発表

2C-050

マインドフルネス呼吸法における姿勢の効果
ー3ステップ呼吸法を用いてー

[責任発表者] 越川 房子:1
[連名発表者・登壇者] 飯田 暁子#:2, 阿部 哲理:1
1:早稲田大学, 2:NSD

【目的】
 マインドフルネス認知療法で用いられる技法の一つに,3ステップ呼吸法がある。これは,気づく,気づきを集める,気づきを広げる,の3ステップで行われ,思考や感情にとらわれた自動操縦状態から抜け出すことを目的として使用される。他のマインドフルネス呼吸法と同様に,この技法もまず姿勢を整えることから始めるが,姿勢を整えることが効果に与える影響を検討している研究は少ない。そこで本研究では,3ステップ呼吸法の効果を確認するとともに,姿勢が効果に与える影響を検討する。
【方法】
1.実験協力者: 101名(男性48名,女性52名,不明1名,19.1±3.49歳)
2.使用質問紙: 6因子マインドフルネス尺度(前川・越川,2015;以下SFMS),多面的感情状態尺度短縮版(寺崎ら,1992;以下MMS)
3.手続き:協力者をランダムに姿勢調整群,リラックス群,統制群に配置し,PreのSFMSとMMS,3ステップ呼吸法(3分間),PostのMMSとSFMSの順で実施した。姿勢調整群は,両足をしっかりと床につけ,背筋を自然なS字カーブを残しながらまっすぐにし,手を膝の上に置き,凛とした姿勢をとった。リラックス群は,各自がリラックスできる姿勢をとった。統制群は呼吸法を行わず自由に過ごした。
【結果】
 群(姿勢調整,リラックス,統制)と時点(pre,post)を独立変数,SFMS,MMSの各下位尺度得点を従属変数とした2要因の分散分析をおこなった。
1.SFMS:「受容・自動的に反応しないこと」「気づき」「今ここに存在すること」において群と時点の交互作用が有意であった (F(2,98)= 6.811,p<.01;F(2,98)= 11.259,p<.001;F(2,98)= 4.876,p<.05)。単純主効果検定の結果,時点の効果が有意であったのは以下であった。「受容・自動的に反応しないこと」では,姿勢調整群,リラックス群ともにpost得点がpre得点より高かった。(F(1,98)= 55.586,p<.001;F(1,98)= 14.349, p<.001)。「気づき」では,姿勢調整群でpost得点がpre得点より有意に高く(F(1,98)= 5.552,p<.05),統制群でpost得点がpre得点より有意に低かった(F(1,98)= 21.922, p<.001)。「今ここに存在すること」では,姿勢調整群とリラックス群ともにpost得点がpre得点より有意に高かった(F(1,98)= 25.035,p<.001;F(1,98)= 12.519, p<.001)。
2.MMS:「抑鬱・不安」「倦怠」「非活動的快」「親和」「集中」において,時点と群の交互作用が有意であった (F(2,98)= 6.625,p<.05;F(2,98)= 16.147,p<.001;F(2,98)= 5.562,p<.01;F(2,98)= 3.390,p<.05;F(2,98)= 4.062,p<.05)。単純主効果の検定の結果,時点の効果が有意であったものは以下であった。「抑鬱・不安」では,姿勢調整群,リラックス群ともにpost得点がpre得点より有意に低かった(F(1,98)= 55.117,p<.001;F(1,98)= 33.892,p<.001)。「倦怠」では,姿勢調整群,リラックス群ともにpost得点がpre得点より有意に低かった(F(1,98)= 22.341,p<.001;F(1,98)= 16.147,p<.001)。「非活動的快」では,姿勢調整群,リラックス群ともにpost得点がpre得点より有意に高かった(F(1,98)= 31.902,p<.005;F(1,98)= 27.331,p<.005)。「親和」では,統制群とリラックス群ともにpost得点がpre得点より有意に得点が低かった(F(1,98)= 10.812,p<.001;F(1,98)= 4.901, p<.05)。「集中」では,統制群でpost得点がpre得点より有意に低かった(F(1,98)= 6.574,p<.05)。
【考察】
 3ステップ呼吸法を実践した姿勢調整群とリラックス群の両方において,SFMS尺度の「受容・自動的に反応しないこと」,「今ここに存在すること」が増加した。このことは3ステップ呼吸法が,短時間の実習であってもこれら二側面を育成しうることを示唆している。また,MMS尺度では,姿勢調整群とリラックス群の両方において「抑鬱・不安」,「倦怠」が低減し,「非活動的快」が増加した。このことは,3ステップ呼吸法がネガティブな感情を低減しポジティブな感情を増加させる効果をもつことを示唆している。
 またSFMS尺度の「気づき」(Fig.1)において,リラックス群ではpreとpostで変化がみられなかったが,姿勢調整群では実験後に得点が増加していた。したがって,姿勢を整えることはマインドフルネス瞑想の効果を高めることが示唆された。「気づき」は身体への注意に関連する項目を含んでおり,3ステップ呼吸法を実施する前に姿勢の調整を行うことで身体への注意が促され,「気づき」の増加がみられたことが考えられる。一方,MMS尺度に関しては姿勢調整群とリラックス群の間に違いがみられなかった。したがって,ネガティブな感情の減少とポジティブな感情の増加は3ステップ呼吸法自体からの効果が大きく,リラックスした姿勢で行っても効果は変わらないと考えられる。

キーワード
マインドフルネス/呼吸法/姿勢


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