発表

2A-071

日本語版Body Perception Questionnaire (BPQ) very short formの作成 
-大学生を対象とした信頼性,妥当性の検討-

[責任発表者] 小林 亮太:1,2
[連名発表者・登壇者] 町澤 まろ#:3,4, 市川 奈穂#:3, 本多 樹:1, 中尾 敬:1
1:広島大学, 2:日本学術振興会特別研究員DC, 3:量子科学技術研究開発機構 量子生命科学領域, 4:脳・こころ・感性科学研究センター

問題
 これまで心臓の鼓動や筋肉の緊張といった身体感覚が感情や精神的健康に関与することが示されてきた。たとえば,James-Lange説においては,感情体験のプロセスにおける身体感覚の重要性が提唱されている。こうした身体感覚を測定する尺度の1つとして,Body Perception Questionnaire (BPQ)が挙げられる (Porges, 1993)。この尺度では,日々の生活の中で,身体感覚に気づく程度が測定される。先行研究によりBPQの得点が高い,すなわち,身体感覚への気づきが高いほど,不安が高いこと (Palser et al., 2018),身体感覚の意識に関与する脳部位である島皮質の体積が大きくなること (Critchley et al., 2004) が報告されている。
 しかし,BPQには,項目数が多く,回答に時間がかかるという問題がある。この問題を踏まえ,Cabrera et al. (2017) では,1因子12項目で構成されるBPQ短縮版が作成され,信頼性,妥当性が確認されている。本研究では,このBPQ短縮版の日本語版を作成し,大学生を対象とした調査を行うことで,信頼性,および妥当性を検討することを目的とする。

方法
 参加者 大学生,および大学院生212名 (女性137名, 平均年齢21歳, SD = 1.51) を対象とし,以下の尺度への回答を求めた。
 日本語版BPQ 原著者 (Prof Porges and colleagues) の許可を得た上で,Cabrera et al. (2017) が作成したBPQ Body Awareness Very Short Form 12項目を日本語に翻訳した。日本語と英語のバイリンガルである研究者が翻訳した上で,同等のバイリンガル研究者1名が確認する手続きにより翻訳版の確認し,その2名において最終版の合意を確認した。調査の参加者には,「あなたがどれだけ身体の状態に気づいているか想像してください。下記のそれぞれの表現のうち,一番あなたの気づきを正確に表わしているものを選んでください。」と教示した上で,「様々な場面において,私は●●●に気づいています」という文章を提示し,●●●に各項目 (Table 1) を当てはめ,それぞれ回答するように求めた。回答は原文通り5件法を用い,1: 全くない;2: たまに;3: 時々;4: たいていは;5: いつも,のいずれかひとつを選択させた。
 妥当性検討用尺度 BPQの妥当性を検討するために,先行研究 (Cabrera et al., 2017) を参考に,職業性ストレス簡易調査票の身体愁訴下位尺度 (下光他, 2000) と身体感覚増幅感尺度 (村松他, 2001) への回答を求めた。また,身体感覚の気づきの程度と不安傾向が正の相関関係を有することが報告されていること (e.g., Mandler et al., 1958) を踏まえ,特性不安を大学生版State-Trait Anxiety Inventory (STAI; 清水・今栄, 1981) を用いて測定した。

結果と考察 
 まず,日本語版BPQ12項目について探索的因子分析 (最尤法) を実施した。その際,固有値の減衰の程度 (5.378, 0.966, 0.857......) と因子の解釈可能性,および原版の因子構造を踏まえ,1因子構造を採用した (χ2 = 110.66 (p < .001), CFI = .934, RMSEA = .072)。因子負荷量は.76から.40であった (Table 1)。BPQの全項目の平均値は,2.76 (SD = 0.79) であった。BPQの信頼性を検討するために,α係数を算出したところ,.88という値が得られ,十分な信頼性が確認された。
 続いて,日本語版BPQの妥当性について検討を行うために,尺度ごとに平均値を算出し,相関分析を行った。その結果,BPQと職業性ストレス簡易調査表で測定された身体的なストレス反応の程度の間に,正の相関 (r = .33, p < .01) が認められた。そして,BPQと身体感覚増幅の間にも,正の相関関係 (r = .37, p < .01) が確認された。こうした結果は,全く同じ尺度を用いているわけではない点に注意は必要であるものの,BPQと身体的なストレス反応,および身体感覚増幅の間には正の相関関係があることを報告した先行研究 (Cabrera et al., 2017) と一致している。また,先行研究 (Palser et al., 2018) と同様に,BPQと特性不安の間にも有意な相関 (r = .25, p < .01) が認められた。こうした結果から,本研究で作成した日本語版BPQに一定の妥当性があることが示唆された。
 本研究の限界点として,身体感覚の別の側面とBPQの関係が検討できていない点が挙げられる。身体感覚には,BPQで測定される身体感覚への意識,気づき (interoceptive sensibility) の側面だけでなく,どれくらい身体感覚に正確,あるいは鋭敏に気づくことができるか (interoceptive accuracy) という側面も存在する。先行研究により,この2つの側面は独立しており,有意な相関を示さないことが示されている (Garfinkel et al., 2015)。しかし,そうした関係性が日本語版BPQでも成立するかについては明らかではないため,BPQの妥当性をより明確にするためにも,今後確認すべきだろう。

キーワード
身体感覚/内受容感覚/内受容意識


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