発表

3B-055

「頭隠して尻見せる」は記憶成績を促進するか(2)

[責任発表者] 浅野 昭祐:1
1:イデアラボ

 生成効果とは,文章などを手がかりに生成された項目が,単に読まれただけの項目よりも,よく記憶されるという現象である(e.g., Slamecha & Graf, 1978)
そして,このような生成効果は,画像刺激を基に生成された場合であっても報告されている。例えば,Kinjo & Snodgrass(2000)は,部分的にしか呈示されないような不完全な画像に基づいて項目を生成する条件の方が,完全な画像に対して単に命名する条件よりも,再生,再認,ソースモニタリングといった顕在記憶課題の成績が良くなることを報告している。
 さらに,浅野(2018)は,検索手がかりで与えられるターゲット項目(e.g., ブタ)の意味的・概念的特徴(e.g., 短い尻尾)が選択的に呈示されるように不完全画像を作成し(図1),画像の生成効果が生じるか否かについて検討を行った結果,概念的な潜在記憶課題(一般知識課題)においても,生成効果が生起することを示唆している。浅野(2018)は,(a)ターゲット項目とターゲット項目の意味的・概念的特徴との関連性に関する処理が,不完全画像に基づいた生成時に促進されること,そして,(b)概念的な潜在記憶課題において生成効果が生起するためには,ターゲット項目を生成する過程において,検索手がかりと対応した意味的・概念的特徴が処理される必要性があることを主張している。
 本研究では,上記の仮説に関して更なる検討を行うために,検索手がかりで与えられる意味的・概念的特徴が選択的に遮蔽されるように不完全画像を作成し,画像の生成効果が生じるか否かについて検討を行う。

方 法
 実験参加者 中央大学の大学生21名が実験に参加した。そのうち,内観報告において記銘意図あるいは検索意図があったことを報告した6名を除いた,15名が分析対象になった。
 実験デザイン 符号化条件(完全画像,不完全画像,非学習)を要因とした1要因参加者内計画であった。
 実験材料 Snodgrass & Vanderwart(1980)とNishimoto, Miyawaki, Ueda, Une, & Takahashi(2005, 2012)から,命名一致率が90%以上の24線画を選択し,ターゲット項目の完全画像として用いた。そして,24の各線画について,検索手がかりで与えられる意味的・概念的特徴が描かれた領域が遮蔽されるように,上下左右のいずれか50%の領域を除去し,不完全画像を作成した(図1)。一般知識課題や手がかり再生課題に用いられる,質問文(e.g., 尻尾が短い動物)は,浅野(2008)より選択した。
 ターゲット24項目を,一般知識課題における非学習時の平均産出率に差が出ないように,8項目ずつの3つのターゲットセットに分類した。学習リストは,いずれか2セットの16項目に加え,バッファー12項目の計28項目により構成し,6リスト作成した。一般知識課題におけるテストリストは,全てのターゲットセット24項目から構成し,手がかり再生課題におけるテストリストは,学習リストと同一のターゲットセット16項目から構成した。
 実験手続き 学習段階では,完全画像または不完全画像を5000ms呈示し,それらの刺激に対し命名するよう求めた。そして,画像刺激消失後に,正答のフィードバックとして,同一形態(完全または不完全)の画像刺激を再呈示すると共に,概念名も2000ms呈示した。
 テスト段階では,まず,一般知識課題を行った。一般知識課題では,PC画面上に質問文が20秒間呈示され,その間に,質問文から心に思いついた単語を,順番に回答用紙に記述するよう求めた(最大4つまで)。一般知識課題終了後に,記銘意図や検索意図などに関する内観報告を行わせ,その後に,手がかり再生課題を行った。手がかり再生課題も,PC画面上に質問文が20秒間呈示された。そして,質問文が呈示されている間に,質問文に当てはまるターゲット項目を想起して,回答用紙に記述するよう求めた。

結果・考察
 全回答を対象とした一般知識課題における正答率に関して,符号化条件の有意な効果は得られず(F(2,28)=0.237, p =.767,偏ε二乗=.000),完全画像条件(.350)と不完全画像(.342)と非学習条件(.300)の間の平均正答率には有意差がなかった。
手がかり再生課題においても,完全画像条件(.542)と不完全画像条件(.525)の間で正再生率に有意差はなく(F(1,14)=0.075, p =.788,偏ε二乗=.000),生成効果が得られなかった。
 本研究で用いた,検索手がかりで与えられる意味的・概念的特徴が選択的に遮蔽される不完全画像に基づいて,生成処理を行うことは,潜在記憶を促進しないことを示しており,上述した,浅野(2018)の仮説を支持する結果であると考えられる。しかしながら,顕在記憶を促進しないことに関しては,潜在記憶課題と課題要求が異なることも考慮した説明が必要になると考えられる。

キーワード
画像の生成効果/潜在記憶/顕在記憶


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