発表

2A-068

認知症高齢患者のBPSDに対するケアと職務継続意向

[責任発表者] 小木曽 加奈子:1,2
[連名発表者・登壇者] 伊藤 康児:3
1:名城大学, 2:岐阜大学, 3:名城大学

【目的】
認知症高齢患者が入院して主疾患の急性期治療を終えた後に地域包括ケア病棟に移り,そこで認知症の周辺症状である易怒・興奮などのBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)が少ない穏やかな入院生活を送ることができれば,家族をはじめ患者を支える人たちもその後の生活を見通しやすくなり,住み慣れた自宅への転帰につながる。そのため,認知症高齢患者が退院後に地域での生活を再開できるかどうかは,地域包括ケア病棟での看護職の実践がひとつの鍵となる。ここで働く看護職にとっては,看護の力で患者の変化をもたらすことができれば職務のやりがいとなり,これが職務へのポジティブな思い,さらに職務継続意向へとつながると考えられる。しかし,磯倉(2015)は,一般病棟の看護師は,療養病床に対して検査や処置が少なく,新しい看護技術の獲得が難しいというマイナスイメージを抱えている,と述べており,日常生活援助が中心となっていることと認知症高齢患者が多いことが要因となる。この状況は地域包括ケア病棟も同じであり,そこで働く看護職は一般病棟から勤務交代という形で配置されるため,地域包括ケア病棟の看護職の職務に対する意向を把握することは重要である。そこで,本研究は地域包括ケア病棟に勤務する看護職を対象とし,認知症高齢患者のBPSDに向き合うケアの実践と職務継続意向との関連を質問紙調査により明らかにすることを目的とする。
【方法】
東海4県の137地域包括ケア病棟の看護職各10名,計1,370名を対象者とした。調査期間は平成30年5~6月であった。調査内容は,個人特性(年齢,看護職としてのキャリアなど),勤務する病院の環境要因(カンファレンスの頻度,看護職や多職種との意見交換など),BPSDサポート尺度( Support Standards for the Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;SS-BPSD:易怒・興奮,拒薬・拒食・拒絶,行動的攻撃(暴力),不潔行為といったBPSDにどう対処しているかをたずねる質問20項目;Ogiso,2016),日本版ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES:仕事に積極的に向かい活力を得ているかをたずねるUtrecht Work Engagement Scaleの日本語版9項目;島津,2016),職務継続意向(地域包括ケア病棟での勤務,当該病院での勤務,および看護職そのものを継続しようとする意向)とした。分析には,SPSS 21.0 for WindowsとAmos 21.0 for Windowsを用い,有意水準は5%未満とした。なお,本研究は岐阜大学大学院医学系研究等倫理審査委員会の承認(29-423)を受けて実施した。
【結果】
1.地域包括ケア病棟継続意向における概要
605(44.2%)の回収があり,欠損値がない570(41.6%)を対象とすることとした。地域包括ケア病棟継続意向は,1~3を選択したもの(なし群)と,4と5を選択したもの(ある群)の2群に分け,一元配置分散分析または,Mann-WhitneyのU検定を用い検討した結果,個人特性においては,関連はみられなかった。環境要因では,ソーシャルサポートの同じ病棟看護職の支援,他職種の支援,上司の支援,配偶者・家族・友人の支援は1%水準で関連があることが示された。ワーク・エンゲイジメントでは,活力,熱意,没頭,日本語版UWES総合点は,1%水準で関連があることが示された。職務満足の仕事全体の満足感,職務継続意向の現在の病院の継続意向と看護職の継続意向は1%水準で関連があることが示された。
2.BPSDに向き合うケアの実践と職務継続意向との関連
看護職の年齢や勤務年数,看護師間および他職種間の連携が互いに関連しあって認知症高齢患者のBPSDに向き合うケアの質を高め,こうした実践が職務への満足,高いワーク・エンゲイジメントを介して職務継続意向を高める,と仮定したモデルを構成し,適合度を検証した。その結果,χ2 = 717.042(df = 244,p<.001)であり,適合度の諸指標も基準を満たすものであった(GFI =.904,AGFI =.882,GFI≧AGFI CFI =.922,RMSEA=.058,AIC = 829.042)ところから,妥当なモデルであると評価した。なお,標準化係数の推定値は.431-.956であった。
【考察】
本研究で問題とした看護職の地域包括ケア病棟での職務継続意向は,年齢や看護キャリアといった個人特性及びBPSDに対処する看護の力とは直接の関連を示さず,むしろ看護職個人ではなく,他職種間で検討を行うことからBPSDに向き合うケアが支えられ,BPSDに対処することでよりひとりの人として認知症高齢患者に関わる質の高いケアができ,それが職務のやりがい,職務へのポジティブな思いを引き出して職務継続意向をもたらす,との一連の関連性が示された。BPSDは,それぞれの認知症の特性による中核症状と,本人の性格,人間関係,物的な環境などの多様な要因により生じる。本研究で示されたモデルにもとづけば,ひとり一人で異なるBPSDに向き合うケアを看護職,他職種がともに学びながら実践を行うことが重要であり,そうした実践が看護職としての仕事の継続を導くと考えられる。
【引用文献】
磯倉聡恵,他,一般病棟から療養病棟へ異動になった看護師の体験,日本看護学会論文集:看護管理,45,355-357,2015.
Ogiso K(2016).Verification of the Validity and Reliability of Care Outcomes of Dementia: Investigation by Support Standards for the Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia,The Journal of Education and Health Science,62(2),313-327.
島津明人(2016).ワーク・エンゲイジメント-ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を,労働調査会,66-68.

キーワード
認知症/BPSD/職務継続意向


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