発表

2A-066

あたため期に生じるマインドワンダリングの思考内容の操作について

[責任発表者] 山岡 明奈:1,2
[連名発表者・登壇者] 湯川 進太郎#:1
1:筑波大学, 2:日本学術振興会特別研究員DC1

目 的
 精神的健康を損なわずに創造性を増進する方法を考案することは,社会の発展に有用だと考えられる。近年,マインドワンダリング(mind-wandering;以下MWとする)という,現在行っている課題や外界の環境とは関係のない思考(Smallwood & Schooler, 2015)をあたため期に行うことで,創造性課題の解決が増進されることが示されている(Baird et al., 2012; Tan et al., 2015; 山岡・湯川,2016)。しかしながら,MWを行うことでネガティブ気分が喚起される可能性も指摘されており(e.g., Killingsworth & Gilbert, 2010),MWは創造性を増進する一方で精神的健康を害する可能性が考えられる。このような中で山岡・湯川(印刷中)は,創造性が高く精神的に健康な人は,過去に関するMWが少ないことを報告し,過去以外のMWをあたため期に行うことで,ネガティブ気分を喚起させずに創造性課題の解決を増進できる可能性を示した。
 そこで本研究では,あたため期に過去以外のことに関するMWの誘発方法を考案し,統制群と比較して創造性が増進された程度や思考内容および気分に違いがあるか検討すること目的とした。
研 究 1
 参加者 関東圏内の大学生および大学院生62名(男34名,女28名,平均年齢18.37±0.55歳)が実験に参加した。
 実験手続き まず,ワーキングメモリ容量を測定するために,短縮版Operation Span Taskと短縮版Symmetry Span Taskを行った(Oswald et al., 2015)。次に,創造的な問題解決としてUnusual Uses Test (Guilford, 1967)を行い,靴下と缶詰の缶の通常とは異なる使い方を各3分間でできるだけ多く挙げるよう求めた。その後,実験群(31名)には,他の調査の予備実験と偽りの教示をして,これからの自分の楽しみな予定について3分間記述するよう求めた。記述後,現在の気分(ポジティブ・ネガティブ)を9件法(1:全くあてはまらない~9:非常によくあてはまる)で尋ね,10分程度のあたため期を設けた。あたため期中は画面を注視するよう求め,回答が終わってから1分30秒,1分,2分,1分30秒,1分の間隔があくように画面上にプローブを提示し,何かしらの思考をしていた場合は,その思考が自然発生的であったかと,思考内容(過去・未来・自己・他者・ポジティブ・ネガティブ)および気分(ポジティブ・ネガティブ)について9件法で回答を求めた。また,あたため期の最後に創造性課題について考えていた程度についても9件法で尋ねた。その後創造性課題の2回目を1回目の続きから行い,最後に,本実験の真の目的を伝えて実験終了とした。なお,統制群(31名)では自分の楽しみな予定の記述を行わず,すぐに気分評定以降の手続きに移った。
 結果と考察 創造性が増進された程度(2回目のUUTの回答数を指標とした)と,思考内容(過去・未来・自己・他者・ポジティブ・ネガティブ)および気分(ポジティブ・ネガティブ)について,条件群ごとに平均値を算出した。これらの従属変数,実験条件群を独立変数,ワーキングメモリ容量(短縮版Operation Span Taskと短縮版Symmetry Span Taskの成績を標準化して平均した値)を共変量とした,共分散分析を行ったところ,群間に有意な違いは見られなかった。そこで手続きを改良して,研究2を行った。
研 究 2
 参加者 関東圏内の大学生および大学院生38名(男13名,女24名,未回答1名,平均年齢20.64±1.53歳)が実験に参加した。
 実験手続き 実験操作の内容以外は研究1と同様の手続きであった。研究2では,ポジティブ未来群(19名)とネガティブ過去群(19名)を設け,それぞれ他の調査の予備実験という偽りの教示をして,「実験の最後に,これからのあなたの楽しみな予定(今までのあなたの人間関係の嫌な思い出)について書いていただくので,そこに書く内容を3分間考えてください。」と教示した。
 結果と考察 研究1と同様に,創造性が増進された程度と,思考内容および気分について,条件群ごとに平均値を算出し,これらを従属変数,実験条件群を独立変数,ワーキングメモリ容量を共変量とした共分散分析を行ったところ,過去に関する思考は,ポジティブ未来群(2.53±1.58)より,ネガティブ過去群(4.41±2.38)が有意に多く(F(1, 35)=9.30, p=.004, ηp2=.21),未来に関する思考はポジティブ未来群(6.05±1.36)より,ネガティブ過去群(5.14±1.83)の方が有意に少なかった(F(1, 35)=5.87, p=.021, ηp2=.14)。
 また独立変数に,研究1の統制群を加えて再分析を行ったところ,過去に関する思考のみ有意な差が認められ(F(1, 65)=5.51, p=.006, ηp2=.15),ポジティブ未来群は,ネガティブ過去群(p=.021)および統制群(p=.009)と比較して有意に過去に関する思考が少ないことが示された。

キーワード
マインドワンダリング/あたため期/拡散的思考


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