発表

2C-044

二分法的思考と程度量表現が質問紙回答に及ぼす影響

[責任発表者] 石川 武:1
[連名発表者・登壇者] 飯島 雄大:1
1:帝京大学

1.問題と目的
 物事を二律背反なものとして思考する傾向は二分法的思考と呼ばれる(Oshio,2009)。二分法的思考を測定する尺度として,Oshio(2009)の二分法的思考傾向尺度(Dichotomous Thinking Inventory)があり,この尺度は3つの下位尺度から構成される。3つの下位尺度は二分法の選好,二分法的信念,損得思考からなる。二分法的信念は世界の複雑な事象は明確に二分割が可能であり,二分割できる特徴を有するといった信念である。二分法の選好はものごとを2つに分割して 整理することで理解が容易になるとするものである。また,損得思考は物事を2種類に分類するだけでなく,それぞれが自分にとって有利であるかを明確にすることを望むものである。物事を単純な2つのカテゴリに分類する二分法的思考傾向が強い場合,質問紙の回答において極端な 選択肢を選択する極端反応傾向(田崎・申,2017)を有すると予想される。このことは質問紙における妥当性を揺るがす問題となりうる。二分法的思考が 質問紙回答に及ぼす影響を記述的尺度で用いられている言葉(程度量表現)(井上,2002)によって低減させることを念頭に,本研究では二分法思考によるレスポンス・スタイルと程度量表現の違いが回答に及ぼす影響について検討することを目的とする。

2.方法
対象
 研究参加者は283名(男性132名,女性151名),平均年齢は19.24歳(SD=1.56)であった。
調査項目
 本研究で用いた質問紙は二分法的思考尺度 (Oshio,2009),自己高揚呈示規範内在化尺度(吉田・浦,2003)オリジナル版・改変版,年齢と性別からなるフェースシートから構成された。自己高揚呈示規範内在化尺度は自己呈示規範内在化尺度 (吉田・浦,2003)の下位尺度であり,11項目,5件法から構成される。この尺度では「非常に」,「やや」,「どちらともいえない」,「あまり」,「全く」という程度量表現が用いられており,これらの程度量表現は5段階評定でよく利用される表現(宮下,2009)である。改変版では使用頻度の低い程度量表現として「大変」,「まあまあ」,「どちらでもない」,「多少」,「極めて」を用いた。

3.結果と考察
 自己高揚呈示規範内在化尺度において,各項目において中間項目(3)からの絶対値の差を合計した値を中間項目からの絶対値合計とする。DTI得点と自己高揚呈示規範内在化尺度オリジナル版における中間項目からの絶対値合計について相関分析を行ったところ,相関がみられた(r=.15,p=.01)。同様にDTI得点と自己高揚呈示規範内在化尺度改変版における中間項目からの絶対値合計についても有意な相関がみられた(r=.17,p<.01)。したがって,二分法的思考が強いほど回答が中間項目(3)から離れ,極端反応レスポンス・スタイルを有するといえる。 DTI総得点と自己高揚呈示規範内在化尺度オリジナル版・改変版の平均得点について相関分析を行ったところ,有意な相関は見られなかった。下位尺度についても同様に,二分法的信念はオリジナル版・改変版いずれも有意な相関はみられなかった。一方で,二分法の選好はオリジナル版との間に,損得思考はオリジナル版・改変版いずれも,有意な正の相関がみられた(Table 1)。
 二分法的思考傾向が強いほど質問紙調査において回答が中間項目から離れ,極端反応レスポンス・スタイルを有する傾向にあることが明らかになった。程度量表現の使用頻度に関わらず損得思考が回答と関連する。また,心理測定尺度において使用頻度が高い表現を用いた場合,損得思考に加え,二分法の選好が回答と関連している可能性が明らかとなった。このことから,二分法的思考の影響が質問紙の回答に及ぼす影響を低減させるために使用頻度の低い程度量表現を用いることができると考えられる。

引用文献
井上裕光(2002). 官能評価分析のための程度量表現用語の定量的研究 日本官能評価学会誌,6(1),20-27.
Oshio, A. (2009). Development and Validation of the Dichotomous Thinking
Inventory Social Behavior and Personality: An International Journal, 37, 729-742.
田崎勝也・申知元(2017). 日本人の回答バイアス?レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較? 心理学研究, 88 (1), 32-42.
宮下一博(1998).質問紙作成の基礎 心理学マニュアル質
問紙法 鎌原雅彦・宮下一博・大野木裕明・中澤潤(編) (pp.10-25) 北大路書房
吉田綾乃・浦光博(2003).自己卑下呈示を通じた直接的・間接的な適応促進効果の検討 実験社会心理学研究,42(2),120-123.

キーワード
二分法的思考/程度量表現/レスポンス・スタイル


詳細検索