発表

2D-054

想像力の個人差と場所法継続使用による単語記憶再生成績の変化

[責任発表者] 欒 笑語:1
[連名発表者・登壇者] 杉森 絵里子:1
1:早稲田大学

場所法とは,記憶術の一種である。場所法には想像力が必要である一方(Moe & De Beni, 2005),継続的に訓練することによって,多くの人にとって,場所法の習得は可能であることも示唆されている(e.g., Ericcson, et al. 1980;) 。そこで本研究では想像力の個人差という観点から,場所法を5日間継続して使用することによる記憶成績向上の差について検討することを目的とした実験を行った。
実験:
【参加者】実験参加者は大学生29名であり,場所法教示群あり19名(男性4名,女性15名),場所法教示なし群(コントロール群)10名(男性5名,女性5名)。場所法教示群は,事前に219名の大学生の想像力を測定した。そのスコアの上位10名(想像力高群:男性2名,女性8名,M=79.9,SD=11.2)と,下位9名(想像力低群:男性2名,女性7名,M=56.3,SD=2.5)に参加してもらう形をとった。
【材料】「日本語約5万語の心象性データベースの作成」から,心象性が高い500単語を選出し,500単語は,1日100単語ずつ学習するように分割した(佐久間他,2000)。
【手続き】実験参加者に対して,計5日間の記憶テストを行った。すべての群において,1日目と5日目は実験室で実施し,2~4日目は,各々の自宅でオンライン実験を実施した。
【結果】
場所法教示あり群 vs. 場所法教示なし群(Figure 1)
場所法教示あり群 (N=19) と場所法教示なし群 (N=10) の各日ごとの記憶成績をFigure 1に示した。2 (場所法教示:教示あり vs. 教示なし) × 5 (日にち系列)の分散分析の結果,場所法教示の主効果が有意であり,場所法教示あり群は,教示なし群と比較して,再生成績がよいことが明らかになった [F(1,27)=7.90, p<.01]。また,場所法教示と日にち系列の交互作用も有意であった[F(4,108)=8.35, p<.001]。
想像力高群 vs. 想像力低群(Figure 2)
場所法あり群を,さらに想像力高群と低群に分類し,各日ごとの記憶成績をFigure 2に示した。2 (想像力:高群 vs. 低群) × 5 (日にち系列)の分散分析の結果,想像力の主効果は有意でなく,高群と低群の間に,記憶成績の違いが見られないことが明らかになった [F(1,17)=1.42, p=0.25]。しかし,想像力と日にち系列の交互作用は有意であった[F(4,68)=2.63, p=.04]。
【考察】実験の結果から,3つのことが明らかになった。1.場所法を教示した群は,教示していない群と比較して,5日間で記憶成績が上昇した。2.想像力の高群と低群の両群において,場所法の継続使用による記憶成績の向上が見られた。3.想像力の高群と低群では,場所法を用いることによる,記憶成績の変化の仕方が異なった。また,想像力には,制御的なプロセスと自発的なプロセスがかかわっており,この2つのプロセスは,相互補完的であると同時に相互排他的であるという(Casey,1976,1991)。このことから,本研究の場所法使用時において,想像力高群が制御的プロセスを用いる場面では,どのような記憶成績の変化がみられるのか,今後検討する必要がある。
【引用文献】
Casey, E. S. (1976). Imagining: A Phenomenological Study. Indiana University Press. Casey, E. S. (1991). Spirit and Soul; Essays in Philosophical Psychology. Spring Pub.
Ericcson, K. A., Chase, W. G., & Faloon, S. (1980). Acquisition of a memory skill. Science, 208, 1181-1182.
Moe, A., & De Beni, R. (2005). Stressing the efficacy of the loci method: oral presentation and the subject- generation of the loci pathway with expository passages. Applied Cognitive Psychology, 19, 95-106.
佐久間 尚子・伊集院 睦雄・伏見 貴夫・辰巳 格・田中 正之・天野 成昭・近藤 公久 (2000).文字呈示,音声呈示による日本語約5万語の心象性評価 電子情報通信学技術研究報告. TL, 思考と言語. 100, 9-16.

キーワード
記憶術/場所法/再生


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