発表

1A-060

ためらい(躊躇)についての意識とマインドワンダリングとの関連性

[責任発表者] 鈴木 賢男:1
1:金沢学院短期大学

目 的
24項目のためらい場面項目(自由記述による類型化)と特性不安尺度などの関連性を調査した結果から,ためらいの場面として提示された項目で時間をかけて決断する傾向にある人ほど,特性不安が高いことなどがわかった(日心発表2008-2015)いたが,鈴木(2016)では,ためらい(躊躇)を,決断した後でも,別の要因によって実行段階に移行できないことを表すもの(行動の先延ばし)と,葛藤のあるような決断を,そもそも避けようとする際にも表れるもの(決断の先延ばし)との2通りのためらい(躊躇)があると考えられるのではないかと検討し,鈴木(日心発表2017-2018)では,ためらい場面項目の修正・追加をした上で,ためらい場面の再類型化を図り,特性不安や意思決定時の志向性,日常の行動習慣との関連性を,類型ごとに分析することとした.その結果,「損失懸念」「問題打開」「覚悟容認」の場面は,行動したい,するべきであるのに,慎重であるが故に,実行段階に移行できない行動の先延ばしという特徴があると考えられ,逆に,「課題負担」「成否対極」は,比較的猶予があり,決断自体を先延ばしにしていると考えることができた.従って,構造的に2通りのためらい(躊躇)があると仮定できると思われた.本研究では,直近の課題から注意が逸らされる心的機能の一種としてのマインドワンダリングとためらいの場面やためらいに関連する意識的特性との関連を検討してみることとした.
方 法
質問紙調査実施日:2019年1月.対象者:X大学の大学一年生35名(男性2名,女性33名).平均年令18.7才(SD=0.47).マインドワンダリング尺度:梶村・野村(2016)による日本語版Mind Wandering Questionnaire(以降, MWQ)の「単純な作業に集中し続けられるか」等の5項目について,「常にある」~「全くない」までの6段階の評定を得た.特性不安尺度:新版STAI Y-2(肥田野 他,2000)における問番号21~40の20項目の特性不安に関する項目をランダムに配置しなおした上で,「ほとんどいつも」「たびたびある」「ときどきある」「ほとんどない」の4段階の評定を得た.ためらい場面の評定:「思いもよらない不幸な事実を受け入れるかどうか」「テスト前の勉強にいつ取り掛かるかどうか」などの24項目に対して,「決断するまでに時間をかけるほうですか」と教示し,「かなり時間をかける~ほとんど時間をかけない」の5段階の評定を得た.意思決定性:何かを決めなければいけない場合にどのような状態になるかを,「何かもっと大事なことがあるかもと思ってしまう」「慎重に物事をすすめたい」などの20項目に対して,「かなり当てはまる~全く当てはまらない」の5段階の評定を得た.質問紙手続き:調査への回答に関しては協力をお願いしたが,倫理的な配慮(回答拒否等)についての説明をし,質問紙調査用紙を一斉配布し,即回収を行った.
結 果
マインドワンダリング傾向:5項目について最尤法による探索的因子分析を行った結果,固有値1.0基準で2因子が見出されたが,梶村・野村(2016)と同様,第1因子で十分な負荷量(51.8%)が得られたため,1因子として抽出した.α係数=.73だった.ためらい場面の類型:鈴木(日心発表2018)と照合しながら,22項目の固有値減衰率の状態から,抽出する因子数を5因子に固定して,最尤法による因子分析を行った後,回転バリマックス解を得た(累積寄与率51.0%).因子が構成する項目には変動は見られたが,負荷量の値が近似していることと比較対照の理由から,前回と同じ項目で因子を構成し,良い方向への「問題打開」α=.46と,学業における「課題負担」α=.52,成否が気になる「成否対極」α=.59,良いことなのに「損失懸念」α=.71,受け入れざるを得ない「覚悟容認」α=.34となった.特性不安尺度:20項目に対して主因子法による因子分析を行い,固有値減衰率から2因子を抽出し,回転バリマックス解に対して,周囲に対する「外的不安」と自己の状態に対する「内的不安」であると,鈴木(日心2018)とほぼ同様となった(累積寄与率42.3%).意思決定性:20項目について,固有値減衰率を基準として,4因子を抽出し回転バリマックス解を得た(累積寄与率47.9%).因子が構成する項目に変動が見られたが,負荷量の値が近似しているものが多く,比較対象の理由から,前回と同じ項目で因子を構成させ,問題がないかどうか「状態確認」α=.85,先行きを思う「想像先行」α=.66,決定を遅らせる「遅延延滞」α=.53,気後れで進めない「慎重待機」α=.76となった.マインドワンダリングとの関連:日本語MWQ得点との相関係数を算出したところ,意思決定性の「遅延後退」とr =.33(p <.10)で有意な正の相関の傾向を示した.重回帰分析:ためらい場面の5類型を個別に目的変数とし,特性不安としての「外的不安」「内的不安」,意思決定性としての「状態確認志向」「想像先行志向」「遅延延滞志向」「慎重待機志向」,日本語MWQ得点の7要因を説明変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った.その結果,「覚悟容認」の重回帰式が有意となり(F (2,31)=11.33, p <.001)には,意思決定性における「慎重待機」が要因として,5%水準で有意なプラスの影響(β=.61),日本語MWQ得点が負の影響(β=-.36)を与えていた.

考 察
受け入れざるを得ない「覚悟容認」の場面の際に,MWQが高くなると,ためらわなくなる(時間をかけない)ように作用することが示唆されたが,このことは,直近の課題から注意を逸らす傾向が高いと,かえって,ためらわない(時間がかからない)ということを意味しているのであろうか.それが,この場面にのみ特定されるのか.今後の慎重な検討を要したい.

キーワード
ためらい/感情/マインドワンダリング


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