発表

1B-065

保護者との情動交流が小学生の無気力感に与える影響
学年・性別による回答パターンからの検討

[責任発表者] 牧 郁子:1
1:大阪教育大学

目 的
 牧(印刷中)は,児童期の認知情動発達を鑑み,中学生における無気力感の構成要因と示唆されている随伴経験,非随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏りに,保護者との情動交流を加え,小学生における無気力感のメカニズムを構造方程式モデルによって検証した。その結果,随伴経験からコーピング・エフィカシー,思考の偏りを経て無気力感につながる中学生の無気力感モデルとは違い,保護者との感情交流がコーピング・エフィカシーおよび思考の偏りにつながり,その影響が随伴経験・非随伴経験を媒介して無気力感につながる流れが示唆された(牧,印刷中)。さらに学年別の無気力感および無気力感関連要因の違いを検討した結果,6年生が最も保護者との情動交流,コーピング・エフィカシー,随伴経験が有意に低く,思考の偏り・非随伴経験・無気力感が有意に高い結果となった(牧,2017a)。一方,性別における無気力感および無気力感関連要因の違いを検討した結果,男子の方が女子よりも,保護者との情動交流,コーピング・エフィカシー,随伴経験が有意に低く,思考の偏り・非随伴経験・無気力感が有意に高い結果となった(牧,2017b)。そこで本研究では,発達段階・性差を勘案した小学生の無気力感をさらに検討するため,回答パターンの違いによる分析を行うこととする。
方 法
【調査協力者】大阪府・滋賀県の小学生4年生~6年生1556名を対象に,調査を行い,分析可能な1534名(男子=802名,女子=732名;4年生= 502名,5年生=533名,6年生=499名;平均年齢10.84歳,SD= 0.89)を対象に検討を行った。
【調査用紙】児童用・情動交流尺度(牧,印刷中),児童用・主観的随伴経験尺度(牧,印刷中),児童用・コーピング・エフィカシー尺度(牧,印刷中),児童用・思考の偏り尺度(牧,印刷中),小学生用無気力感尺度(笠井他,1995)を無記名式で実施した。なお調査は協力校の管理職に内容の事前説明を行い,各調査項目のチェックを受けた上で実施した。
結 果 と 考 察
学年と性別を掛け合わせたZ得点データに基づき,Ward法によるクラスター分析を行った。その結果,6年生男子は,2クラスター(Fig.1)が,6年生女子は3クラスター(Fig.2)に分類された。6年生男子におけるCluster 1(N= 109)は,無気力感・非随伴経験・思考の偏りが平均値より0.5 ~0.8 SDの範囲で下回り,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信,コーピング・エフィカシー,随伴経験が平均値を0.4 ~0.8 SDの範囲で上回る結果となった。またCluster 2(N= 156)は,無気力感・非随伴経験・思考の偏りが平均値より0.3 ~0.6 SDの範囲で上回り,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信,コーピング・エフィカシー,随伴経験が平均値を0.3 ~0.6 SDの範囲で下回る結果となった。一方6年生女子においては,Cluster 1(N= 61)は,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信が平均値より0.3 SDの範囲で,無気力感・非随伴経験・思考の偏りが平均値より0.4 ~0.8 SDの範囲で上回り,コーピング・エフィカシー,随伴経験は平均値を0.1 ~0.3 SDの範囲で下回る結果となった。一方Cluster 2(N= 51)は,無気力感・非随伴経験・思考の偏りが平均値より0.3 ~1.0 SDの範囲で上回り,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信,コーピング・エフィカシー,随伴経験が平均値を1.0 ~1.5 SDの範囲で下回る結果となった。Cluster 3(N= 122)は,無気力感・非随伴経験・思考の偏りが平均値より0.5 ~ 0.7 SDの範囲で下回り,ポジティブ情動の送受信・ネガティブ情動の子ども送信・ネガティブ情動の保護者受信,コーピング・エフィカシー,随伴経験が平均値を0.3 ~0.7 SDの範囲で上回る結果となった。以上から,6年の男子が女子より無気力感の平均値を上回る層が多い可能性が示唆された一方,女子のCluster 2のように,男子より顕著に無気力感が高く,保護者との情動交流・エフィカシー・随伴経験が顕著に低い層が存在する可能性も併せて示された。

※本研究はJSPS科研費・基盤研究(C)(課題番号2538 0927)の助成を受けたものです。

キーワード
小学生/無気力感/情動交流


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