発表

3A-059

刺激の提示系列位置が好意度評定に与える影響

[責任発表者] 八木 善彦:1
[連名発表者・登壇者] 井上 和哉:2
1:立正大学, 2:首都大学東京

序論
系列的に提示される刺激に対する情動評定はその系列位置の影響を受ける。Mantonakis et al. (2009)は,実際には同一のワインを2〜5種の系列として参加者に提示し,最も好ましいものを選択するよう求めた。実験の結果,2および3種の系列では初頭効果(最初に提示された対象を選択する傾向)が,4および5種の系列では初頭効果と親近性効果(最後に提示された対象を選択する傾向)の両方が生じることが明らかにされた。本研究では,系列位置が刺激の情動評定に与える影響を新たな視点から検討することを目的とした。具体的には,1)作業記憶容量を上回る刺激提示個数を系列提示し,2)系列位置ごとの情動評定を量的に記録可能とする手続きを用いた。

方法
参加者:実験1〜4において,それぞれ21(19)名,21(20)名,20名,20名の大学生が参加した(分析対象人数が参加者数と異なる場合は括弧内で表記した)。
刺激:モノクロの家紋画像100種を刺激として用いた。家紋画像のサイズは縦横およそ7.6cmであり,観察距離はおよそ57cmであった。
装置:刺激提示用のノートPC,および反応記録用紙(A4サイズ),油性ペンを用いた。反応記録用紙は,横軸が刺激の系列位置(左右両端に「1」と「100」を記載),縦軸が刺激に対する評定値(上下両端に「高」と「低」を記載)をそれぞれ表していた。
手続き:実験1の手続きは観察段階と評定段階から構成された。観察段階において,参加者は家紋画像を1枚につき500ms(ISI 0ms)で99枚提示された。参加者には,後の評定段階で系列位置に基づく好意度評定の想起が求められることが予め伝えられていたため,観察段階における参加者の課題は,家紋刺激を観察し,系列位置ごとの好意度を可能な限り記憶することとなっていた。続く評定段階において参加者は,およその系列位置ごとに刺激の好意度評定を報告するよう求められた。好意度評定は,反応記録用紙にフリーハンドで線分を描画することによって行われた。線分は直線でも曲線でもよいが,途中で途切れさせたり,後戻りしたりしないよう伝えられた。上記手続きを基本とし,実験2〜4における相違点は以下の通りであった。実験2では,評定段階の課題内容が好意度評定ではなく,明るさの評定課題とされた(したがって観察段階の課題内容も同様に変更)。実験3では,50の画像を用いた観察段階と好意度評定段階のセットを2度繰り返した。実験4では,1枚の家紋画像提示直後に好意度評定を数値報告する試行を100回行った。

結果と考察
実験1〜3においては,反応記録用紙をスキャナで電子ファイル化した後,描画された線分を,左下端(0,0)・右上端(100,100)とする座標系における点の集合に変換した(参加者一人あたりの平均座標数はおよそ800であった)。実験において,y座標値(あるいは評定値)をx座標に基づく10の範囲(エポック)に分類し,平均値を算出した。Table1に各実験におけるエポックごとの平均評定値,および1要因参加者内分散分析の結果を示す。分散分析の結果,エポック(系列位置)の主効果は実験1と実験3で認められ,実験2と実験4では認められなかった。実験1についてLSD法を用いた多重比較を行ったところ,エポック1(エポック2〜4)はエポック4 以降(エポック7以降)と比較して有意に低く,エポック8以降はエポック5と比較して有意に高いことが明らかにされた。このことから,作業記憶容量を上回る刺激の系列位置が好意度評定に与える影響は,負の初頭効果(冒頭部が否定的に評価される)と正の親近性効果(終末部が肯定的に評価される)という2つの効果を持つ可能性が示唆された。一方で,実験2(明るさ評定)および実験4(個別評定)において系列位置の主効果が認められないことは,実験1の結果が,あらゆる評定課題で生じる単純な反応バイアスである可能性を排除するとともに,記憶に基づく何らかのバイアスの影響を受けている可能性を示している。また,実験3における多重比較の結果,エポック1はエポック5を除く他のすべてのエポックと比較して有意に低い値となっていた他,エポック6〜9においてエポック5よりも有意に高い値となっていた。したがって実験3は概ね実験1の結果を再現しているものの,観察と評定を2回に分割したことによる影響については,さらに詳細な検討を行う必要があると考えられる。

引用文献
Mantonakis, A., Rodero, P., Lesschaeve, I., and Hastie, R. (2009). Order in choice: effects of serial position on preferences. Psychological Science, 20, 1309-1312.

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