発表

3A-063

論理的クリティカルシンキング志向性を高める個人差要因
日常活動における動機づけ尺度による分類

[責任発表者] 南 学:1
1:三重大学

目 的
 論理的クリティカルシンキング(クリシン)志向性とは,廣岡・小川・元吉・斎藤(2001)がクリシンに対する志向性を,社会的クリシン志向性と区別し,他者の存在を想定しない状況でのクリシン志向性として,尺度構成をおこなったものである。廣岡他(2001)は,クリシン志向性は,認知的・論理的問題解決能力だけでなく,社会的なかしこさも関連すると考え,この2つの志向性を分けて尺度を作成している。
 南(2019a)は,社会的クリシン志向性を高める個人差要因として日常活動における動機づけ(HEMA尺度)に着目し,この尺度得点に基づく分類によって社会的クリシン志向性の向上に差が見られるかどうかについて検討し,現状満足群において高まりにくく,向上志向群において社会的クリシン志向性が高まりやすいことを見出した。本研究では,日常活動における動機づけの観点から論理的クリシン志向性においても同様の傾向が見られるかどうかについて検討する。

方 法
調査対象者 M大学の心理学概論(心理学F)を履修した大学生で,欠損値がない者64名。
調査内容 日本版HEMA尺度(浅野・五十嵐・塚本,2014),論理的クリシン志向性尺度(廣岡他, 2001)など。
調査方法 前期初回,第4回,第14回に分けて調査をおこなった。初回は日本版HEMA尺度,第4回,第14回はクリティカルシンキング関連の調査用紙に回答させた。

結 果
 日本版HEMA尺度はくつろぎ追求,幸福追求,喜び追求の下位尺度からなり,これらに対してクラスタ分析をおこなうと,全追求群,現状満足群,向上志向群に分かれることが南(2015, 2018, 2019b)で示されており,本研究でも確認された。
 Table 1にクラスタ別の論理的クリシン志向性得点を示す。各下位尺度別に分散分析をおこなった結果,「探究心」では交互作用が有意であり[F(2,61)=3.61, p<.05],現状満足群で低下が見られた。また「証拠の重視」では介入前後の主効果が有意であり[F(1,61)=6.99, p<.01],現状満足群で低いことが見出された。

考 察
介入前後の論理的クリシン志向性得点を検討したところ,「探究心」と「証拠の重視」において現状満足群が低いことが示された。南(2019a)の社会的クリシン志向性での結果と比較すると,現状満足群において停滞がみられるという点は本研究でも確認されたが,向上志向群において向上がみられたという点は本研究では確認できなかったといえる。本研究では比較的被験者数が少なかったことが影響している可能性がある。

引用文献
浅野良輔・五十嵐祐・塚本早織 (2014). 日本版 HEMA 尺度の作成と検討-幸せへの動機づけとは- 心理学研究, 85, 69-79.
廣岡秀一・元吉忠寛・小川一美・斎藤和志 (2001). クリティカルシンキングに対する志向性の測定に関する探索的研究(2) 三重大学教育実践総合センター紀要,第20号, 93-102.
南 学 (2019a). 社会的クリティカルシンキング志向性を高める個人差要因-日常活動における動機づけ尺度による分類- 三重大学教育学部研究紀要,70, 321-326.
南 学 (2019b). 現代の若者の価値観と主観的幸福感の検討(2)-生活満足度と協調的幸福感を用いて- 三重大学教養教育院研究紀要,4, 53-59.
南 学 (2018). 現代の若者の価値観と友人関係 三重大学教育学部研究紀要,69,221-227.
南 学 (2015). 現代の若者の価値観と主観的幸福感の検討 三重大学教育学部研究紀要,66,171-178.

キーワード
論理的クリティカルシンキング志向性/HEMA尺度/心理学概論


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