発表

2D-055

空間の構造が既視体験に与える影響

[責任発表者] 田中 瑠真:1
[連名発表者・登壇者] 牧岡 省吾:1
1:大阪府立大学

目的
 初めて行った場所であっても,過去に来たことがある気がするような,どこか不思議でなぜか懐かしいような感覚を体験したことのある人も多くいるだろう. このように,本来は知らないにも関わらず既知感を感じたり,懐かしい感じを抱いたりするような感覚の体験は既視体験と呼称されている. このデジャヴの感覚は,懐かしさの感情を伴っていることが多くあると言われている. Brown & Marsh(2008)は写真を用いた実験によって,写真を意識的に再認できないことで,親密性を感じる原因を特定できないときに,既知感が生じることを示した. これはデジャヴと親密性の潜在的な関係を示唆している. また,Cleary, Brown, Sawyer, Nomi, Ajoku, Ryals (2012)は,物体の構造の類似性から起こる親密性とデジャヴの関係について,Virtual Reality 装置(VR装置)を用いて実験を行った.その結果,見たことがあるシーンを見たことがあると認識できないときに最もデジャヴを感じ,かつ親密性も最も高くなることを明らかにした.本実験では,構造的に類似性のある場所における親密性と懐かしさの感じ方の変化を,VR装置を用いることにより,視点の移動を伴った3D空間上で検証する.
方法
参加者 大学生33名
装置 ヘッドセット:HTC製Vive (HTC Vive CE 99HALN011-00), アプリケーション:Unity (ver. 2018.1.6f1)
刺激 Unityを用いて3Dバーチャル空間を作成し,それぞれの場所において,外から中に入るという視点移動を伴うシーンを14種類作成し,studiedシーンとした.また,その14種類のシーンそれぞれについて,物体の配置が同じで,物の種類が変わったシーンをsimilarシーン,同じ枠組みで全く異なるレイアウトのシーンをnewシーンとした.
手続き 学習フェーズ:14種類のstudiedシーンから7種類のシーンを選択して呈示. 間で3分間の計算課題を行った. テストフェーズ:studiedシーンを14種類,similarシーンを14種類,newシーンを14種類の計42種類すべてのシーンをランダムな順序で呈示し,映像を1つ見終えたごとに親密性と新しさを感じる度合いについて,0から10の数字で口頭反応を取った. 学習フェーズで呈示する刺激の選択は参加者間でカウンターバランスをとった. 回答は実験者が記録した. 実験参加者は一連の実験を回転式椅子に座った状態で行った.
結果
 親密性と新しさの間には負の相関がみられた (r=-0.66, p<.001) .デジャヴは親密性と新しさの同時感覚であると考えられるため,本研究では,図1より親密性評定値が5以上かつ新しさ評定値が4以上であり,親密性評定値と新しさ評定値の差が3以下のものをデジャヴ相当反応と定義した.図2よりデジャヴ相当反応の頻度を従属変数,シーンを独立変数とした線形混合モデルによる分析を行った結果,有意差は見られなかった(F(2, 93.46)=0.67, p=0.47).newシーンとsimilarシーンでは個人のばらつきが大きくあったが,newシーンでは一定の頻度でデジャヴ相当反応が生じていたことが読み取れる.このことから未知のシーンにおいてデジャヴが起こることや,構造の類似が親密性をうむ可能性を示唆している.
考察
 今回の実験において,デジャヴ相当反応の発生頻度に個人間のばらつきが多くあったことから,デジャヴの発生には個人差があることと,実験室上で実証することの難しさを示していると考えられる.また,実験では,視点の移動を指定したが,実験参加者が自ら動きを選択できるような主体的環境を作ることが課題として挙げられる.
引用文献
Brown, A. S., & Marsh, E. J. (2008). Evoking false beliefs about autobiographical experience. Psychonomic Bulletin & Review, 15(1), 186-190.
Cleary, A. M., Brown, A. S., Sawyer, B. D., Nomi, J. S., Ajoku, A. C., & Ryals, A. J. (2012). Familiarity from the configuration of objects in 3-dimensional space and its relation to déjà vu: A virtual reality investigation. Consciousness and cognition, 21(2), 969-975.

キーワード
デジャヴ/親密性/VR


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