発表

1B-061

BGMの感情価が映像刺激の印象に及ぼす影響

[責任発表者] 森岡 陽介:1
1:聖カタリナ大学

序論
 音楽や視覚刺激が感情喚起をもたらすことは,多くの研究によって明らかにされてきた。また,少ないながらも音楽と映像の組み合わせによって,喚起される感情やそれに伴う感情反応がどのような影響を受けるのかについて検討した研究も存在する。例えばEllis & Simons(2005)は,ポジティブな映像にポジティブな音楽を組み合わせて視聴させた場合,ネガティブな音楽を組み合わせた場合よりもよりポジティブな感情を喚起し,逆にネガティブな映像にネガティブな音楽を組み合わせた場合はポジティブな音楽の組み合わせよりもよりネガティブな感情を喚起することを明らかにしている。しかしながら,これらの研究で用いられた映像刺激は,その呈示時間が短く,日常われわれが影響を受けるような映像視聴場面とは乖離していると考えられる。そこで本研究では,より日常の視聴場面に近い刺激を作成し,感情の異なるBGMと映像を組み合わせることで,映像刺激の印象に及ぼす影響を検討する。

方法
実験参加者 大学生 157人(男性91名,女性66名,平均年齢18.99±0.76歳)が本実験に参加した。
刺激 呈示する楽曲として,予備実験によって感情価,および覚醒度の異なる5曲を選曲した。不快高覚醒音楽として映画「ジョーズ」の登場シーンのオーケストラ,快高覚醒音楽として「ハードオフ」の店内BGM,中性高覚醒音楽として「ミッションインポッシブル」のテーマソング,やや不快低覚醒音楽として「放課後の音楽室」,やや快低覚醒音楽として「想い出は遠くの日々」,の5曲を選定した。また,快映像刺激として恋愛映画「明日,昨日の君とデートする」の予告映像,不快映像刺激としてホラー映画「呪怨」の予告映像の2種類を選定した。これらの映像刺激と音楽刺激をそれぞれ総当たりで組み合わせ,計10種類のビデオクリップを作成した。
質問紙 ビデオクリップに対する感情評価を測定するため,小川ら(2000)の一般感情尺度を使用した。
手続き 実験は映像を被験者間要因,音楽を被験者内要因とする2要因混合計画で実施した。ホラー映像,恋愛映像各群ともに5種類の音楽を組み合わせたクリップを視聴させた。なお,クリップの呈示順序は参加者ごとにランダムに呈示した。

結果および考察
 一般感情尺度の3因子に対し, 2種類の映像と5種類のBGMによって印象が変わるかどうかを検討するため2要因分散分析を行った。
 その結果,NA得点で有意な交互作用が認められた。単純主効果の検定を行った結果,「ハードオフ」においてのみ映像の単純主効果が有意であり,ホラー映像は恋愛映像よりも有意にNA得点が高かった。また,すべての映像で音楽の単純主効果が有意であり,ホラー映像ではジョーズ,ハードオフ,ミッションインポッシブル,想い出,放課後の順でNA得点が高く,恋愛映像ではジョーズ,ミッションインポッシブルが他の曲よりもNA得点が高かった。
また,PA得点においても有意な交互作用が認められた。単純主効果の検定を行った結果,ホラー映像,恋愛映像ともに曲の単純主効果が有意であり,両映像に共通してハードオフが最もPA得点が高く,次いでミッションインポッシブルとなっており,それ以外の曲では有意な差はなかった。
CA得点においても有意な交互作用が認められた。単純主効果の検定を行った結果, ホラー映像,恋愛映像ともに曲の単純主効果が有意であり,両映像に共通して想い出,放課後,ハードオフ,ミッションインポッシブル,ジョーズの順にCA得点が高かった。
 これらの結果から,映像と音楽の組み合わせによる感情への影響は音楽の感情価がより大きな影響を与えており,Ellis & Simons(2005)の結果と一致する結果となった。しかしながら,例えばハードオフの音楽のように,明らかにポジティブで高覚醒の音楽がネガティブな映像と結びついた場合,映像の感情価を減弱するのではなく,むしろ猟奇的な印象を与え,よりネガティブな印象を与えることが示された。

キーワード
音楽/映像/感情


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