発表

1B-060

電算画面で読み聞かせた絵本の理解における誤信念理解と類推
保育専門学校生による誤信念理解(III)

[責任発表者] 光田 基郎:1
1:ノースアジア大学

「対象の予期しない移動による誤信念」理解の実験(Birchなど’07)は,成人参加者が対象の移動を知る条件下では,登場人物の誤信念内容も理解されやすい結果を部分的に示し得た。本報告は,画面で読み聞かせた絵本の理解で類推と誤信念理解などの下位技能,特に誤信念理解検査(従来の2肢選択とBirthの4肢選択併検査併用)の寄与の程度差を指摘する試みである。
方法:(イ)材料:トラと干し柿(パク ジエヒン著,光村教育図書)より,強者を自任するトラでも,農家で泣く子が母に「泣くな,熊や狼が来る。トラも来る」と脅されても泣き止まないのを外で聞いて驚く。トラは「この子は本当にトラが来ても泣き止まない程の強い子だ」と誤解して恐れたが,母親がこの子に干し柿を与えたら泣き止んだので,トラは「自分が来ても泣き止まない様な強い子でも怖がって泣き止んだほど,干し柿とは怖い猛獣だ」と思い込んで逃げた時,農家に侵入した牛盗人と鉢合わせする。盗人は牛を盗む気でトラに飛び乗ったが,トラは干し柿という怪獣に抑え付けられたと恐れて盗人を背中に乗せて走る。夜が明けて盗人は自分がトラに乗った事が分かって驚き,木の枝につかまって命拾いし,トラも逃げ去る話と,下記の検査計17画面を電算に録音・録画して保育専門学校生(M5,F29,平均年齢20;6)に読み聞かせ,下記の内容再認と下位技能検査結果を求めた。(ロ)検査項目:(a)上記の内容の逐語・推理再認,(b)幼児用の長文理解(留守番のエピソードを読み聞かせてその順序再構成),類推,反応抑制,(c)文法理解(タクシーがトラックを牽く絵の選択),(d)従来の誤信念理解検査のサリーとアン課題(2肢選択),(e)反応抑制及び(f)対象物の予期しない移動を扱った4肢選択の成人用誤信念検査(女の子が左端の青ケースにヴァイオリンを入れたが, 彼女の留守中に妹がこれを赤または紫のケースに移し, 赤ケースの位置も元は青ケースのあった位置に並べ替えたほか,紫と緑ケースの位置も変えて退室した。姉が戻った時には4個のケースのいずれを最初に開くかを参加者に質問し, 4個のケース毎にその比率を記載させた(Birchなど‘07の手続きに準拠)。所要時間23分。(ハ)デザイン:上記の誤信念理解課題で妹が(a)ケースのどれかにヴァイオリンを移し替えたか不明の条件,(b)赤ケースに移し替え,位置も姉が最初に楽器を入れた青ケースのあった位置に移して並べ替えた情報追加条件と (c)紫のケースに移した情報無効条件を級間変動因,姉が戻って最初に開く青,赤,紫と緑のケース毎に答えた選択の主観的確率を級内変動因とする3x4混合型2要因共分散分析で再認,下位技能とケース選択の主観的確率の相関関係を検定し,絵本理解成績の規定要因を求めて重回帰分析したほか,誤信念理解の寄与の判別分析(認知科学会’19)を試みた。
結果:(イ)Tab.1は上記の方法(ハa-c)の姉が戻りどの楽器ケースを開くかの確率である. Birchの結果(括弧内)と同様,位置情報が「赤」選好>不明=情報無効(紫)の結果(上記級内変動因の主効果は5%水準)は,移動先の情報による誤信念への抑制を示す。
Table1.再認に対する上記のケース選択比の寄与 
 どれか不明 位置情報あり(赤) 情報無効(紫)
青 53%(71%) 50%(59%) 72%(72%)
赤  9%(23%) 26%(34%)  9%(19%)
紫 15%( 5%)  6%( 3%) 20%( 6%)
緑 14%( 3%)  5%( 4%)  4%( 3%) 
*()はBirch & Bloom’07,Psychol. Sci.の結果)
(ロ)Table2は上記(イ)の楽器容器の選択比を含む誤信念理解,反応抑制と類推などの技能が絵本の推理再認と類推を説明する程度を示す重回帰分析結果である。楽器の移動情報,特にサリー・アン課題の2肢選択技能が絵本の推理再認を説明する傾向が有意なβ係数値から示された反面,4肢選択課題の活用が課題となる。
Table 2a移し替え条件別に見た推理再認の規定因(β) 
どの容器か不明 位置情報あり(赤) 情報無効(紫)
サリーアン課題 サリーアン課題 紫ケース評定,サリ,ーアン課題と類推,
β=.76,t=3.05, β=.81,t=4.2,p<.01 β=-.85,.67と.54,t=p<.01
    -8.1,3.54と3.2, P<.02
一方,上記の誤信念理解の変数が作業記憶や反応抑制以上に類推を規定する傾向も以下のTable 2b から示唆されたと言えよう。
Table2b.楽器の移し替え条件別に見た類推の規定要因 
どの容器か不明 位置情報あり(赤) 情報無効(紫)
有意変数なし 赤ケース評定と 紫ケース評定と
サリーアン課題   サリーアン課題
  β=.79と.43,t=10.39 β=-.86と.37,t=-8.16 
 と5.65,p<.005  と3.54,p<.02 
考察:以上より,絵本の内容理解における誤信念理解の寄与は限定され,誤信念内容理解の手がかりとなる既得情報による偏向は4肢選択よりもサリーアン課題に代表される2肢選択課題による結果の変動が示された。他方,赤容器に移動を述べた条件でのみ推理再認と赤容器の推定比との正相関(日教心’19)をも考えた際,誤信念内容の理解には既得の情報による偏向への配慮と同時に,類推,反応抑制と作業記憶容量の配慮も必要。

キーワード
誤信念理解/絵本読み聞かせ/類推


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