発表

1B-062

中学生における仲間関係への動機づけが教師の関わり方から受ける影響

[責任発表者] 山本 琢俟:1
[連名発表者・登壇者] 上淵 寿:1
1:早稲田大学

研究の目的
 中学生にとって,仲間関係は適応や精神的健康を規定する重要な要因の1つである。例えば,同じ学級や学年の仲間からの受容は学業的な動機づけや学習への有能感を促進しており(Wentzel, 2005),一方でこれらの仲間が個人の身体的な安全や健康を脅かす要因ともなり得る(Wentzel & Edelman, 2017)。
 このように両価的な側面を持つ仲間関係に対し,教師の果たす役割は大きいといえよう。生徒に対する教師の関わり方は生徒の学級における行動的エンゲージメントと密な関連を持っており(Gregory & Korth, 2016),学級におけるいじめ等の被害を防ぐためにも担任教師の取り組みが重視されている(Espelage & Colbert, 2016)。そこで,本研究では生徒の仲間関係のあり方と関連の深い概念として動機づけを取り上げ,クラスメイトとの関係を形成・維持しようとする動機づけが教師の関わり方から受ける影響を検討していく。

方法
 調査対象 公立中学校に在籍する1年生から3年生の57学級1748名(女子868名,男子870名)を対象に質問紙調査を行った。
 調査内容 1)岡田(2005)の「友人関係への動機づけ尺度」の教示文を変更しクラスメイトとの関係への動機づけを尋ねた。自己決定理論に依拠した「内発」,「同一化」,「取り入れ」,「外的」の4因子16項目から成っており,クラスメイトとの関係の形成や維持に対する特性的な動機づけを測定するもの。教示文は「なぜ同じクラスの友人と親しくしたり,いっしょに時間をすごしたりしますか」とし,5件法(とてもあてはまる:5―全くあてはまらない:1)で回答を求めた。2)大谷・岡田・中谷・伊藤(2016)の「学級の社会的目標構造尺度」を用いた。学級の思いやりや互恵性を強調される目標である「向社会的目標構造」と学級の規則や秩序の遵守が強調される目標である「規範遵守目標構造」の2因子14項目から成っており,学級において強調され,共有されている社会的目標を測定するもの。4件法(よくあてはまる:4―全然あてはまらない:1)で回答を求めた。
 調査手続き 各学校の学校長と対象学年の担任教諭から調査協力依頼に同意を得られた学級を対象として無記名の質問紙調査を実施した。調査実施にあたって,質問紙への回答は任意であり途中で回答を取り止めてもよいこと,回答への協力の有無と回答内容が学校の成績に関係ないことを生徒に伝えた。

結果と考察
 クラスメイトとの関係への動機づけについて,自己決定理論に依拠した因子構造を仮定し,確認的因子分析を行った。分析の結果,外的と仮定した1つの項目で因子負荷量が.40を下回っていたため,当該項目を除外し再度確認的因子分析を行った。その結果,適合度はχ^2(84)=1298.01,p<.001,CFI=.910,RMSEA=.091,SRMR=.070であり,下位尺度のα係数は.72から.91であった。項目得点の加算平均を下位尺度得点とし,下位尺度間の相関係数を算出したところ,シンプレックス構造が確認された。学級の社会的目標構造について,α係数は向社会的目標構造が.90,規範遵守目標構造が.73であった。
 収集したデータを学級毎の入れ子構造とみなし,下位尺度得点のデザインエフェクトを算出したところ,動機づけ尺度における取り入れ得点は1.49であったが,その他の変数では2以上の値を得た。クラスメイトとの関係への動機づけが学級の社会的目標構造から受ける影響について検討するため,動機づけに対して学級の社会的目標構造からのパスを引き,動機づけと社会的目標構造それぞれの下位尺度間に共分散を設定した。マルチレベル構造方程式モデリングによる分析で有意な値の確認されたパスと共分散をFigure 1に示す。生徒レベルにおいて,向社会的目標構造は動機づけの内発と同一化に,規範遵守目標構造は同一化,取り入れ,外的に影響を与えていた。一方で,学級レベルにおいて,向社会的目標構造が内発,同一化,外的に,規範遵守目標構造が外的に影響を与えていた。
 向社会的目標を強調する教師の関わりを受けることで生徒はその内容を内在化しやすく,規範遵守目標を強調する関わりを受けることで生徒は被統制感を抱くといえる。学級レベルにおいて,向社会的目標の強調されている学級の生徒ほどクラスメイトに関する外的な動機づけが高くなっており,教師は,生徒間の思いやりや互恵性が強調されたクラスでは生徒の被統制感を高めてしまっている可能性を考慮した学級経営を行うべきであるといえよう。また,規範遵守目標の強調されている学級の生徒ほどクラスメイトに関する外的な動機づけが低下している結果が得られたことについては,決定係数の低さやサンプルサイズから第1種の過誤の可能性も考慮しつつ今後の課題として慎重に検討を進めていきたい。

キーワード
動機づけ/中学生/マルチレベル構造方程式モデリング


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