発表

3A-058

自閉スペクトラム症幼児における検索が転移に及ぼす効果

[責任発表者] 堀田 千絵:1
[連名発表者・登壇者] 多鹿 秀継:2
1:関西福祉科学大学, 2:神戸親和女子大学


目 的

自閉スペクトラム症(以下,ASDとする)を取り巻く保育教育現場が抱える課題の1つとして,長期記憶への保持についての特異性がある。興味のある対象については強固に保持されたとしても社会生活上必要な情報の保持についてはうまく機能しないアンバランスさを備えている可能性も考えられる。
これらについては学童期以降にも社会生活への不適応となって影響を及ぼす。そのため,より早期から無理なく介入できる忘却を防ぐ手立てに関する研究が必要となるが,ASD幼児の抱える臨床的に示唆を与える記憶特性についての基礎研究は少ない。
そのような状況に鑑み,本研究は,ASDの4歳児と5歳児に有効な記憶方略の特定を試みたいと考えた。本研究は,堀田・多鹿(2019, 日本教育心理学会)を発展させ,定型発達幼児に有効な反復検索による学習がASD幼児にも有効に機能するかどうか検討することを目的とした。

方 法

実験参加者 
DSM-5においてASDと診断された4歳児,5歳児30名並びに年齢マッチングさせた定型発達(以下,TDとする)児30名であった。倫理的配慮として,すべての幼児の研究参加の同意について園,保護者に得た上で実施した。また両群の語彙発達年齢はマッチさせた)。
実験計画 
2×2×3の混合要因計画であった。
第1要因は群(ASD/TD),第2要因は学習条件(反復聴取/反復検索)の参加者間計画であり,第3要因は課題(事前/事後/転移)の参加者内計画であった。
材料及び実験手続き
捕食課題の学習課題を用意した。
実験手続きは3段階から構成された。
(1)初回学習と事前テスト:大きい動物がより小さな動物を捕食するといった規則性に基づく陸地や海などの場面において5種類の動植物を提示し,上位4種類の動物が何を食べるかについて教え,その後食物連鎖の崩壊(太陽の温度が上がり氷が解ける)にかかわるストーリーを説明した。その後,崩壊すると動植物はどうなるのかその量について,増える,減る,変わらないのうち,どうなるかについて回答を求めた。
(2)統制/検索:各群の半数の幼児を検索群,残りを統制群とした。両教示群ともに学習時間を3分とし,(1)と異なる学習材料を用意した。反復検索群には食物連鎖の崩壊について一度正答を教えた後,3回検索を繰り返すように求めた。回答を間違えたり反応がない場合は正答を教えた。一方,反復聴取群では,崩壊に関するストーリーを教示した。両群とも3回繰り返した。
(3)事後テスト:一週間後,(1)と同様の形式で質問を行った。

結 果 と 考 察

各年齢ごとに,2×2×3の混合要因の分散分析を実施した結果を要約すると,4歳児の定型発達群の幼児は,反復検索による学習の成果は認められなかった。また,それは転移も同様であった。自閉スペクトラム群においては,事後テストにおいては統制条件と変わらなかったが,転移課題において検索条件のみ高かった。他方,Table 2における5歳児では,定型発達群では検索条件における長期保持と転移効果が認められた。一方,自閉スペクトラム症群においても同様であった。
 今後,課題の問題点を踏まえ,同様の傾向がみられるかさらに検討を続ける必要があるが,年齢発達とともに,臨床群との組み合わせによって,学習効果に違いが認められる可能性が示唆された。以上より,年齢と臨床群との組み合わせによって異なる結果が認められ,その原因を突き止める条件の設定が必要であることが示唆される。

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