発表

1B-063

制御焦点が創造的パフォーマンスに及ぼす影響
-課題への自我関与に注目して-

[責任発表者] 外山 美樹:1,2
[連名発表者・登壇者] 湯 立:1,2, 長峯 聖人:1,2, 肖 雨知:1,2, 三和 秀平:2,3, 海沼 亮#:1,2, 相川 充:1,2
1:筑波大学, 2:CRET, 3:関西外国語大学

【問題と目的】 制御焦点理論(Higgins, 1997)では,人の目標志向性を,希望や理想を実現することを目標とする促進焦点と,義務や責任を果たすことを目標とする防止焦点の2つに区別している。
 多様なアイディアの創出や新奇で適切な解決方策の想起と定義される創造性には,柔軟的,拡散的認知スタイルが必要となる(Ward et al., 2004)ため,そうした認知スタイルをとる促進焦点は,防止焦点よりも創造性課題のパフォーマンス(以下,創造的パフォーマンス)が高いことがこれまで示されてきた(Friedman & Förster, 2005)。しかし近年,防止焦点においては,動機づけを高めるような何らかの操作を行い,根気強く持続的に課題に取り組むことができれば,促進焦点と同等の創造的パフォーマンスを収めることができる可能性が指摘されている(De Dreu et al., 2008)。
 本研究では,防止焦点の動機づけを高める要因として,自我関与に焦点を当て,制御焦点が創造的パフォーマンスに及ぼす影響を検討する。本研究の仮説は「促進焦点では,自我関与の高低によって創造的パフォーマンスに差は見られないが,防止焦点では,自我関与が高い時に,そうでない時よりも創造的パフォーマンスが高い。ならびに,自我関与が高い時には,促進焦点と防止焦点で創造的パフォーマンスに差は見られない」である。
【方法】実験参加者 大学生128名(男性60名,女性68名)。
実験計画 制御焦点(促進,防止)と課題への自我関与(high, not high)の2要因を独立変数とする実験参加者間計画。
課題への自我関与の操作 実験参加者が遂行する創造性課題の説明によって,課題への自我関与を操作した。自我関与high条件(n=64)では“これから,創造性検査の課題を行ってもらいます。この創造性検査は,大学生の学業成績や将来の社会的地位を予測することができます”と教示し,自我関与not high条件(n=64)では“これから,創造性検査の課題を行ってもらいます”とだけ教示した。
制御焦点の操作 促進焦点条件(n=64)では,実験参加者の創造性課題の成績が,一般大学生の平均以上(上位50%以内)の成績に入るように教示し,防止焦点条件(n=64)では,平均以下(下位50%以内)の成績に入らないように教示した。
創造性課題と実験手続き 実験は1人ずつ実験室で行った。課題への自我関与,制御焦点の操作を行った後に,創造性課題(UUT;Guilford, 1967)を実施した。「靴下」と「缶詰の缶」の通常とは異なる使い方を各2分間でできるだけ多く自由記述させた。「流暢性(アイディアの数の多さ)」として“回答の数”を,「柔軟性(アイディアの多様さや柔軟さ)」として“回答のカテゴリーの数”を,「独創性(アイディアの非凡さや稀さ)」として“2名の評定者による評点(5段階評定)”を,それぞれパフォーマンスの得点(いずれも2つの課題の得点の平均値)として使用した。
【結果と考察】 制御焦点(促進,防止)と課題への自我関与(high,not high)を独立変数,創造的パフォーマンス得点の指標(流暢性,柔軟性,独創性)を従属変数とする2要因分散分析を行った。
流暢性 交互作用が有意となった(F(1, 124)=6.33, p=.01, ηp2=.05)。単純主効果検定を行った結果(Figure 1),制御焦点の単純主効果は,課題への自我関与high条件においてのみ有意(F(1, 124)=5.72, p=.02, ηp2=.04)で,防止焦点条件が促進焦点条件よりも,流暢性得点が有意に高かった。課題への自我関与の単純主効果は,防止焦点条件においてのみ有意(F(1, 124)=12.67, p=.00, ηp2=.09)で,自我関与high条件が自我関与not high条件よりも,流暢性得点が有意に高かった。
柔軟性 交互作用は有意とならなかった(F(1, 124)=0.51, p=.48, ηp2=.00)が,仮説検証のために単純主効果検定を行った。その結果,課題への自我関与の単純主効果が防止焦点条件においてのみ見られ(F(1, 124)=3.98 p=.04, ηp2=.03),自我関与high条件が自我関与not high条件よりも,柔軟性得点が有意に高かった。それ以外の単純主効果は有意とならなかった。
独創性 交互作用が有意となった(F(1, 124)=3.96, p=.04, ηp2=.03)。単純主効果検定を行った結果,制御焦点の単純主効果は,いずれの条件も有意とならなかった。課題への自我関与の単純主効果は,防止焦点条件においてのみ有意となり(F(1, 124)=5.38, p=.02, ηp2=.04),自我関与high条件が自我関与not high条件よりも,独創性の得点が高かった。
 本研究より仮説が概ね支持され,防止焦点においては課題への自我関与を高めることができれば,促進焦点と同様の高い創造的パフォーマンスを発揮する可能性が示された。

キーワード
制御焦点/創造的パフォーマンス/自我関与


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