発表

2B-056

懐かしさの特性と発生機序の検討
デジャビュ的懐かしさに着目して

[責任発表者] 池田 寛香:1
[連名発表者・登壇者] 直井 望#:2, 楠見 孝:1
1:京都大学, 2:国際基督教大学

目 的
 懐かしさとは,過去の回想によって得られるほろ苦く甘い体験であり (Sedikides, 2004), 思い出に対する幸せな感情と,戻れない過去に対する悲しみの双方を併せ持つ (Wildschut et al., 2006),記憶と感情の複合体である。懐かしさの発生メカニズムに注目した研究では,過去の出来事と現在の時間的空白と,その出来事と頻繁に接触していた経験 (反復接触)が懐かしさを喚起することが明らかになった (Kusumi et al., 2010)。また,川口他 (2011)の研究では自伝的記憶の想起よりも短い時間で懐かしさ判断が遂行されたという結果が示された。その他,懐かしさの特性を検討した研究では,懐かしさが自伝的記憶の想起を速めるという結果が得られている (瀧川・仲,2011)。しかし,これらの研究対象は自伝的な懐かしさであり,「初めて見たものに感じる懐かしさ」すなわち 「デジャビュ的懐かしさ」を実験的に検討した研究は数少ない。よって本研究では,デジャビュ的懐かしさを実験的に喚起し自伝的懐かしさとの比較を行い,懐かしさの発生機序と特性を検討することを目的とする。
方 法
要因計画 実験1は,記憶要因 (自伝的記憶関連 (Autobiographical Memory, ABM),自伝的記憶無関連 (以下nonABMの2水準)×懐かしさ要因 (懐かしさ高,懐かしさ低の2水準)の二要因参加者内計画であった。実験2は,実験1の二要因に刺激提示時間要因 (500 ms, 1000 ms, 1500 ms, 2000 ms, 2500 msの5水準)を加えた,3要因参加者内計画であった。
実験参加者 実験1には,海外経験が1年未満の大学生・大学院生21名 (男性4名,女性17名, 年齢Ms=21.3,20.5)が参加した。実験2には海外経験が1年未満の大学生・大学院生28名 (男性6名, 女性22名, 年齢Ms=21.0, 21.2)が参加した。
刺激 実験1, 2ともに4種の刺激を用いた。1種あたり10枚の画像を提示した。ABM懐かしさ高刺激:事前アンケートで参加者の出身校と小中学生のころ行った場所を調査し,Google Imageを用いて一人ずつ違う画像を選出した。ABM懐かしさ低刺激:参加者が全員経験したことがあるが時間の空白が少ない刺激として大学内の風景を用いた。nonABM懐かしさ高刺激:予備調査で懐かしさ得点が高かった画像を用いた。nonABM懐かしさ低刺激:予備調査で懐かしさ得点が低かった画像を用いた。
手続き 実験1では,画像を提示 (3000 ms)した後に懐かしさ判断課題 (画像を見て懐かしいと感じたかどうか),知識判断課題 (画像に写っているものを知っているか),経験判断課題 (画像に写っているものを実際に経験したことがあるかどうか)を提示し,はい/いいえの2択で答えるよう教示した。その後,各刺激の懐かしさ・親近感・既視感・好ましさ・典型性・新奇性を7段階で評価するよう教示した。実験2では,画像(提示時間は5種・ランダム)提示した後に,実験1と同じ3種の課題をランダム順に提示し,2択で答えるよう教示した。実験1,2ともに全40試行であった。実験では,各判断にかかった反応時間 (Response Time, RT)を記録した。
結 果
 懐かしさ平均得点はABM懐かしさ高条件 (5.61), nonABM懐かしさ高条件 (4.94)間で有意差があった (t (2, 40)=2.53, p<.05)。また,独立変数を記憶要因と懐かしさ要因,従属変数をRTとして分散分析を行ったところ,実験2の経験判断課題では,懐かしさ低条件のRTは懐かしさ高条件より有意に短かった (F(1, 27)=5.33, p<.01)。そして,nonABM懐かしさ高条件において懐かしさ判断は経験判断より有意に短い時間で判断が行われた (t(1, 27)=-2.10, p<.05)。
考 察
 懐かしさ判断において,ABM懐かしさ高条件 (自伝的懐かしさ)とnonABM懐かしさ高条件 (デジャビュ的懐かしさ)の2条件間に有意差がみられず,懐かしさ判断の方が経験判断より短時間で反応していたことから,懐かしさが過去の記憶を意識的に想起する以前に認識されている可能性が示唆された。また,経験判断が懐かしさ低条件下で素早く行われたことから,懐かしさが必ずしも自伝的記憶の検索・想起を早めるわけではないことが示された。

キーワード
懐かしさ/自伝的記憶/デジャビュ


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