発表

2B-058

無意識的思考が意思決定の質に与える影響の時間特性

[責任発表者] 袁 昕:1
[連名発表者・登壇者] 有賀 敦紀:1
1:広島大学

意識的思考とは,問題に対して意識的に注意を向けている思考である。無意識思考とは,問題に対して意識的に注意を向けていないときの思考である(Dijksterhuis, 2004)。一般的には,熟考するほど(すなわち意識的思考の方)が意思決定において良い選択ができると思われがちだが,無意識的思考のほうがむしろよい選択をもたらすという研究がある。
Dijksterhuis ら (2006) は,複雑さの異なる意思決定課題を用いて,意識的思考と無意識的思考による意思決定の質を比較した。その結果,単純な課題であれば,意識的思考は良い決定をもたらすが,複雑な課題になるほど,意識的思考よりも,無意識的思考の方がより良い決定をもたらすことがわかった。これは無意識的思考効果(Deliberation - Without- Attention Effect)と呼ばれる。これまで,無意識的思考効果が生じるためには,無意識的思考がどの程度の時間必要なのか,その時間特性に注目した研究は存在しない。そこで本研究はこの点を調べることを目的とする。そのために,まずは先行研究(Dijksterhuis ら, 2006)の追試をして効果の再現性を確認した。

方法
実験参加者 日本人の大学生 40 名(男21 名,女 19 名,平均年齢 21.9±1.4 歳)が実験に参加した。
実験計画 思考モード(意識的・無意識的)と課題の複雑さ(複雑・単純)を独立変数として,選択の正確性を従属変数とした 2 要因 2×2 水準参加者間比較デザインであった。
刺激と手続き 実験参加者の課題は,4つの仮想的な車に関する文章を次々と読み,一番よいと思う車を選ぶことであった。複雑条件では,それぞれの車について 12 個の属性が呈示された。単純条件では,それぞれの車について 4 個の属性が呈示された。それぞれの属性はポジティブもしくはネガティブのどちらかであった。4 つの仮想的な車のうち,1 台は75%(複雑条件では 9 個,単純条件では 3個の属性)がポジティブ属性であり,1 台は25%(複雑条件では 3 個,単純条件では1 個の属性)がポジティブ属性であり,残りの 2 台は 50%(複雑条件では 6 個,単純条件では 2 個の属性)がポジティブ属性であった。ポジティブな属性を 75%有する車を選択することを良い選択(すなわち正答)とした。それぞれの属性はコンピューターの画面上にランダムな順序で 8 秒ずつ呈示された。実験参加者は 2(思考モード:意識的・無意識的)× 2(課題の複雑さ:単純・複雑)の 4 条件に 10 名ずつランダムに割り当てられた。意識的思考条件の参加者は,車の属性の提示が終わったあと 3分間,課題について考えるよう指示された。無意識的思考条件の参加者は,車の属性の提示が終わったあと 3 分間,アナグラムを解くよう指示された。すなわち,課題から注意をそらすための干渉課題を行った後,一番良いと思う車を選んだ。

結果と考察
図 1 に,無意識的思考と意識的思考条件における複雑課題と単純課題の平均正答率を表した。今後,引き続き先行研究と同じ数のデータを集める予定であるが,現段階で先行研究と同様のパターンが得られた。すなわち無意識的思考では単純な課題よりも複雑な課題で正答率が高く,意識的思考では複雑な課題よりも単純な課題で正答率が高い傾向が得られた。したがって,無意識的思考効果は再現できる可能性が高い。
 本研究の目的は,無意識的思考効果の時間特性を調べることであった。最初の実験 1 では,この効果が再現可能であることが示唆された。今後は,参加者が意思決定を行う前に,意識的思考と無意識的思考を組み合わせる予定である。そして,その時間的比率や順序を操作することで,無意識的思考効果がどのように変化するのかを調べる予定である。本大会での発表では,それらの実験結果も併せて報告する予定である。

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