発表

2D-058

失敗経験がポジティビティ効果に及ぼす影響

[責任発表者] 蔵冨 恵:1
[連名発表者・登壇者] 八木 彩乃:2, 村山 航#:2,3, 榊 美知子:2,3
1:愛知淑徳大学, 2:高知工科大学, 3:レディング大学

目 的
 高齢者は若齢者に比べると,ポジティブなものを記憶したり,注意を向けたりするポジティビティ効果(Mather, 2012)がある。このようなポジティビティ効果は,失敗経験やネガティブな事象に対して,それに立ち向かい,乗り越えようとするレジリエンス(精神的回復力)が高いことの反映かもしれない。しかし,ポジティビティ効果によって,ネガティブ情報を緩和できるのかは明らかとなっていない。
 近年,ストレスに対するレジリエンスには,制御可能性の要因が重要であることが明らかにされている(Worly et al., 2018)。これは,自分で制御することが可能な状況であれば,それが不可能な状況に比べて,レジリエンスが高くなるというものである。そこで,本研究では,ポジティビティ効果が制御可能性に対するレジリエンスに及ぼす影響を明らかにする。そのため,参加者の成績に応じて制御可能性を操作したバスタブ課題を開発し,課題のフィードバックに応じて同じゲームを続けるかに着目する。もし,高齢者におけるポジティビティ効果が,レジリエンスの上昇を導くのであれば,制御可能な失敗後には同じゲームを続ける割合が高くなることが予測される。
方 法
 参加者 18から25歳の成人59名,65から78歳の高齢者48名。刺激 5つのバケツと蛇口が,下部には赤色の線が引かれたバスタブの画像が1つ呈示され,バスタブの大きさによって,バケツおよびバスタブの色が,青色,黄色,緑色のいずれかに変えられた。要因計画 年齢(若齢者,高齢者)×制御可能性(制御可能,制御不可能)×課題結果(成功,失敗)。手続き 実験は,参加者の課題は,画面上の蛇口を操作して,バスタブの線より上にあふれないように水を貯めることであった。最初に,5つのバケツにそれぞれに対して,画面上の蛇口を操作し,バケツに水を貯めることが求められた。5つ目のバケツに水を貯め終えると,パイプが呈示され,すべてのバケツの合計水量がバスタブに移動し,成功か失敗かのフィードバックが呈示された。その後,次の試行も同じ大きさのバスタブで続けるかパスするかの選択が求められた。これら一連の流れを1試行とし,15分間行った(図1)。
 また,制御可能性を操作するため,2種類のフィードバックを与えた。制御可能条件では,参加者によって得られた各バケツの量の合計が,バスタブに反映され,参加者自身によって課題の成功か失敗かが決まった。制御不可能条件では,フィードバック時に,パイプが破損し水量が減少したり,バスタブに石が投入されて水量が増したりして,成功か失敗かが決まった。4試行毎に制御可能性の各条件が切り替わり,制御不可能条件の成功率は制御可能条件の成功率と同等とした。
結 果
 バスタブ課題の成功率が0%の参加者2名は分析から除外した。参加者毎に同じゲームを続ける割合を算出し,要因計画に沿った分散分析を行った。その結果,制御可能性の主効果が見られ(F(1, 103) = 8.12, p = .005, ηG2 = .002),制御可能条件の方が,制御不可能条件に比べて,同じゲームを続ける割合が高かった。課題結果の主効果も有意となり(F (1, 103) = 54.27, p < .001, ηG2 = .126),失敗後の方が成功後よりも同じゲームを続ける割合が高かった。また,年齢と課題結果の交互作用があり(F (1, 103) = 10.81, p = .028, ηG2 = .028),成功後に同じゲームを続ける割合は,高齢者の方が若齢者よりも高く,失敗後にはそのような差は見られなかった(図2)。その他の主効果および交互作用は有意に達しなかった(ps > .237)。
考 察
 本研究の目的は,高齢者におけるポジティビティ効果に,レジリエンスがあるのかを制御可能性の側面から検討することであった。そのため,課題失敗後に同じゲームに挑もうとするのかに着目した。実験の結果,高齢者は若齢者に比べると課題成功後に同じゲームに取り組むことが明らかとなった。これは,高齢者において,成功というポジティブな結果により接近したことを反映したためかもしれない。しかし,制御可能性によるレジリエンスの効果は見られなかったことから,課題を修正し,今後さらなる検討の必要がある。

キーワード
ポジティビティ効果/精神的回復力/制御可能性


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