発表

1A-061

ネガティブな閾下評価条件づけは嫌悪刺激に対する評価を変化させるか?

[責任発表者] 吉村 晋平:1
[連名発表者・登壇者] 奥田 早弥#:1
1:追手門学院大学

<背景・目的>
評価条件づけとは,ある対象に対する好悪(Liked-Disliked)の反応である評定反応(Evaluative Responses)を変化させることである。一般的に評価条件づけでは中性刺激を条件刺激として用いるが,Clerkin&Teachman(2010)は社交不安者におけるネガティブ評価の対象である自己関連刺激を条件刺激として,ポジティブ刺激を無条件刺激とすることで,自己関連刺激に対するネガティブ評価が低下することを示している。しかし,感情価を持つ刺激を条件刺激とした場合の評価条件づけの効果は一貫していない。先行研究では,評価条件づけの手続きにおいて条件刺激と無条件刺激を閾上で呈示しているため,対象者の意識的認知プロセスが学習に関与した可能性がある(Milner, Wagner &Crouch, 2017)。そこで,本研究では嫌悪刺激を条件刺激として,ポジティブ刺激またはネガティブ刺激を無条件刺激を閾下で呈示して評価条件づけを行い,条件刺激に対する評価の変容が生じるかを検討することを目的とした。
<方法>
・研究参加者:大学生69 名であった。その内訳は男性18 名,女性51 名で,平均年齢は20.55 歳(18 歳~29 歳)(SD=1.78 )であった。研究参加者は研究趣旨説明を受け,研究参加同意書への署名を行い,任意により研究に参加した。
・刺激:画像データベースより嫌悪刺激として虫の画像を6個,ポジティブ画像を6個使用した。嫌悪刺激のうち3個は評価条件づけ手続きにおいて条件刺激(CS)として使用した。また,樋上ら(2015)からポジティブ語,ネガティブ語,中性語をそれぞれ3語ずつ無条件刺激(UCS)として用いた。
・実験手続き:研究参加者はポジティブ条件,ネガティブ条件,中性条件の3 条件に振り分けられた。それぞれの実験参加者の人数はポジティブ条件23名,ネガティブ条件24名,中性条件22名であった。評価条件づけでは,最初に注視点(+記号)を呈示(1000ms)し,続いて3個の嫌悪画像のうち1 つを呈示(16ms)した。その後に各条件の単語(UCS)のうち1 つの呈示(16ms)が続いた。条件刺激と無条件刺激の組み合わせは9対であった。その後単語の呈示後にはランダムに並べられた英数字8つをマスクとして500 ㎳ 呈示して画像と単語の視認を妨害した。ここまでを1試行として9つの対は無作為な順序で各20 回ずつ呈示し,合計180 試行を実施した。これらの課題はPsychopy(Peirce,2009)を用いて作成,実行した。さらに,評価条件づけで使用した嫌悪画像3個と使用しなかった嫌悪画像3個に加え,ポジティブ画像6個に対する10件法のポジティブ評価及びネガティブ評価を評価条件づけの前後に実施した。
・質問紙尺度:嫌悪感受性を測る尺度として,岩佐・田中・山田(2018)の「日本語版嫌悪尺度(DS-R-J)」を用いた。虫への嫌悪感受性を測る質問として,田中(2015)「昆虫に対する嫌悪感情尺度」を用いた。質問紙への回答は,実験手続きの前に実施した。
<結果>
評価条件づけの条件(ポジティブ条件,ネガティブ条件,中性条件)を被験者間要因,評価条件づけ前後の評価の測定時期(pre,post)と評価の感情価(ポジティブ評価,ネガティブ評価)を被験者内要因,評価条件づけ前後に行った画像刺激に対する評価を従属変数として評価に用いた画像刺激の種類(嫌悪画像,ポジティブ画像)ごとに3要因の分散分析を行った。嫌悪画像に対する3要因の分散分析の結果(Fig1),有意な3要因の交互作用が見られた(F[2,66]=99.01, p<.001, partial η2=.75)。ネガティブ条件におけるポジティブ評価およびネガティブ評価においての測定時期の単純主効果が有意であり(ポジティブ評価:F[1,132]=34.41, p<.001, partial η2=.61; ネガティブ評価:F[1,132]=386.93, p<.001, partial η2=.95),ネガティブ条件の評価条件づけ前後では虫画像に対するポジティブ評価が増大し,ネガティブ評価が減少した。さらに,評価条件づけでは使用しなかった虫画像についても3要因の分散分析の結果,有意な3要因の交互作用が見られ(F[2,66]=68.51, p<.001, partial η2=.68),同様の単純主効果が見られた(ポジティブ評価:F[1,132]=15.19, p<.001, partial η2=.41; ネガティブ評価:F[1,132]=286.09, p<.001, partial η2=.93)。一方で,他の条件の評価条件づけ前後においては虫画像に対する評価の有意な増減は見られなかった。
<考察>
仮説と異なり,閾下において嫌悪刺激をポジティブ刺激と評価条件づけすることで,嫌悪画像に対する感情評価に変化は生じなかった。対照的に,虫画像をネガティブ刺激と評価条件づけした場合には,虫画像に対するポジティブな評価が増大し,ネガティブな評価が減少した。嫌悪刺激とネガティブ刺激の連合による対照的な評価の変容は,感情馴化または無条件刺激のdevaluationによって生じた可能性がある。

キーワード
評価条件づけ/嫌悪/感情馴化


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