発表

3B-054

自伝的記憶の自己機能と自発脳波における自己相関の持続性の関連

[責任発表者] 橋本 淳也:1
[連名発表者・登壇者] 小林 亮太:1,2, 柏原 志保:1,2, 平本 亮介:1,2, 原口 優輔:1, 本多 樹:1, 朱 建宏#:1, 孫 玥澤#:1, 山本 一希#:1, 中尾 敬:1
1:広島大学, 2:日本学術振興会特別研究員

問題
 過去の個人の経験の記憶を自伝的記憶という。自伝的記憶には,その想起によって自己の連続性や一貫性を感じさせるという自己機能がある(Bluck & Alea, 2005)。すなわち,私たちは自らの経験を振り返ることで自己の認識を図っている。
 自己への意識は,閉眼安静状態で記録された自発脳波における,正中線付近の前頭部の自己相関の持続性(long-range temporal correlation: LRTC)と正の相関関係が見られることが知られている(Huang et al., 2016)。LRTCとは神経活動の自己相関の持続性のことであり,神経活動の記憶の程度を反映しているものと考えられている(Linkenkaer-Hansen et al., 2001)。自伝的記憶を頻繁に想起するほど,自己への意識も高まると考えられることを踏まえれば,自伝的記憶の自己機能がLRTCと関連する可能性がある。しかし,この点については未だ検討されていない。
 そこで本研究では,LRTCと自己機能の使用頻度の関連について検討を行うことを目的とした。自伝的記憶の想起は前頭部のθ波との関連が見られるため(Lavallee & Persinger, 2010),前頭部のθ波においてLRTCと自己機能の間に正の相関が見られると予測した。

方法
 実験参加者 大学生68名(女性38名,平均年齢20.1歳,SD = 1.1)が実験に参加した。
 質問紙 日本語版TALE尺度(落合・小口,2013)の下位尺度である自己継続機能により,自己機能の使用頻度を測定した。
 脳波の記録と分析 閉眼安静時の脳波を5分間測定した。脳波の記録にはBrain Products社のアクティブ脳波計測システムを使用し,頭皮上63部位に配置した銀-塩化銀アクティブ電極から導出した。鼻尖を基準電極として測定し,解析時に平均電位基準に変換した。電極インピーダンスは20kΩ以下,サンプリング周波数は250Hzであった。1-50Hzのバンドパスフィルターをかけた後,Artifact Reconstruction methodと独立成分分析によりノイズを除去した。電極ごとのθ帯域(4-8Hz)について,Neurophysiological Biomarker Toolbox(NBT; Hardstone et al., 2012)を用いてLRTCの指標であるDetrended fluctuation analysis exponent(DFAe)を算出した。本研究では正中線付近の前頭部の電極(F1,F2,Fz)の平均値を前頭DFAeの値とした。

結果
 自己継続機能得点の合計値を算出し,前頭DFAeとの相関分析を行った。分析の際には,年齢,性別及びBMIの影響を統制した。分析の結果,自己継続機能得点と前頭DFAeの間に有意な正の相関が見られた(r s= .31, p = .02; Figure 1)。

考察
 本研究の結果から,前頭θ帯域におけるLRTCと自伝的記憶の自己機能の使用頻度との間に正の相関関係が示された。このことから,前頭前野における脳活動の自己相関の持続性が高い人ほど,頻繁に自伝的記憶の想起を介して自己を認識することで,自己への意識を高めている可能性が考えられる。今後はこれらの関係性について検討していく必要があるだろう。

主な引用文献
Huang et al. (2016). The temporal structure of resting-state brain activity in the medial prefrontal cortex predicts self-consciousness. Neuropsychologia, 82, 161-170.Lavallee, C. F. & Persinger, M. A. (2010). A LORETA study of mental time travel: Similar and distinct electrophysiological correlates of re-experiencing past events and pre-experiencing future events. Consciousness and Cognition, 19, 1037-1044.
謝辞
 実験実施にご協力いただいた石田紀香さん,岡崎彩香さん,岸本和美さん,中野歩菜見さん,堀之内滉さんに深く感謝いたします。
 本研究はJST,COI,JPMJCE1311の支援を受けたものである。

キーワード
自伝的記憶/安静時脳活動/自己相関の持続性


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