発表

3A-064

「やる気」とマインドワンダリングの関係

[責任発表者] 川越 敏和:1
[連名発表者・登壇者] 嘉瀬 貴祥:1, 小野田 慶一:2, 山口 修平#:3
1:立教大学, 2:島根大学, 3:島根県立中央病院

目的
マインドワンダリング (MW) とは,目の前の課題とは無関連な事柄についてぼんやりと考えてしまう心理現象のことであり,我々の覚醒時間の約半分を占めるとされる (Killingsworth & Gilbert, 2010)。この活動は我々にネガティブな影響を与えることが知られており (Mooneyham & Schooler 2013),様々な制御方法が考えられている (e.g., Kabat-Zinn, 1993)。しかし直感的には目前の課題に対する「やる気」がマインドワンダリングと深く関わっていそうである。実際,短期的モチベーション (state motivation: SM) が課題中のstate MW (SMW) に影響することは既に報告されている (Seli et al., 2016a)。 一方で,特性としてのやる気 (trait motivation: TM, Tremblay et al., 1995) の影響について調べた研究は見当たらず,さらにMWもtrait-stateの次元で区分することができるが (Seli et al., 2016b),モチベーションとの関連は検討されていない。本研究ではMWについての基礎的な理解を深めるため,trait・stateレベルのモチベーション (TM, SM) とMW (TMW, SMW) 間の関連に迫る。今回は中途解析の結果を報告する。
方法
参加者:質問紙調査では,視力や注意機能に問題のない健常成人で,インフォームドコンセントによる同意を得た224名を対象とした。9名の異常値を含む参加者を除外し,215名 (age: 21.2 years [SD: 2.6]; 96 male and 119 female) が解析対象となった。このうち,さらに同意が得られた97名が実験室実験に参加した。ここでも異常値を含む参加者2名を除外し,95名 (age: 21.2 years [SD: 2.8]; 36 male and 59 female) を解析対象とした。本研究は立教大学現代心理学部心理学研究倫理委員会,島根大学医学部医の倫理員会の承認を得て行われた。
質問紙:TMの指標としてApathy Scale (Starkstein, 1992),SMにIntirinsic Motivation Inventry (IMI, Choi et al., 2010),TMWにMW Questionnaire (Mrazek et al., 2013) を使用した。
実験課題:持続的注意課題を行った。これはGo/No-Go課題様のもので,比較的長時間 (30分程度) 継続されるのが特徴である。その最中にランダムなタイミングで「今どの程度マインドワンダリングしていたか」と問う画面を呈示する。この経験サンプリング法によりMWの頻度をより客観的に測定することができる。この程度をSMWの指標とした。
手続き:大学講義後に回答を依頼した質問紙調査によってTM・TMWの関連を調査した。詳細な調査参加への同意をした者に対して実験課題を行い,SM・SMWを調査した。
結果・考察
TMとTMWの関連について,指標間に有意な相関 (r = -0.31, p < 0.001),つまりTMが高いほどTMWが少ないという結果が得られた (Fig. 1a)。これは,SM・SMWの実験に参加した集団のみ抽出した場合でも同様であった (r = -0.36, p < 0.001; Fig. 1b)。Table 1にこの集団の相関行列を示す。SMとSMWの関連についても,有意な相関が確認され (r = -0.37, p < 0.001; Fig. 1c),モチベーションとMW内においてはそれぞれtrait-state間の相関は有意であった。 一方で,TM-SMW間,SM-TMW間には有意な相関は確認されなかった (Table 1)。以上の結果より,モチベーションとMW間には確かに関連があるが,時間単位に依存している可能性が示された。TMWとSMWの相関を以てこの区別は必要ないとした先行知見 (Seli et al., 2016b) を見直す必要があるかもしれない。今後,予定したサンプル数のデータ収集後に,媒介分析などによってTMがSMWに及ぼす影響について検討する。
参考文献
Choi J, Mogami T, Medalia A. (2010) Schizophr Bull. 36(5):966-976.
Seli, P., Risko, E.F., & Smilek, D. (2016) Conscious Cogn. 41:50-56.
Seli, P., et al. (2016) Trend Cogn Sci. 20(8):605-617.
Starkstein, S.E., et al. (1992) J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 4(2):134-9.
Mrazek M.D., et al. (2013) Psychol Sci. 24(5):776-81.
Tremblay, P.F., Goldberg, M.P., & Gardner, R.C. (1995) Can J Behav Sci. 27(3): 356-370.

キーワード
モチベーション/マインドワンダリング


詳細検索