝塚山学院大学

問題と目的
 摂食行動に関する心理学的研究の多くは,摂食障害や身体的健康と関わる食行動の傾向や食意識を対象としてきた(e.g., 宮崎・緒方, 2006)。特にスイーツや高カロリー食品といった,一般的に嗜好の度合いが強く,適切な量を超えて摂食することで身体的健康を損ないうる食品の摂食については,臨床的観点から研究が進められてきた。例えば,Tuomisto et al.(1999)は,薬物中毒患者と同様に,チョコレート中毒者がチョコレートを提示されたときにも,健常群とは異なる強度の欲求や摂食行動を示すことを明らかにしている。
 しかし,スイーツの(適切な)摂食によるポジティブな影響や,スイーツ摂食に至る一般的な心理的プロセスは明らかにされていない。特に20代の女性が,スイーツを「ご褒美」や「ストレス解消」のために購入する頻度が高いことが示されている(M1・F1総研, 2008)ことから,単なる空腹の充足だけがスイーツ摂食の目的・機能ではないといえる。
 以上のことから,本研究では,スイーツの購入・摂食に影響を及ぼす要因や,スイーツ摂食による心理的変化を捉えるための,多様な人に適用可能な心理尺度を作成することを目的とした。このような尺度は,食行動研究だけでなくマーケティング研究にも応用可能であることが期待される。
予備調査1
 目的 スイーツを購入する際や,摂食前後の心理的プロセスについて探索的に調査することで,尺度を作成する際にどのような視点を盛り込むべきかを検討すること
 方法 日頃から自分が食べることを目的としてスイーツを購入する頻度が高い成人男女5名を対象に,1時間半~2時間程度の半構造化面接を個別に実施した。スイーツを自分で購入して食べた具体的なエピソードを3つ挙げてもらい,それぞれについて購入前から摂食後までの詳細な心理的プロセスを尋ねた。
 結果と考察 スイーツの定義については,総じて「特別感があり,手頃ではないもの」といった発言が得られた。そして,スイーツには,食事との関わりや,コミュニケーションツール,精神的充足に関わる機能など,多様な機能があることが明らかとなった。さらに,購入前から摂食後まで,当初の目的や期待が達成されたか否かによる(不)満足へのプロセスが存在し,摂食前・摂食中・摂食後のそれぞれで,ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルな感情が生じていることが示された。
予備調査2
 目的 予備調査1の結果をもとに,スイーツ尺度の項目の原案を収集すること
 方法 成人男女184名(平均年齢45.65歳,SD=14.51)を対象にWeb調査を実施した。①日常的なスイーツの購入・摂食,②特別な場面でのスイーツの購入・摂食のそれぞれについて,具体的なエピソードを1つずつ挙げてもらい,購入前から摂食後までの各段階で考えていたことを自由記述で回答するよう求めた。
 結果と考察 得られた記述をもとに,スイーツ尺度の原案を作成した。回答内容の類似性から,「目的」,「購入前~食べる前」,「食べている時~食後」の3種類の尺度を作成することが妥当であると判断し,順に122項目,178項目,113項目から成る尺度案を作成した。
本調査
 目的 予備調査2で作成したスイーツ尺度の項目案を用いて,項目の精選および因子構造を検討すること
 方法 同一の項目案を用いて,実食調査とWeb調査を実施した。実食調査は,関西地方の大学生(n=65; 平均年齢20.12歳,SD=0.90)を対象に授業内で実施した。予備調査2で「スイーツに含まれると思う食べ物(アイスクリームを除く)」として多く挙げられた上位20種類のスイーツを用意し,一人ずつその中から食べたいものを選ばせ,「目的」尺度と「購入前~食べる前」尺度は摂食前に,「食べている時~食後」尺度は摂食後に回答を求めた。Web調査(n=215; 平均年齢48.33歳,SD=12.00)では,実食調査と同じスイーツを対象に,具体的なエピソードの想起を求めて回想法による調査を行った。なお,実食調査では,購入に関わる項目を尋ねることができないため,それらの項目を除外した。いずれの項目も,「まったくあてはまらない」から「とてもあてはまる」までの5件法で尋ねた。
 結果と考察 各項目得点の分布(尖度,歪度,天井効果,床効果)を確認し,一定の基準で正規分布を仮定できないと判断した項目は除外した。その上で,Web調査の回答のみを用いて尺度ごとに探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。各因子数は,スクリープロット,対角SMC,MAPの各基準と解釈可能性をもとに総合的に判断して決定した。因子負荷量をもとに項目を削除した上での再分析を繰り返したところ,いずれの尺度も単純構造が得られた。
 「目的」尺度は,「スイーツそのものに対する興味・関心」,「情緒安定」,「心理的充足」,「社会的関与」,「飲み物との組み合わせ」,「コストパフォーマンス」,「間食」から成る7因子解(57項目)が得られた。「購入前~食べる前」尺度は,「具体的思考・計画」,「快感情・ポジティブ欲求」,「手軽さ希求・漠然とした欲求」,「日常的補給」から成る4因子解(99項目)が得られた。「食べている時~食後」尺度は,「快感情」,「評価的反応」,「社会的関与」,「喪失感」,「心身へのネガティブな影響」,「飲み物との組み合わせ」,「残った分への意識」,「コスパ・日常感」から成る8因子解(68項目)が得られた。
 今後の課題として,これらの尺度の信頼性と妥当性の検証,短縮版の作成,およびスイーツの摂食に関わる詳細なプロセスや他の変数との関連の検討が挙げられる。

キーワード
スイーツ/心理的プロセス/尺度


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